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知ろうとすること。  早野龍五 糸井重里

Posted by 彩月氷香 on 24.2015 共著   0 comments   0 trackback
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新潮文庫
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福島第一原発の事故発生後に。
事実だけを伝えようと冷静なツイートを続けた、
物理学者の早野龍五さん。

「どんな非常事態であっても叫ばないで説明してくれる人」を、
見つけなければいけない、という信念を持つ糸井さんは。
そんな早野さんのツイートを見つけて注目します。

早野氏は自らのツイートに寄せられる期待や注目に驚きつつ、
そのことがきっかけで、活動を広げていくことになりました。

この本はそんな二人の対談集。

知ったかぶりは一切せずに。
糸井さんが初歩的な質問を早野氏に投げかけるので。
普通の人によくわかる「原発」の基礎知識の本、になっています。

それ以上に。
あとがきに顕著に表れている「こころのありよう」の問題が。
ずしーんと。でもふわっと。心に響いてきます。

情報が多過ぎる中で何が信じられるか判断するのは難しいですが。
その基準として糸井さんはこんな風に語っていました。

ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。「より脅かしてないほう」を選びます。「より正義を語らないほう」を選びます。「より失礼でないほう」を選びます。そして「よりユーモアのあるほう」をえらびます。

この言葉には解説が必要かもしれません。
が、糸井氏自身が見事にシンプルに語られているので。
興味がある方は読んでみて欲しいと思います。

糸井さんが語っていた「人が心に飼っている野次馬」。
誰にでもある、ちょっと困った存在で。
時に暴走して、大事件さえ引き起こしてしまうもの。

でも。それは。きっと。
抑圧するのでもなく、退治するのでもなく。
そういうものが「ある」ということを認識した上で。
それに振り回されないで上手に付き合っていくべきもの。

「野次馬」と「言葉」が結びついた時に。
多くの道連れを巻き込み、取り返しのつかない道を走ることもある。

その先頭に立つ可能性が自分にはあるという自覚。
糸井さんほど影響力を持たない人であっても。
常に忘れてはいけないものなのだな、と思いました。

一方、早野さんのお話で印象深かった中から一つ。

 科学というのは、間違えるものなんです。ニュートンの物理学が正しいと思われていた時代に、アインシュタインがある微妙な違いに気付く。そのアインシュタインにも間違えていたことがある。そうやって、科学は書き換えられ進歩していく。限定的に正しいものなんです。だから、科学者は「こういう前提において、この範囲では正しい」というふうに説明しようとする。でも、これは一般の人にはわかってもらえないのですね。

科学に限らず「正しさ」とは「限定的」なものじゃないかな、と。
これを読んでふと、考えたりしました。

それから。科学に対して苦手意識がありつつも、
だからこそ過剰に「正しさ」を求めてしまっている面もあるな、とも。

私は元々「正しい」とか「正義」という言葉が苦手です。
それらの言葉に隠れて「偽善」や「悪」が育ちやすいと感じるので。
それは本書の中で糸井さんもおっしゃられていたことですが・・・

とは言うものの。
自分はこれが正しいと思う、という信念を抱くこともありますし。
その思いを主張しなければならない場面もあるはずです。

その思いや、信念がどれほど強くても。
それが「限定的な正しさ」であることを忘れずにいたいと思います。

(2015.1.14)

琉璃玉の耳輪  津原泰水・尾崎 翠  

Posted by 彩月氷香 on 16.2012 共著   0 comments   0 trackback
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河出書房新社
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尾崎翠の作品をひとつとて読んだ事がないのです。
近頃、秘かに再ブームなのでしょうか?
彼女のファンには、たまらない「尾崎翠が蘇った!」的な作品?

江戸川乱歩や横溝正史を彷彿させる探偵物語と言えば伝わるでしょうか。
背徳の美学ではありますが・・・しかし、にぎやかでコミカルですね。

尾崎翠のシナリオだった作品を津原泰水が小説に仕上げた作品なわけで。
双方とも今まで読んだ事ない私としては、どちらの持ち味なのか謎。

濃厚な昭和初期の香りは、もちろん尾崎翠のものなのでしょう。
混沌として猥雑な中に幾つも宝石が紛れ込んだような雑然とした感じ。
いわくありげな、古い玩具箱とか屋根裏部屋とか・・・のイメージ。

怪しげで絢爛豪華で、荒唐無稽で、活劇風で、華やか。
こういうタイムスリップも時には楽しいです。

(2012.5.21)
津原泰水氏と尾崎翠女史、それぞれまた何か読んでみようと思います。

星野道夫 永遠のまなざし  小坂洋右 大山卓悠

Posted by 彩月氷香 on 30.2012 共著   4 comments   1 trackback
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山と溪谷社
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動物写真家、星野道夫の死。
クマの生態は熟知していたはずの彼。
何故、熊に襲われて亡くなるという悲劇は起きたのか?

