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三島由紀夫レター教室  三島由紀夫

4480025774
ちくま文庫
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ちょっと、嫌になるくらい、ほんと。
三島由紀夫って「上手い」なぁ。

芝居がかっていて、しつこいと感じる人もいるのかな。
私なぜか、このあざとい程の才気煥発さが好きだ。

この作品は5人の登場人物の間にかわされる手紙を、
順々に紹介して行く形式で描かれています。

手紙の文面からのみ窺い知る人物像が鮮やか過ぎる。
実際こんな手紙を書く人がいるのかどうかと疑うような、
出来過ぎて饒舌な手紙ばかり・・・かもしれないけれど。

三島由紀夫のどこに惹かれるのだろうかと考えていて。
やはり彼独特の「シニカルさ」なのだろうかと。

シニカルな台詞、視点。
それが冷淡でもないし、でもユーモアの範疇にもない。

私が「シニカルなもの」を好むということではなくて。
むしろどちらかというと嫌いなはずなのだけれど。
三島由紀夫の発している「シニカルさ」は心地よい。
彼の高過ぎる自意識が、不思議と息苦しくない。

文章も思考も明晰で、鮮やかなところが気持ちが良い。
うん・・・ちょっと気持ち悪いくらいかな。

私には。三島由紀夫の文章は愉しいのです。
羨ましさや憧れすら感じないほど別次元に思えるからでしょうか。

 世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に感心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。


(2015.9.24)

絹と明察   三島由紀夫

4101050376
新潮文庫
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満たされないことで、いつまでも渇くがままに放置っておくことで、その感情を不滅なものにする。

小説の中で特に重要な描写ではありませんが。
こういう表現というか、観察力にハッとします。

何だろうな・・・相当、意地が悪いですよね。
三島由紀夫の人間観察とその描写力。

好きなんです、そういうところが。
彼の作品を読んでいると毎行毎行、唸りっぱなしになります。

好きとか嫌いとかいうんじゃなく。
ひたすら感心してしまうんです。

初めて読んだ時から。
凄いなー凄いなー凄いなーと口を馬鹿のようにあんぐりして。
妙に脳内が騒がしくなった状態でのめり込んでしまいました。

共感でもないし。才能に惚れ込んでいるとも違うし。
好きでないわけではないけれど、好きとも違うし。

私にとって、不思議な存在感を放っている作家です。
正直、何を読んでも面白いし、満足します。

しつこいというか。華麗というか。
賛否両論あるでしょうけれど。
私には心地よく感じられる文章です。

いや。違う。えーと。
この人の文章は「芸術」だと思う。
とにかく、神業的な「芸」なのだと思う。

だから・・・作品の良し悪しがどうだかわからない。
きっと私は。「三島ワールド」が好きなんです。
文章力には圧倒されているけれど。それだけでもなく。

この人の人間の描き方は、怖くなるけれど魅力的で。
目にしている風景と心模様が重なる場面の描き方が、特に見事。

(2014.10.6)

午後の曳航  三島由紀夫

4101050155
新潮文庫
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三島由紀夫の美学が、ぎゅっと詰まった一冊。

主人公は、「欺瞞」というものに、あまりにも敏感過ぎる少年。
そういう時代は、誰にでもあって・・・。
懐かしく感じつつも、むず痒いような、気恥ずかしさを感じる。

その、若さゆえの潔癖さは、しかし歳月とともに擦り減っていく。
消えずにもしも、保たれたなら、その奇跡は当人にとって呪いとなる。

三島由紀夫本人が、きっと、そうだったのだ。
だからこそ、書き得た作品群の、美の残酷と腐敗臭。
退廃の奥の、冷めた視線。華やかさの裏の、皮肉に彩られた純真。

彼は、紛れもない天才だった、と。
著作を読むたびに、感じずにはいられない。

(2011.4.16)
「美」と「醜」が隣り合わせにあることを、常に濃厚に感じさせる。
そして、そのどちらもが強い光を放って同等に艶やかである。
美は決して寛容ではない。多くの犠牲の上に立つものだ、と。
その残酷な現実を、この上なく美しく描く・・・
なんと嫌味な才能の持ち主だろう!惚れ惚れさせられる。



鍵のかかる部屋  三島由紀夫

4101050287
新潮文庫
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読みやすい、とは言えない、短編集。
描かれた年代が幅広く、作風も変化に富んでいる。

私は、面白いとも好きとも言いがたい作品群を、
ひたすらに「ああ、三島由紀夫だなぁ」と思いながら読んだ。
なぜか妙に幸せに似たまどろみが、そこにはあった。

最初に読んだのが何だったか、おそらく「金閣寺」かな?
その後、そこそこの数の作品を読んだけど、
何を、いつ読んでも、常に満足したという・・・稀有な作家。

クドさすら感じさせる美文調が、私には読みやすかった。
そして何といっても人間の描き方のねじれ方が素敵だった。

観察力の鋭さが遺憾なく発揮されて、怖いほど突き刺さってくる描写が、
乱立しすぎて威力を失うほど、ふんだんに散りばめられている。
その毒々しさが清々しいほど潔くて、心底うっとりしてしまう。

紛いようのない才気が満ち溢れていて、余白がない。
なんとも日本人離れしている。時に鬱陶しいほど、みっしりと豪奢。
西洋の香りは色濃く漂いつつも、まったく西洋風ですらない。

高い知性とプライドが、彼に与えた視点が、
鼻につきそうなくらいに、遥か高い位置にあるのだが、
その見下ろすような俯瞰ぶりの明晰な鮮やかさに、
私は素直に酔いしれてしまう。

ほんとうに、なんて華やかな才知・・・。

しかし、何回転もひねった糸は、何故か、もつれず、まっすぐになる。
彼の描く人物は、誰もが素直とは程遠いのに、
気味が悪いほどのひねくれた感性と思考に染まっているのに、
痛々しいほどの純粋さを醸し出している。

短編となると、その毒や華が凝縮されすぎて、息苦しいのだろうか。
思えば、過去に短編は読んでいない気がする。

もっと時間をかけて、ひとつひとつをゆっくり読むと良いかもしれない。

三島由紀夫の作品のなかで、私が好きなものではない(珍しい)のだけど、
読む値打ちは充分すぎるくらいにある、と思う。

(2010.6.19)
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
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時々、写真や雑記も。

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