三島由紀夫レター教室 三島由紀夫
![]() | ちくま文庫 Amazon |
ちょっと、嫌になるくらい、ほんと。
三島由紀夫って「上手い」なぁ。
芝居がかっていて、しつこいと感じる人もいるのかな。
私なぜか、このあざとい程の才気煥発さが好きだ。
この作品は5人の登場人物の間にかわされる手紙を、
順々に紹介して行く形式で描かれています。
手紙の文面からのみ窺い知る人物像が鮮やか過ぎる。
実際こんな手紙を書く人がいるのかどうかと疑うような、
出来過ぎて饒舌な手紙ばかり・・・かもしれないけれど。
三島由紀夫のどこに惹かれるのだろうかと考えていて。
やはり彼独特の「シニカルさ」なのだろうかと。
シニカルな台詞、視点。
それが冷淡でもないし、でもユーモアの範疇にもない。
私が「シニカルなもの」を好むということではなくて。
むしろどちらかというと嫌いなはずなのだけれど。
三島由紀夫の発している「シニカルさ」は心地よい。
彼の高過ぎる自意識が、不思議と息苦しくない。
文章も思考も明晰で、鮮やかなところが気持ちが良い。
うん・・・ちょっと気持ち悪いくらいかな。
私には。三島由紀夫の文章は愉しいのです。
羨ましさや憧れすら感じないほど別次元に思えるからでしょうか。
世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に感心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。
(2015.9.24)