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破天   山際素男

Posted by 彩月氷香 on 04.2012 仏教   2 comments   1 trackback
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光文社新書
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仏教に対する興味が少しずつ高まっていく中で。何気なく手にした本。

佐々井高嶺という、現代インドで一億五千人以上もの信奉者を持つ、
インド新仏教の指導者の波瀾万丈の人生を描いた本と知り、
私がまず抱いた思いは。「読むのやめようかな」だった。

どうにもカリスマという存在が苦手なのだ。
それが指導者であれ、アイドルであれ、ミュージシャンであれ、
芸術家であれ、美容師であれ、思想家であれ、教育者であれ・・・、
圧倒的な影響力や信望者を持つ人間というものを、
私は昔から、ことさらに冷めた目で見てしまう性分である。

長年教会に通いながら、とうとうキリスト教徒になり損ねたのも、
イエス・キリストという歴史上でも屈指のカリスマを、
どうしても生理的に受け入れることができなかったからだ。

現代のインドで日本人が仏教を復興させようとしてる?・・・胡散臭い。

同様の読者を想定してだろうか。まず宮崎哲弥氏の解説から本書は始まる。
通常、本文の後に添えるべき解説を先頭にもってきたのは、
多くの人に読んでもらいたいと、著者か出版社が知恵を絞ったのだと思う。

私もTVでお馴染みの宮崎氏の顔を思い浮かべ、放り出すのを思い止まった。
しっかりと戦略にはまったワケである。それでも不信感は消えていない。

猜疑心たっぷりに「まぁ読んでやろうか」と上から目線で読み始め、
気がつくと、600ページ近い大著を一気に読み切っていた。
ページをめくる手がとまることは、一度もないままに・・・

「なせばなる ならぬは己のなさぬなりけり」と自らを叱咤し、
死ぬ気になればなんでもやれる、と。ガムシャラに生きてきた男。
突っ走っては壁に勢いよくぶつかり、跳ね返ってひっくり返り。
ボロボロになりながら、何度も何度も立ち上がり、また走った。

色欲の並外れた強さに苦悩し続け、それが原動力の一つでもあった。
(小学生で女を知っていたという絶句するような話も著者に明かしている)

真摯で率直、という資質は幼少時から変わらないが。
それゆえ空回りして注意に迷惑をかけ、人を傷つけては死ぬほど悔い。
仏の道を歩み始めてからも、どこかに収まることが出来ず放浪の日々。

彼はインドを目指したわけではなかった。
聖人になろうとしたわけではなかった。

徹底して自分を追いつめる彼は醜悪な自分すら公平に扱った。
そして、どこまでも自分に正直に生きようとした。
そこから次の行動が生み出され、その行動の中で思想を育んだ。

やがて。いつしか「高潔の士」と言われるまでになった。
(本人は救いようのない凡愚と自らを評している)

彼の手記の、自らを罵倒する言葉の羅列の激しさ。
誰しも同様の念に駆られることはあるだろうが、
これほどまでに容赦なく徹底できるものではない。

彼の業績からすれば偉人伝となるべき書物だが。
それよりもワクワクする冒険譚という様相が濃い。
彼の身体と魂、双方の命がけの旅の記録なのだ、この作品は。

周囲を彩る人々の数々の物語もまた、忘れ難い。

「日本に帰ってバンテージのお母さんに会う機会があったらこう伝えて下さい。お母さん、あなたは大変な子供を産んでくれました。インドを動かすような人物を育てて下さり、私たちに授けて下さいました。私たちは本当に心から感謝しています」

なんと素敵な言葉だろう。バンテージというのは佐々井のこと。
インドの民衆にこれほどまでに慕われ、信頼されるようになったのは。
背景に、カースト差別の歴史の中で根付いた人間への不信感がある。

佐々井は自らの生き方を陽の下に示し、それを打ち破ったのだ。
聖人だとは思わない。しかし凄い男だとしか言いようがない。
圧倒されながら、妙に清々しい。心に青空が広がるようだ。

私が常日頃、持論として抱いている「絶望できるのは才能」という
思想を鮮やかに裏付けてくれたからかもしれない。

(2012.4.24)
絶望が深ければ深いほど、人の魂は磨かれるものだと信じています。
弱いから絶望するのではない、絶望する精神力を待たぬ人間の方が弱い。
だから、絶望に至る前に引き返してくるのは私は偉いとは思いません。
やたらとポジティブであることには同意しかねるのです。


