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そうか、もう君はいないのか  城山三郎

4101133344
新潮文庫
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ひとことで言うと。
「うらやましい」でしょうか。
あまりにも素敵過ぎる、ご夫婦。

飾り気なく、素直な文章。
常日頃からの城山氏の作風とは異なる。

城山氏の妻への愛が溢れていて。
ふつう、こういうものは読み手にとって、
むずがゆいような恥ずかしさを感じさせるものだが、
そういうこともなく、すーっと胸に沁みてくる。

読んだ方はきっと。「こんな夫婦でありたい」と願うでしょう。

思えばなれるというものでもないでしょうが。
このような夫婦のカタチもあるということが、
何かうれしいような気持ちになれる。
こういう夫婦がたくさん、いたらいいなと思う。

いえいえ。同じような、というわけではなくて。
まったく様相は違っていても、もちろん良い。
ただ、長く紡がれていく夫婦の愛情というのは尊いな、と。

あ。離婚がいけないとか思ってませんから。
別れた方がいい場合は絶対ありますから。

だけど。だから。
別れるなんて考えたこともなかったであろう夫婦が、
死によって別れざるを得なくなった時の・・・

最愛の妻を失った後の城山氏はほんとうに。
「半身をもぎとられたよう」で・・・

ああ。私は夫婦愛とか一生無縁になりそうですが。

それでも。僻む気持ちなどは起きません。
読んでいて、とても。とても。優しい気持ちになれます。

城山氏が生涯を注いだ経済小説を読みそびれている私ですが。
この方のエッセイは穏やかで優しくて気取りがなくて好きです。

一度、経済小説も読んでみたいですね。

(2016.6.4)

この日、この空、この私  城山三郎

4022573791
朝日新聞社
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無所属の時間で生きる、と副題にあります。

つまり、これは私の造語なのだが、「一日一快」でよし、としなければ。
事実、一日をふり返って、悪いことばかりという日は、むしろ少ない。
それでも、どう見ても快いことが無いというなら、奥の手がある。
本書に記した「珊瑚の時間」、つまり晩餐後に、寝そべって好きな本を読むことである。短時間でもよい、好きなだけ読み、眠りに落ちる。

心から読書を楽しんでいるのが、随所から窺える。
さらっと触れるだけなのに、猛然と読みたい気持ちを引き起こす。
(氏が読んだ本をせっせと「読みたい本リスト」に書き写しました)

才気走った文章の書き手ではなく、とても素直で柔らかい言葉で書く。
先月読んだナンシー・ウッド「今日という日は贈りもの」の解説には、
ナンシー・ウッドの作品以上に感動してしまったくらい。

熟年に達し、功も成した文人の書くものとは到底思えない、
どこか幼さすら感じさせる清々しく真っ直ぐな言葉に目を瞠らされた。
一流の人は皆、いつまでも若い心を持つと言うが、その好例だと思う。

何も特別なことは書いていない。日々の生活と仕事と読書のこと。
そして、出会った人のこと。まさに、徒然なる雑文。

「研ぎ澄まされた」とか「端正な」と評するには自然体すぎるような、
いい意味で力の入っていない文で、とても読み心地が良い。
・・・風通しのよい、涼やかな文章。

ハッとさせられるような鋭敏さは感じられない。
生来の心優しさが節度ある品位の衣を纏い、穏やかに佇んでいる。
何でも無いことをつい重大に捉えがちなモノ書きの習性に染まらず、
氏にあっては、何でもないことはそのまま何でもなく存在している。

不思議だ。こういう人が経済小説や政治小説だのを書くのだとは。

(2010.8.17)
城山氏の作品は読んでいないと思い込んでいたけれど。
高校時代に読まされた本の中に、氏の代表作の一つ「辛酸」があった。
足尾鉱毒事件を扱った、やるせなくなるような苦しい闘いの描かれた作品。
苦手とする作風と題材だったにも関わらず、三度は繰返して読んだ記憶がある。
好き嫌いの激しい思春期の私を惹きつけたのは何だったのか。
残念なことに本も今は手元になく、書いたはずの感想文も紛失している。



  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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