生き方そのものが敬愛される思索家でもあったために、
いっそう、その事故が投げかけた波紋は大きかった。

彼は実は動物のことを理解していなかったのではという疑い。
自分の経験を過信して、油断と不注意があったという見解。
そのどちらも認めたくなくて、ただ謎のまま忘れようとする人。

星野道夫と親しく、それらの姿勢に納得できなかった人々がいる。
事故には隠されてしまった真実があることを感じ取り、
死の直後から追い続けた・・・それが本書の著者二名。

そして十年。考え抜いて、苦渋の思いで出した答え。
「誰も悪い人はいなかった。しかし同時に正しい人もいなかった。」

残念ながら、あれは避けることが出来た事故だという結論になる。
危険なクマの存在を当事者たちは認識していた・・・星野道夫を含めて。
そのクマは、「餌付けされたクマ」であり。
星野道夫が愛してやまなかった野生のクマとはかけ離れた存在だった。

だが。そのことを。知っていたはずだと・・・
なのに、どうして撤退しなかったのか。
それについては、この本を読んでみて欲しい。

星野道夫の弁護、あるいは神格化ということはせず、
お二人は誠実に事実に向き合って書いておられます。

その場にいなかった人間が出来ることは。
どれほどの取材と考察を重ねても、憶測でしかない。
しかし、彼らの言葉は改めて「星野道夫」の生き方を、
多方面から浮かび上がらせている・・・その意味と価値を。

「星野道夫が残してくれたもの」と名付けられた最終章が示すように。
それは個人の生死の問題ではない。彼が絶えず静かに問い続けていた、
「自然と人間の共存」という課題、そこから過去と未来へ繋がる物語。

大げさに響くかもしれませんが。
私は星野さんの著作を読むたびに宇宙に思いを馳せ、
彼の名を耳にするだけで、自分の遠い先祖が語りかけてくるような、
深く原始的な懐かしさのようなものを感じていました。

どんなに華やかなスターよりも、才能溢れる芸術家よりも。
私にとって憧れの人でしたから。とても冷静には読めなくて。
幾度もこみ上げてくるものを堪えながら頁をめくりました。

知らなかった星野さんの一面も見ることが出来ましたし、
彼の行動について、今までと少し違う方向から光を当てて、
新たに考えてみる機会もたくさん与えられました。

本書に引用されていた、私の心にも強い印象を残していた言葉。
(星野道夫の遺作『森と氷河と鯨』より)

けれども、人間がもし本当に知りたいことを知ってしまったら、私たちは生きてゆく力を得るのだろうか、それとも失ってゆくのだろうか。そのことを知ろうとする想いが人間を支えながら、それが知り得ないことで私たちは生かされているのではないだろうか・・・・。

本書の中で、特に私の心に残った見解があります。
小坂氏が「ひとつの見方」として書いていることですが。

大自然の中で暮らすには慎重でなければ命を落とす危険がある。
しかし常に慎重である人はストレスで精神を病んでしまう。
よって生き延びるためには慎重さと同時におおらかさ、鷹揚さも必要だが、
至る所に危険のある土地において「勇気」と「無謀」の線引きは難しい。

(ざっと要約しましたが、意味は曲げていないと思います。)

星野さんは「勇気」と「無謀」の狭間を生きていたとも言えるかもしれない。
だからこそ、あれだけ深く土地に根ざした眼差しを持つことが出来た。
そう思ってみても、尊い人を失った哀しみは決して消せない・・・。

(2012.5.24)
いささか感傷過多な感想になってしまい、申し訳ありません。
しかし本書は星野道夫に興味がない人にも読み応えのある内容です。
動物学と人類学という見地から自然を考える機会を与えてくれます。


泣ける話、笑える話―名文見本帖  徳岡孝夫・中野 翠

Posted by 彩月氷香 on 23.2012 共著   0 comments   1 trackback
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文春新書
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徳岡孝夫と中野 翠の書き下ろしエッセイ集。
ご存知の方も多いと思いますが、前者は毎日新聞の元記者。
後者は辛口が売りの人気コラムニスト。
両者の随筆が交互に収められています。

文章の塩梅、というのか。さじ加減というか。
どのくらい香辛料を効かせるか。
甘みを生かすために塩をほんのひとつまみ。
火加減。焼き過ぎず、煮過ぎず。生煮えでもなく。

文章を書くって料理するのと似てるなぁと感じさせられます。
材料が良くても、料理人の腕次第では食べられないほど不味い一品になる。
逆にありふれた素材も一流の腕があれば、美味しい料理になる。

