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ブライヅヘッドふたたび   イーヴリン・ウォー

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イギリス小説の味わいは何故か懐かしい。
美しくて哀しい、と言ってしまえばそれまでだが、
500頁を超す長さで、細密な描写を贅沢につらねたこの小説は、
わかりやすそうでいてわかりにくい人間の心情が様々に交錯して、
すっきりとはしない読後感を残した。

魅力、ただそれだけは確かに豊かに存在して、
殊に若い頃のセバスチアンの美しさといったら・・・。

この小説の主題はどこにあるのだろう?
カトリックという宗教の存在は大きな位置を占めるのだろうが
私は無視して読んだ。

美しい青年たちの濃密な友情、そこに絡む、兄そっくりに美しい妹、
貴族の放埓な生活・・・。そして、戦争。

ユルスナ―ルの「とどめの一撃」に似た筋立てだ。
あちらは短く、しかももっと直截な残酷さで締めくくられる悲劇だが。
冗漫ともいえる長さ故か、曖昧な靄に包まれた詩情が漂う、
このイーヴリン・ウォーの小説の方が私には親しみやすい。

場面場面の美しさに、しばしば息を呑んだ。
仄暗い色彩の静かな輝き。
広大すぎる御屋敷の何があるかも見通せない空間の深さ、
歴史の重み、積る塵・・・言い尽くせぬものが、そこここに漂う。

何故だろう。本当に懐かしい。
魂の在り様としても、きっと通じるところがある。

苺と上等の葡萄酒の組み合わせ。
そしてそれを表現するセバスチアンの台詞。
車と、苺が一籠とそれからシャトー・ペラゲーの白葡萄酒が一本ある。―君がまだ飲んだことのないものだから、飲んだことがあるような顔をしても駄目だよ。苺と一緒にだと天国の味がする。

他に、大変に美しく印象的なのは二人が利き酒をして酔う場面。
お酒を表現する言葉の、詩のように磨かれた響き。
結論も教訓も必要としない美が、何とふんだんに溢れていることだろう。

(1999.8.24)
知りたいことがあって、過去の日記をパラパラとめくったら、
11年前の夏の読書の感想が目に留まった。
夏の暑さを忘れさせてくれる美しい文章が記憶に甦り、一瞬、涼しさを感じた。
訳も吉田健一氏で、気品があって素晴らしい。


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Author:彩月氷香

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時々、写真や雑記も。

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