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読みかけの本について書いてみよう。(保坂和志『試行錯誤に漂う』)

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褒められたことではないが、時折図書館から借りた本を延滞する。読み終えるのが間に合わなかったり、期限の日に体調が悪くて返却できなかったり、読み終えているけれど感想が書けていなかったり、すっかり読みそびれていたり。それは年に一回あるかないかのことだ。回数が少ないからといって褒められることではなく、「読める」と思っている本の冊数に読書ペースが追いつかないことを認めなければと思いつつも「読みたさ」に負けてしまうのだ。

保坂和志『試行錯誤に漂う』は返却日になっても頁を開いてもいなかった。好きなのに滅多に読まない作家というのが私には何人かあるが、保坂和志もその一人。なぜ読まないかというと、一冊読んだ際の充実度が高く、その人の本を読んだという満足感が長く保たれるからだと思う。『カンバセーション・ピース』か『プレーン・ソング』か、どちらが彼との出会いの一冊だったかはもう忘れてしまったが、とにかくその一冊で10年分くらい私は満たされてしまったのだ。

また読みたいと考えてはいるから、古本屋で状態のよい本を見つけるとほくほくして買っておく。それでも読まない。いつかまた読もうと思っているだけで気持ちが「読み終えた時の幸せ」を再生してくれるので読む必要がない。こういう本は、おそらく自分と作品の相性が良く、かつ読むタイミングがベストだったのだと思われる。そして作品との相性が必ずしも作家との相性とイコールではない。他の本を読んでがっかりしたくない思いが意識下にあるため、無意識に読むことを控えるのかもしれない。

実は数ヶ月先の小旅行を計画している私は、旅行の計画を立てることの面倒臭さに嫌気がさして旅行そのものをやめようと考え始めていて、その旅行というのがただ久しぶりに東京をぶらぶらしようというだけのことなので、何をするにも「簡単」にできない性分に泣けてきて不貞寝しようとした時、もう読まずに返却するつもりだった『試行錯誤に漂う』を手にした。読み始めてすぐ、これは「宝庫だな」と思う。何の宝庫かということは定かではない。とにかくこれは「ザクザクだ」と思う。「どんどん湧いてくるな」とも思う。ワクワク感が血管を走るのを感じ、ちょっと困ったなと思う。

自分の不甲斐なさ(旅行の計画が立てられないことだけではない、その背景にある人生全般に関する敗北感)に飽き飽きしていた私にはぴったりの書物で、呼び覚まされるものが続々とあり、簡単には読み進まない。付箋が山盛りに詰めてある箱を傍らに起き、気になる箇所に付箋を貼りつつ読む。貼る作業のおかげで速読自慢の私も速度が出ない。ゆるゆると読む。本に書かれていることからしばしば思考が脱線し、文章が頭を素通りするため、同じところを二度読む。作中に登場する「これは読まねば」という本を読みたい本リストに追加する作業も加わり、記録的なスローペースの読書となる。

読んでいる途中に感想を書くことはほぼ無いのだが、稀にメモをとる必要を感じることがある。本書の場合「もぞもぞと呼び覚まされる」というフレーズを手近な紙に書いた。呼び覚まされるものがナニであり、何故呼び覚まされるかというのが肝心なところだろうけれど、それは読み終えてからでも書けるだろう。「もぞもぞ感」は読み終えた時には消えているかもしれない(読後の満足感に集約されてしまって)から、それだけは記しておかねばと思った。

途中で、とうとう。本を置いた。明らかに貼り過ぎの付箋のうち、横向きに貼ったものだけチェックする。私が付箋を貼るルールは、まずは惜しみなく貼るということ。本一冊につき50カ所を越えることも恐れず、気になる言葉や事象や疑問点や共感の出所となる頁にバンバン貼る。そして、特に重要と思うところは頁の上部ではなく横に貼る。非常に重要と思ったらベージの下に貼る。不思議と下に貼っているものは後に確認すると何故貼ったのかがわからなかったりするのだが、横に貼った付箋は確かに、私にとって大切な言葉が書かれているところだ。

さて。今のところ、横に貼った付箋は3枚。坂口ふみという人の言葉を引用している箇所は絶対に書き写すに違いないが、それはおいておくとして。私がこんな誰の役にも立たない雑文を書いてみようと思ったきっかけの言葉(その場ですぐに響いてきたものではなく、じんわりと働きかけて来た)にも、横向きの付箋が貼られていた。それはこのような文章。

 書くことの起源に読者という想定はない。というか、思えば、起源とか正式にこだわる必要もない。そういうことを言っていると足元を掬われる。ただ書くこと。人を説得しようとか人から了解を得ようなどという気持ちから離れて、ただ書くこと。

実際には職業作家である保坂氏がそのように「書く」ことができるとは信じられない。一般人の私ですらもはや出来ないことだ。けれど、そのように書いていた時代はあったし、今も「書くこと」をそのようなものとして楽しむ(苦しむ)瞬間が皆無ではない。ほんとうにそうであったかどうかはわからないけれどカフカにとって「書く」というのはそういうことだったと保坂氏は言い、それならば私がカフカを好きな理由も納得が行き、さらにそれならば、自分の書くものも好きでいられるだろうと都合のよいことを考える。

