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『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子



たくさんの自分たちの会話。

第158回芥川賞受賞です。

63歳の新人、というのと。
最愛の夫を亡くした老女が主人公というのと。
方言を駆使して書かれているというのと。
予備知識で興味を抱いたので読んでみました。

主人公の「おら」(桃子さん)は。
8年前に喪った夫を「惚れ抜ぬいだ男」と断言しつつも。
彼の死に一点の喜びがあった、と気付きます。

ギリギリの時に浮上してしまった、隠していた心。
「独りで生きでみたがった」
「思い通りに我れの力で生きてみたがった」

しかし。亭主の死後、「意味」さえあれば耐えられる、と。
「意味」を欲し、探し、時には作り上げる桃子さんでもあり。

そんな桃子さんが脳内で繰り広げる自分たちの会話が描かれて。
ただ、それだけなのですが、退屈はしません。

事件は脳内で起こっている、のです。

岩手弁も、知らないのに不思議とわかる。
読みにくくはちっともない。リズム感があって楽しい。

多少、気になるとしたら。
74歳という設定の割に、主人公が老けてるかなという気が。
都会暮らしの老人はもっと若いよね。
日々、高齢の方々に接しているとそう感じる。

あと。何よりも残念だったのが終わり方。

え。結局、孫が遊びに来て、ほんわかと救われるの?
今時、孫がいない高齢者もいるんだよ。
いてもいなくてもいいけど。
孫を都合よく登場させるのは反則でしょう。

なんか、最後にがっかりしてしまった。

「独りで生きたい」とか言って、結局それか。
そもそも、あなた、「独り」だったことないし。
いやいや、誰といても人は独りだとも言えるけど。
それは今更すぎることだし。

つまんないなぁ。
もったいないなぁ。

でもある意味。
桃子さんのこの「残念さ」にリアリティがあるかも。
「独り」の心の中の闘いなんて、所詮。
可愛い孫の存在で、吹き払われる程度のもんなんだよ、と。

そうでもなきゃ、やってらんないのかな。
生きていくのって、しんどすぎるのかな。

子供も、孫もいない老後をいつか迎える私の僻みかもしれない。
そう考えると、私もちっぽけだな。

上から目線を承知で言わせていただきますと。
「悪くない」作品でした。感動はなかったな。

うん。やっぱり。最後がダメでしょう。
桃子さんを結局、「中途半端から脱出できない女」にしちゃった。
彼女の葛藤に付き合ってきた時間が無駄になった感じがした。

まぁ。そんなことはないんだけれどね。
終わり方って、難しいよね。好みの問題もあるしね。

この最後が良かったって人もいるだろうし。
正しい、正しくないの問題でもないし。

終わりが残念、と思えるだけの評価ができるってことで。
心象風景ばかりで単調でつまらないと感じることはなかった。

それも読者の性格や資質によるものがあって。
それを「つまらない」で切り捨ててしまえるのも個性だね。
私は心の中の言葉たちが、どんな作品でも一番面白いと思うけれど。
逆に言えば。派手な活劇はつまらないと感じがちだったりもする。

老人でも、いろいろなんだから。
高齢者が多い世の中なんだから。
もっと様々なタイプの老人がヒーロー、ヒロインでもいいよね。
まだまだ。ステレオタイプに描かれてると思う。小説でも映画でも。

自分なりに。
型破りな老女になってみたいです。

(2019. 7.2読了)
老人小説だったら。
京極夏彦の『オジいサン』の方が断然、好きだなぁ。

こちらに過去記事があります。

『オジいサン』京極夏彦

『装丁物語』和田誠

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夢中で読みました。本好きにはたまらない本です。

装丁、とても楽しそう。いい仕事だなぁと思う。

そして、和田さんがよくわかっておられるように、とても大切な仕事。

デザインとは何か、ということを考えさせられます。

書き下ろし、ならぬ語りおろし、ということで、軽妙な語り口ですが、
最後にバーコードについて語るときはトーンが一変します。

その思いの強さに打たれます。同じ思いを抱いている身には心強い言葉です。

 

「バーコードは確かに便利です。でも便利だということが、本の歴史や文化を傷つけてることを忘れちゃいけないと思う。」

(2006.8.6)
この本が書かれた1997年から日は過ぎて。
今や、本にバーコードのあることに、私も慣れっこになってしまった。
人は醜いものも受け入れ、その存在に慣れていくのかと、改めて悲しい。

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

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