結局。材料をよくよく見て。
いかに調理するか。何と組み合わせるか。

スパイスはいつも隠し持ってなくちゃね。
そして包丁もよくよく研いでスタンバイして。

いい話は。泣けるような。笑えるような。
泣けるだけの話、笑えるだけの話、って心に残らない。
どちらも含んでいる話には、ドキッとする。
泣くことと笑うことは、実はそんなにかけ離れていない。

起きた出来事の表情を決めるのは。
その出来事を映す瞳なのだろう・・・結局は。
時が過ぎれば。いつしか変化するものかもしれないけれど。

正解はない。「何があったか」よりも「どう見たか」が強い。
見た人の数だけの真実が存在するのかも・・・とそんなことを思う。

(2012.4.29)
中野翠さんはもともと好きだったので。
持ち味の小気味よい調子を楽しみつつ読みましたが。
徳岡孝夫氏の文章には、今回初めてお目にかかって。
これは収穫でした・・・人生の厚みが自然と滲む名文です。
彼の著作をぜひ読んでみたいと思います。


古本道場   角田光代  岡崎武志

Posted by 彩月氷香 on 16.2011 共著   6 comments   0 trackback
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ポプラ文庫
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師匠・岡崎武志の指令を受け、弟子・角田光代が古本屋を探し歩く。
角田さんの古書店探訪記も、それを解説する岡崎氏の蘊蓄も楽しい。

例によって、登場する古本屋が東京中心なのが残念ではありますが。
読んでいるだけで本との付き合い方が深まり、幅が広がる感じがします。

数年に一度、東京へふらふら遊びに行く私の一番好きな街は、銀座。
ですが、銀座に古本屋があるとは知らなかった!次は絶対行こう。

鎌倉も文人たちが愛して街ですから。面白い古本屋があるのですね。
一度も行ったことない・・・。ベタだけど、紫陽花の頃に行きたいなぁ。

古本談義、という堅苦しいものじゃなくて。ノリは、ポップです。
角田さんの本のチョイスがなんか、微笑ましいんだよねぇ。
「私も、その本欲しい!」と読みながら心の中でチョイチョイ叫んでました(笑)

古本初心者は、自分の好きな本、好きな作家からまず、探しますよね。
岡崎氏は、そこに以下の探究本を混ぜてみては、と提案。
氏が、すでに持っているのについ買ってしまうくらいな、本なのだそう。

親切にも、文庫に絞ってくれています。
ちょっと見つかると嬉しい・楽しい、そんな本のラインナップ。
半分くらいは、私も読んだ本・・・かつ、昔、持ってたのにな、って本^^;

難易度として、手に入りにくい方からABCのランク付けがされてます。

1 五木寛之「風に吹かれて」集英社文庫 佐野繁次郎デザインカバー限定 B
2 黒柳徹子「トットのピクチャー・ブック」新潮文庫  武井武雄の絵 C
3 星新一・真鍋博「真鍋博のプラネタリウム」 新潮文庫 A
4 和田誠「3人がいっぱい 1・2」新潮文庫 C
5 石原慎太郎「太陽の季節・若い獣」角川文庫 B
6 金井美恵子「春の画の館」 講談社文庫 A
7 文藝春秋編「大アンケートによる 洋画ベスト150」文春文庫 C
8 小林信彦「世界の喜劇人」新潮文庫 A
9 植草甚一「植草甚一ジャズ・エッセイ 1・2」河出文庫 B
10楠田恵里子「気分はサイエンス」文春文庫 C

岡崎氏も言及されてますが、楠田さんって実は素晴らしいエッセイスト。
「気分はサイエンス」他3冊ほど読んだことありますが、私もおすすめ。

上記の本たちは、どれも挿し絵も楽しめるのがポイントです。

(2011.11.27)
角田さんが買った、もしくは回想していた本がすごく気になって・・・。

江藤淳「犬と私」
ハンス・ヘニー・ヤーン「十三の不気味な物語」
林芙美子「三等旅行記」
吉田健一「怪奇な話」
武田百合子「ことばの食卓」
山口瞳「行きつけの店」
「香具師の旅」田中小実昌
澁澤龍彦「フローラ逍遥」
開高健「ベトナム戦記」
根元敬「因果鉄道の夜」
永井龍男「紅茶の時間」
田村隆一「ジャスト・イエスタディー」
ティム・オブライエン「失踪」

どれも、読んでみたい本。あ。「フローラ逍遥」は読みました。
とても綺麗な本なのです。欲しいなぁ・・・私も古本屋で探そうっと。
角田さんと私、結構、好みが近いかもしれません。

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
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