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たんば色の覚書  辺見 庸

Posted by 彩月氷香 on 04.2011 辺見 庸   2 comments   0 trackback
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毎日新聞社
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「日常を語るには、痛みを語るほかない」という著者の言葉に、
きっと少なからぬ人が、首肯するだろう・・・

「私の痛みこそが世界でいちばん痛い」のを真実と認めながら、
彼は、他者の痛みとの関係を経つ危険に警鐘を鳴らす。

姿の見えない他者の痛みを、自分の痛みをきっかけに想像し続ける。
・・・それは、徒労のようで少しも徒労ではない、と。
その信念が、このエッセイ集のなかに力強く生きている。

読者たる私は、普段、必死で目を逸らしている闇に包まれ、
呪いと哀しみに満ちた深淵を覗きこまされ、
胸には重たい石がつかえ、息苦しく・・・。

この本を読むことが「痛み」を生むのに・・・否、思い出させるのに、
そのことによって研ぎ澄まされる感覚が見せてくれる景色を、
残酷で救いがないけれど、比類なく美しいものに感じた。

遠い他者の痛みは、容易には自分の痛みとは繋がらない。
だから、痛みは、いつも孤独の底で声を抑えて泣くのだ・・・と。

彼はその孤独の中で、「たんば色」という美しい青の色を心の盾とし、
闘い続ける・・・自らの語りの中身への自己嫌悪に負けまいとして。

自分だけの痛みの中で自己完結する道へ逃げたがる私の弱さに容赦なく、
突き刺さってくる文面が、読んでいる間中、私の心を釘付けにしていた。
胸に響く箇所に貼った付箋が、剥がすのも億劫な数にのぼった・・・

(2011.3.23)
彼が本書の中で繰り返し取り上げている本があります。
H・メルヴィルの「代書人バートルビー」。
私もずっと心に大切にしている不思議な魅力の短編で。
一番好きな短編小説と言っても過言でないくらい・・・
しかしあまり有名ではないので、思いがけぬ場所で出会い、
驚きました。何故好きなのか説明できない作品でもあります。


幽霊船 他1篇 (岩波文庫)幽霊船 他1篇 (岩波文庫)ハーマン・メルヴィル
こちらに収録されています。私が読んだのはボルヘス編集の素敵なシリーズでしたが、残念ながら絶版なので。タイトルも違い、「バートルビー」となっています。


  

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