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隣りの女  向田邦子

4167277220
文春文庫
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五つの短篇。
どれも、自分と似てはいないのに、
よく「わかる」と思える女が登場する。

ほんとうに若い時にはわからないのだろう。
いいえ、わかりたくないというのが正しい。

同じ題材をきっと向田邦子以外の人が描いたら。
目を背けたくなっただろうな・・・

時々、私は「女」が嫌いなんだなと実感する。
自己嫌悪はそこには含まれていない。
いや、言い切ってしまうとそれも嘘になる。

「女らしさ」と言っても色々な側面があって。
いくつかの「面」としては私も持っている。

だけど、何か欠けていて。その欠落している部分こそが、
「女」の芯というか、本質のような気がしている。

学校も職場も女だらけ・・・という人生で。
女性はもう見飽きました(笑)
やっぱり、イヤだなぁ、女って。

あはは。何が言いたいんだっけ。
自分には欠けている女らしさを見ると、怖くなる?
怖いっていうか、哀しいっていうか・・・
うーん、やっぱり怖い、のかな。

曲がりなりにもそこそこの年月を女として生きてきて。
女の気持ちはわかるのですね、さすがに。
だけど、他人事のように一歩離れている。

外から観察した「女」なのだな。
自分の内側にある「女」ではない。

正確に言えば。
自分の中の「女」と共鳴する部分もないわけではないけれど。

なにか。ずっと。幼い時から。
女の人の中にある、いちばん「女」な部分が怖かった。
それが具体的にどういうものかは言えないけれど。
察知する瞬間があって・・・

私にはそれがない、と断言しても良いものか。
あると思いたくないだけかもしれない。

「女」を内側から描くと、恐ろしいことになる。
(あ、読み手の私にとって、ということです)

向田邦子はちゃんと、外からも見ている。
だから、私は彼女の小説ならば気持ちよく読める。

かなり濃い「女」なんだけどなぁ(笑)

下手くそな言い方になるけれど。
向田邦子は自分の中の「女」に溺れていなくて、
でも「女」から逃げてもいない。

ほんとうに。格好いい女性でした。

(2016.6.21)

向田邦子の恋文   向田和子

4101190410
新潮文庫
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この本を読むと、向田邦子さんの様々な面が見えて来ます。

娘としての、向田邦子。
姉としての、向田邦子。
恋人としての、向田邦子。

強い女性だったと思う。
それは強くならざるを得ない境遇に負けなかったからなのか。
それとも持って生まれた心の芯の強さだったのか。

お茶目な可愛らしさや、大雑把な面も持っていたと知り、
なんとはなしに、ほっとします。

向田邦子という人がそれで身近になるからではなくて。
彼女自身の生き苦しさが少しは緩和される気がして。

それでも。あまりにも格好よすぎるじゃないか。
こんな鮮やかな生き方を見ると悔しくなるじゃないか。

彼女の胸の内にはどんな嵐が吹き荒れていただろう・・・。
生涯消えなかったはずのものをどのように心に収めていただろう。

(2012.12.20)
妹の和子さんが邦子の死後に見つけた、恋文。
姉が生涯、秘めていたものをこうして明るみに出す事に、
きっと異を唱える方もあるでしょう。
けれど、私はこの恋文を読めたことは嬉しかった。
彼女が書いた小説にも劣らない珠玉の一篇に思えます。

あ・うん   向田邦子

4167277204
文春文庫
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するするっと。呆気なく読み終えてしまった。
なんだか、とても惜しいことをした気持ちになった。

いいな。この筆致。やわらかいけれど鋭い。

こういう愛もあるかもしれない。
こんな友情もあるかもしれない。

人と人の距離の近さ。
現代人にとっては恐怖にもなりそうなくらいの。
それでも息苦しくはなかった。

秋風が吹くような涼しさがあって。
なんだろう。風通しがいいんだな。

言葉を切り詰めているという印象はなく。
だけど、確かに多くは語らない。
少し離れたところから光を当て、対象を浮かび上がらせる。

彫り込んだようではなく、やわらかな陰影がある。
時々、ぴかっと一点に光が当たったりもする。

もう今では。お伽噺のようにも思える。
奥ゆかしい、きめ細かい質感を持った小説。

(2012.11.21)
読み終えて、思わず大きく深呼吸。
周囲の空気が束の間、清々しくなった。

思い出トランプ  向田邦子

410129402X
新潮文庫
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向田邦子を読んだことがないと言うと。
たいてい、少し不思議なカオをされる。

乱読家の網に、この作家がひっかからないなんて、
およそ考え難いことではあるだろう。

彼女に限らず。何故だか読みそびれてしまう作家がいる。
きっかけがつかめなくて。いや。読みたい気持ちが湧かなくて。
・・・そのことは隠すべきではない。

テレビでチラとお見かけして。
子供心に苦手なタイプの美人だと感じた。
自信ありげな、「自分」というものを強く持っている、
そういう顔をした女性が小学生だった当時、私は苦手だった。

その印象がずっとずっと消えなくて。
とうとう手に取ることもないまま、長い年月が流れてしまった。
読んでみてまず思い出したのは、先日読んだ山口瞳の随筆の一節。

「山口さん、わたし、もう駄目なの。遊んでばっかりいるの」
御巣鷹山のあの事故で客死する十日ばかり前、酒の席で。
彼女はそう、山口瞳の耳元で囁いたのだという。

その時の彼女の顔を忘れられないという彼は続けてこう書く。
「私も、あんなに面白くて、一字一句が粒だっているような文章を長く書き続けることは神様でないかぎり(彼女は大天才ではあったが)不可能だとおもいはじめていた。」

これが大げさな褒め言葉でないことがよくわかった。
なんと惜しい人を失くしたものだろう。

今まで読まなくて良かったのだと思った。
作家の顔に文句をつけるような子供時代を過ぎても、
私はまだ、彼女の作品の凄みがわかるようにはならなかった。

日向を歩くような性分ではないくせに、ある種の影を、
どうしても受け付けず、力一杯に拒絶してしまう思春期だった。
光への憧れが強過ぎて。見過ごしてしまう昏い領域があった。

そんな時期にうっかり読んで「ふ〜ん」で済ませてしまったら。
この稀有な才能に出会うことが出来なかったのだ。

これだけの年数が過ぎて。ちっとも古びない。
この文章は。怖い。わかったかもしれない・・・昔の私も。
凄さをひしひしと感じながら、きっと激しく拒絶しただろう。

切れ味の鋭さに目を奪われて。
その刃物を持つ手の優しさに気づくことはなかっただろう。

(2012.4.22)

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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