FC2ブログ
Loading…
 

『ななつのこ』加納朋子



可愛さの後ろの闇。

北村薫の「空飛ぶ馬」シリーズを彷彿させる。
要するに、日常の小さな謎とき。
殺人事件は起こらない。

主人公が読書家なのも同じ。
それに女子大生だし。
素敵な男性に出会うし。

それだけではなくて。
物語の中に物語があって。

この「入れ子構造」は加納さんのお得意かな。
私はね、ちょっとあざとく感じてあまり好きじゃない。

物語の中に物語がある、式はね。
どうしても説明くさいというか。
ちょっと無理を感じてしまうの。

世界観に深みを出す効果がなくもないけれど。
ツクリモノ感が強くなってしまう危うさがある。

著者の繊細な感覚が作風に生きている。
そこが少し、苦い。いや、だいぶ苦い。

なんだか、可愛らしく描けているけれど。
爽やかではない。でも湿っぽくもない。

泥々はしていないけれど。
そして澄み渡ってもいないけれど。

闇。

主人公が、実は好きじゃない。
彼女と似た感性を持っていると感じる人ほど。
この子が都合の良いキャラクターに見えるかも。

そんなに若いうちから。
こういう素質の子が上手く生きられたりしないよ。

あ。そうでもないのかな。
羨ましいのかな。

彼女は自分自身との折り合いのつけ方が上手く見える。
若いうちに自分を殺しすぎず生きる術を身につけている。

私はまだ。この年頃にはもがき苦しんでいた。
いえ。今も、だ。

優しさが全体に満ちているようだけれど。
それを感じ取って和む面もあるけれど。

闇。

構成に凝るタイプの作家さんで。
物語をキレイに緻密に作り上げるのだけれど。

そこから溢れるものに毒がある。
見落としてしまう人が多いのかな・・・

そうでなければ。
こんなにこの人の作品が「かわいい」と言われるわけがない。

闇。

私はそれを著者が描くつもりはなかったんだと思う。
こぼれ落ちてしまった、図らずも見せてしまった、と取れる。

ノスタルジーや、心地よさは感じない。
むしろ、後味は悪い。それが悪いというのではない。
それは著者の本質なのだと思う。

愛情や優しさや夢や思い出が満ちて。
まあるく、ふんわりした世界を作り上げている、と。
そんな風に感じて、この本を読める方が幸せかもしれない。

北村薫の描く女子大生の方が。
そういう意味ではファンタジーなのかな。
でも、私はそちらの方が好きなのだ。共感できるのだ。

著者が女性だからかな。
描こうとしたわけではなく、滲み出てしまった何かが。
創り上げようとしている世界観からはみ出している。

それも持ち味と取ることはできるのだけれど。
残念ながら、それゆえに。
私にとっては繰り返し読みたいとは思わせない作品。

(2019.3.10 読了)
私のように感じる人は多くはないと思います。
加納朋子さんの作風自体は好きなんです。
読んだ時期が悪かったのかもしれない。
心底、癒しを求めている時は。
敏感に「闇」を感じとるのかもしれない。
そして元気な時はその「闇」も美しく見えるのに。
そんなものを見せてくれるな、と思ってしまうのかもしれない。
もっと「必要性」を感じさせる「闇」なら良かったのですが。


『はるひのの、はる』加納朋子

4344424565
幻冬舎文庫
Amazon

過去を修正した、その結果。

あ、しまった。シリーズ三部作の最後を先に読んでしまった。
1 ささらさや
2 てるてるあした

こんど、読んでみます。この本単体でも十分読めましたけれど。

まぁ・・・なんだろう。
哀しいし、優しいし、辛いし、ほっとする。

単純に。
過去は変えないのがいいと思うけど。
変えられるなら変えたい場合はあるでしょう。

変えてしまったら何が起こるのか。
いいことも、悪いこともある。
それは変えなくてもそうだったとも言える。

やさしさはいつも。
ほんのり哀しいということ。
温かいけれど、ちょっと痛いということ。

そして。
案外、わがままなものだということ。

主人公の母親が素敵なんです。その描写。

いつだって母は日々を味わうように、そして楽しくてならないというように、嬉しげに生きていた。


あと。
これはそうかもしれないな、と感じたところ。

「人はね、ほんの時々、落とし穴みたいにして悪いことをしてしまうことがあるの。色々な辛い出来事が重なって、それが限界を超えているようなときに、ふっと悪い道にさまよい込んでしまったりするの。魔が差すなんて言い方もするけれど・・・時と、場所と、人との全部が出会い頭にぶつかるようにして、一番悪いタイミングで揃ってしまうことがあって・・・それでも、悪いことをする人が絶対に悪いんだけれども、でもその人は、そのとき色んな条件が揃いさえしなければ、一生、そんなことをせずに済んでいたかもしれないの・・・わかる?」


(2018.3.19)
ふんわりと哀しくて。
なにか、やっぱり私にはとても哀しくて。

『モノレールねこ』加納朋子

4167673037
文春文庫
Amazon

さりげなく、あたり前のような日常のなかに、事件は起こる。

人はずうっと、長く長く、心にその傷と痛みを抱えて、
でも、何でもないというふりを表向きは装いながら、生きている。

失くしたものは、何だろう?
見えていて、目を逸らしているもの、
見えていなかったことに、ある時ふいに気付かされるもの。

・・・どちらにしても、それは見つめる勇気を持った時に、
思いがけなく、ゆるやかに姿を表し、光を取り戻す。

ズキン、と胸が痛くなる、でもほんのりと甘い切なさと、
ふんわりと背中から、そうっとかけられる優しい思いやりと。

笑い泣きしたくなる、ちょっと痛い愛おしさに満ちた8編。
ああ、いいなぁ・・・。描写の端っこに漂うユーモアも。

表題作「モノレールねこ」も、もちろん、いいし。
「マイ・フーリッシュ・アンクル」も、いい。
「シンデレラのお城」も「ポトスの樹」も。それから、それから・・・

ようするに、全部、いい。

だけど。一つを選ぶなら、間違いなくこれ、「バルタン最後の日」。
こんなに、とある生き物(ナイショ)を愛おしく思えるとは・・・

泣きました。加納さん、この涙の責任をとってください。
私、まさか、***(ヒミツ)のために泣く日が来るとは、
思ってもみませんでしたよ・・・。

私のお気に入り短篇のランキングを作るとしたら(考えただけで頭痛がするけど)
絶対に、かなり上位に入ります。

人間の弱さを否定せず、かといってかばおうともせず、
まぁるく包みこんでくれ、寄り添ってくれる。
黙って、立ち上がるのを見届けてくれる・・・そんな印象。

著者の人柄が表れているのだろうなぁ、この優しさは。
何気ない日常をみつめる眼差しの温かな人なのだなぁ。

(2010.11.1)
この本も「すぐ読めて満足感あり」のシリーズの1冊です。
紹介者の奇堂さん、ありがとうございます。最後の一編、私も大好きです。
「ななつのこ」も読み返したいですね。続編を読むために。



  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

このサイトはAmazonアソシエイトに参加しています。

表示中の記事

  • 加納朋子

カテゴリ

カテゴリー 月別アーカイブ

 

***