考えたから書くのではない。書くことで考える。考えたことをまとめるために書くのではない。書いているうちにまとまってくる、あるいはまとまりもしないままに、どこかへと思考が運ばれて行く。

それが書くことの中毒性だったのだと思い出した。いつまででも書いていられるし、書き続けたいという欲求。それが生まれる源は決して暗黒ではないということも。簡単にいえば、ふと何かのためにではない文章を書いてみたくなったのだ。ただ書きたいから書くという気持ちが懐かしくなったのだ。

それを取り戻したとまでは云えない。けれど、それを失っていた自分には気がつくことができた。何のあても目的も相手もなく尽きることなく書いた時代は、たとえ二度と帰ってこなくても私の黄金期であったのだということにも。

さて。では続きを読もう。

試行錯誤に漂う試行錯誤に漂う
保坂 和志

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新年はまず、昨年の振り返りから。

では。昨年度のベスト10の発表!

1  渚にて 
2  大坊珈琲店
3  読んだ本はどこへいったか
4  70歳の日記
5  断片的なものの社会学
6  ブルックリン
7  フランチャイズ事件
8  スローライフでいこう
9  古書店めぐりは夫婦で
10 服部晋の「洋服の話」

すみません。作者名は省略で(労力が・・・時間が・・・)。
タイトルにリンクを貼ってるので飛んで下さい。

順番をつけるって、ホント。無理があるなぁ。
上位の作品の方が優れているっていうわけでもないし。
好きの度合いが上っていうわけでもないので。
敢えて言うなら、何かしらの形で心に強く残ったということ。

では、それぞれの魅力を語ってみましょう。
いえ、私がそれぞれの本から得た贈り物を一言で語ります。

「渚にて」からは、人類への信頼を。

「大坊珈琲店」からは、静かな時間を。

「読んだ本はどこへいったか」からは、生活の思想のお手本を。 

「70歳の日記」からは、老いる不安を吹き飛ばす風を。

「断片的なものの社会学」からは、弱きを愛する心を。

「ブルックリン」からは、過去を乗り越える強さを。

「フランチャイズ事件」からは、自分の道を選ぶ勇気を。

「スローライフでいこう」からは、「ゆっくり」の本当の意味を。

「古書店めぐりは夫婦で」からは、本に溺れる楽しさと苦しさを。

「服部晋の「洋服の話」」からは、物を作る気概を。

あまり、上手いこと表現できた気がしませんが・・・
あと、選ばなかったけれど、同じくらい好きな本が20冊はあります。

さて。そういえば。
去年はやりせんでしたが、一昨年もベスト10を選んでいました。
その内容は、こんな感じ。

1 「灰色の輝ける贈り物」アリステア・マクラウド
2 「美しい書物」栃折久美子
3 「清陰星雨」中井久夫
4 「スキマの植物図鑑」塚谷裕一
5 「とむらい機関車」大阪圭吉
6 「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
7 「グレングールドのピアノ」ケイティ・ハフナー
8 「時計を巻きにきた少女」アン・タイラー
9 「誠実な詐欺師」トーベ・ヤンソン
10 「マルテの手記」リルケ

ふぅ。新聞の書評の「今年の3冊」っていう企画、
思えば、凄いよねぇ・・・私にはとても出来そうにない。
3冊だけ選ぶなんて、絶対無理。

だけど。こうして無理矢理10冊選んでみると。
私自身が何を求めているか、重要視しているかが、
ぼんやりと浮かび上がってくる気がします。

来年も頑張って選んでみよう!



2016年に読んだ本

私が今年読んだ本は、212冊。
ちなみに過去の読書冊数は以下のとおり。

2005年・・・200冊
2006年・・・303冊
2007年・・・300冊
2008年・・・190冊
2009年・・・236冊
2010年・・・173冊
2011年・・・190冊
2012年・・・212冊
2013年・・・147冊
2014年・・・160冊
2015年・・・182冊

ブログを始める前は雑誌や手芸本は数えていなかったので。
冊数だけ見て、読書量が増えたか減ったか判定はできません。
(手芸本や料理本って「読書」とは言えないよね・・・)

それらジャンル的に「読書」を外れるものは除外したとしても。
読むのに一週間かかる本も、一時間で読める本も、同じ一冊。

「軽い」本ばかり選べば、倍くらいは読めてしまうし。
「重い」本に集中すれば、半減するだろうし。
読書を冊数で評価することが、ナンセンスなのですよね。

まぁ、でも。
「今年はたくさん読んだなー」とか。
「あまり読めなかったなー」とか。

もしくは。
「今年はよく図書館へ行ったなー」とか。
「あまり行かなかったなー」とか。

はたまた。
「本をたくさん買ったなー」とか。
「全然買わなかったなー」とか。

何かしら。今の自分と「本」の関係は見えてくるものです。

で。今年の特徴はと言いますと。
記録的なくらい、本を買わなかった!
あ、違うな。前半は古本屋巡りをして、そこそこ買ってます。

後半はゼロ!・・・になるところでしたが、
年末に百貨店の古書フェアにて5冊ほど買いました。

アラルコン「死神の友達」
ギッシング「ヘンリ・ライクロフトの私記」
内田百閒「サラサーテの盤」
ヴァージニア・ウルフ「オーランドー」
吉田健一「怪奇な話」

我ながら。良い本をゲットしたなぁ(自己満足に浸る)