つぎはぎ仏教入門  呉 智英

Posted by 彩月氷香 on 04.2012 仏教   4 comments   0 trackback
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筑摩書房
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私。仏教には正直なところ、さして興味がありません。
家に仏壇もないし・・・ 自分の先祖が、どこの宗派か知りません。

祖母の影響で、精神的に身近なのはキリスト教ですが。
クリスチャンではありませんし、むしろキリスト教も苦手かも・・・

これは話せば長くなるのですが。
キリスト教に出会う前に、信じていた神様というものがありまして。
言ってみれば、自分で作っちゃった神様。
どうやら、ベースはキリスト教ではあるようですけど。

西欧の児童文学ってキリスト教の色が濃いですからね。
そこから、エッセンスと様式を得て、自分の心で育てた・・・
まぁ言ってみれば「私だけの宗教」ですか。

いや。宗教っていう概念は無かったので。神様を信じていただけ。
それが、学校や教会で正式に(?)「イエス・キリスト」に出会った時に、
「これは私の神様じゃない・・・」ってことになったのです。

今は笑えますが。結構、深刻な葛藤がありましたよ。
神と神のバトル。自己内・個人的・宗教戦争、勃発。
なんて言うと、信仰してる人に叱られるかなぁ。

近いのだから「私の神様」から「キリスト教」に移行できそうなものですが。
私としては、「譲れない」部分があった。「納得できない」部分があった。

あ。いかん。どんどん、本の感想からズレていく。そもそも入ってない!
さ、そろそろ本題(本書の感想)に行きましょう。

著者は、仏教を信じていない人です。
だから冷静に書けると自負してらっしゃいまして。その通りだと思います。
「つぎはぎ」とおっしゃいますが。仏教全体が俯瞰できます。

キリスト教との比較も、よく出てきますが。
「仏教は覚りの宗教、キリスト教は救いの宗教」というのはわかりやすい。
ここまでなら、まぁ聞いたことある範囲の捉え方ですけれど。
仏教にキリスト教の影響が・・・というところは、ハタ!と膝を打ちました。

「愛」の概念も仏教では、「執着」のことであって捨てるべきものなのですね。
仏教がきわめて理知的な宗教であることも得心が行きました。
生まれた時から矛盾を内包した教義であることも。
・・・ってまぁ、どの宗教でも、そうですけれど。

そもそも、つまるところは釈迦の教えは現在の仏教に、殆ど残っていない。

大乗仏教と小乗仏教の違い、禅宗は?
とてもわかりやすく、整理されて頭に入ってきます。
その上で著者は現在、そして今後の仏教に警鐘を鳴らしている。

無神論者が仏教を行く末を案じるってのも、おかしなもんだけど。
神を信じない人間にも、信じられる「宗教の役割」ってものがある・・・と。

宗教は、結局「組織」でしかあり得ない。
その組織を守るために、時代と共に変貌せざるを得ない。
私は、たぶん、そのことがどうしても受け入れられなかったのだと思います。

それは、仏教、キリスト教に限らず、どの宗教でも同じこと。
集団に属すことを嫌う人間には馴染めない独自の社会性を持っている。
そして年月と共に、それを大きく育んで行く・・・

さて、本書の中で私が、へぇぇ~と感心したことは。

・「愛」「必要悪」という言葉の本来、意味していたもの。
・なぜ、仏があんなにも増殖したのか。
・枝分かれし派生した宗派がそれぞれ、意図し目指したもの。
・「輪廻」「悪人正機」・・・時代を経て捉え方の変化した概念。

面白いですねぇ。考えさせられることは多々あります。
乱暴過ぎることを承知で敢えて言うと、仏教はかなり哲学的ですね。

現在の私は信仰を持ちませんし。神を信じませんが。
「神を信じる気持ち」を持つ人は、少し羨ましくは感じます。

「宗教」という器なく「神」を信じることは、一見、純粋で美しくも見えつつ。
煎じつめてしまえば、「自己愛」に収斂されてしまうのでしょうね。
人それぞれの捉え方があると思いますので、断言はしませんけれど。

だから。もう。神を信じない・・・というのも、それは。
裏返せば、自分を信じないということでもあるような。
(あくまでも、私個人の話、です)