でも。買った本は積み上げています(非常用として)
今年読んだのは一部を除いて、図書館で借りた本ばかり。

我ながら、かなりの図書館のヘビーユーザー。
今年からは住んでいる市の図書館に加え、
勤務先の市の図書館からも本を借りています。

そう。職場の所在地の市の図書館って利用出来るんです。
ちょっと最初の手続きが面倒ですけれどもね・・・
(在職証明書を会社に発行してもらいました)

さて。こちらの図書館の品揃えがなかなか素晴らしく。
我が市には在庫のない本も揃っておりまして。

何より素晴らしいのは、駅前に無人の貸し出し施設があること。
出勤前か退社後に10分程の余裕があれば、貸し借り可能。
自分の住んでいる市の図書館より、よっぼど便利なのです。

(この特典を失いたくないが為に転職しないのかも!?)

さて。冊数だけを振り返っても面白くないので、
2016年に読んだ本のベスト10を選ぶことにします!

あ。それは次回で。
これから振り返ってチェックしますので・・・
記事になるのは来年になるかと思います。

わー。自分でも楽しみ。ナニが選ばれるんだろー。
(読んだ本を片っ端から忘れる、記憶力ゼロの私)

今年読んだ本のこと。

今年読んだ本は、160冊。
手芸本やらインテリア本やら、料理本まで含むので。
なんかちょっと詐欺っぽい気もします。

年末の度に登場しますが。
参考までに過去の読書量の経過を。

2006年・・・303冊
2007年・・・300冊
2008年・・・190冊
2009年・・・236冊
2010年・・・173冊
2011年・・・190冊
2012年・・・212冊
2013年・・・147冊

昔は本さえ読めれば幸せでしたが。
今は他の趣味に時間を割くようになりました。
さらに今年は失業するという事件がありましたし。
時間がないというより、読書の意欲が薄かったのかも。

グズグズぼやいてても楽しくないので。
読んだ本が少ないからこそ、できることを一つ。
今年読んだ本のベスト10を選んじゃいます!

1 「灰色の輝ける贈り物」アリステア・マクラウド
2 「美しい書物」栃折久美子
3 「清陰星雨」中井久夫
4 「スキマの植物図鑑」塚谷裕一
5 「とむらい機関車」大阪圭吉
6 「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
7 「グレングールドのピアノ」ケイティ・ハフナー
8 「時計を巻きにきた少女」アン・タイラー
9 「誠実な詐欺師」トーベ・ヤンソン
10 「マルテの手記」リルケ

作品の優劣ではなくて。あくまで好きな本です。
どれも私を楽しませてくれた本たちですが、
出会えて感激した本は上位の三冊になります。

来年は10冊なんて選べない!というくらいに
豊作の読書になるといいなぁ・・・
冊数はあまり気にしていないのですが。
もっと「濃い」読書をしたいなと感じています。

では、みなさま良いお年を。

積ん読本を並べてみた 〜文庫編(国内)

クラシックBOOK―この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!
飯尾 洋一

ことばの食卓 (ちくま文庫)
武田 百合子 野中 ユリ

本取り虫
群 ようこ

雪沼とその周辺 (新潮文庫)
堀江 敏幸

男どき女どき (新潮文庫)
向田 邦子

無名仮名人名簿 (文春文庫 (277‐3))
向田 邦子

隣りの女 (文春文庫)
向田 邦子

猫 (中公文庫)
大佛次郎 有馬頼義 尾高京子 谷崎潤一郎 井伏鱒二 他

4時のオヤツ
杉浦 日向子

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)
城山 三郎

黒いハンカチ (創元推理文庫)
小沼 丹

祖国とは国語 (新潮文庫)
藤原 正彦

星三百六十五夜 秋 (中公文庫BIBLIO)
野尻 抱影

月と菓子パン (新潮文庫)
石田 千

蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ (講談社文芸文庫 (かK2))
河井 寛次郎 柳 宗悦 河井 須也子

ハイキングで出会う花ポケット図鑑―ひと目で見分ける320種 (新潮文庫)
増村 征夫

長い旅の途上 (文春文庫)
星野 道夫

山の独奏曲 (1982年) (集英社文庫)
串田 孫一

名短篇、ここにあり (ちくま文庫)
北村 薫

パルテノン (実業之日本社文庫)
柳 広司

菊慈童(キクジドウ) (新潮文庫)
円地 文子

猫だましい (新潮文庫)
河合 隼雄

泉に聴く (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
東山 魁夷

夢館 (創元推理文庫)
佐々木 丸美

水に描かれた館 (創元推理文庫)
佐々木 丸美

ななつのこ (創元推理文庫)
加納 朋子

夜のミッキー・マウス (新潮文庫)
谷川 俊太郎

布・ひと・出逢い (集英社文庫)
植田 いつ子

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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