いえ。そういう理屈ではなく。ある日、気が付いたら心に神はいなかった。

脱線しまくりましたが。本書を読んでいて。
信じていたものが消える・・・その過程についても思い巡らしました。

(2012.2.4)
個人的な感慨に終始してしまい、申し訳ありません。
「仏教入門」と聞いて思い浮かべるより、遥かに知的な読み物です。
呉 智英さんの本、初めて読みましたが。他にも読んでみたくなりました。
読み解き方と論説の展開が明快で爽やかで・・・お上手です。
この本、私にとって「仏教入門」でなく「呉 智英入門」だったかも(笑)
仏教を知りたい人にも、もちろん全力で(!)お勧めです。


心―いかに生きたらいいか 高田好胤

Posted by 彩月氷香 on 24.2011 仏教   0 comments   0 trackback
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徳間書店
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著者が生きた時代が私には遠く思えてしまった。
彼が憂いた家族の問題は、今や遥かに悪化している。
いや、問題とすべき点がもはや大幅にズレているように感じる。
40年とちょっとの間に、社会状況が大きく変わってしまったのだ。

よって。親子関係を語る氏の言葉に、まったく共感できない。
だってねぇ、専業主婦が一般的だった時代の話なんだもん。

先日、大谷徹奘「静思のすすめ」を読んだ時、
著者の師である高田さんのエピソードがとても印象的で・・・
それで、この本を読んでみたのだけど。

期待が膨らみ過ぎていたのか、あまりにも「普通」で・・・普通の人で・・・、
正直、拍子抜けしてしまった。

ただ、この人は自分をよく見せようという欲のない人だ。
すすんで、謙遜するという素振りもないのだが、
格好いいことを言おうとしたり、人に感銘を与えようとしたり、していない。

時々、ハッとさせられるのは、心の素直さ。
当たり前のことを当たり前に語っているという印象の中で、
時折、きらりと光るのは、この人の心根の美しさなのだろう。

彼が人の心を惹きつけたのは、思想ではなく、
もっと素朴な何か、温かなものだったのだろうということが感じ取れる。

薬師寺の金堂の再建にかけた彼の願いは胸に響く。
写経百万巻(一巻千円)にて十億を集めようと決心した、
その思いの底にあるものが尊い。

十億、ポンとと出しやるという財界人の申し出を断り、
最大の努力をして大勢の人に参加してもらって、
「昭和の日本人の心」を金堂という形で残したい・・・との志を貫いた。

やっぱり、普通の人なんかじゃ、ない。うん。

(2011.7.9)
ソビエトの旅での著者の眼差しの、まるで童子のような素直さに。
思わず、笑みがこぼれました。旅から帰った時の彼の言葉が好き。

町もむこうでは道があって、その道に沿ってのびのびと家が建っている。こちらは家が盛り上がるように密集しています。(中略)考えてみたら、この国は本当にせせっこましい国です。
 ところがそのとき、私はせせっこましいとは考えず、ああ、やっぱり日本の国は引きしまっているな、と思ったのです。日本のこういう国土風物が日本人の引きしまった感覚を、引きしまった精神というものを、こしらえ養っているのです。

引きしまった・・・か。いい言葉だなぁ・・・。
近頃じゃ、めっきり緩んでいる気もするけれど。
私も、ちょっとは、精神を引きしめなくっちゃ。


 

静思のすすめ  大谷徹奘

Posted by 彩月氷香 on 12.2011 仏教   6 comments   0 trackback
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文藝春秋
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お経は人生に迷う人間のためのガイドブック。
いわば、「幸せのるるぶ」と著者は言う。

薬師寺の僧・・・でいらっしゃいますが。
何故この人が、お坊さんになったのだろう?と思うような。
よくも悪くも仏教は向いて無さそうな人柄。

我も強ければ、気も強く。協調性もなく。負けず嫌い。
ご本人にも自覚はあったようですが。
傍から見ても、こりゃあ、大変だ!と感じます。

修業の最中に、夜遊び三昧だったこともあるそうな・・・。
そして、そんな自分が苦しくて苦しくて。

しかし、彼は。僧として生きる道を選び、ずっと歩んできた。
憧れの、「この人のためなら死ねる」とまで思った師匠がいたから。

それが、かの有名な高田好胤さん。
荒れ果てた薬師寺再建のため、一人1000円の写経納経の供養料を集めた。
100万巻の写経が必要だったが、最終的には600万巻集めたという。

説法が滅法(ダジャレではありません)上手な人だったらしい。
修学旅行生を相手によく、お話されていたそうだ。

いえいえ、そんなことよりも。
私は、幼き著者と共に映った写真の、優しい笑顔に見惚れてしまい。
ああ、こりゃ付いていくわ・・・と納得。私も、こんな人の傍にいたい!

好胤さんは、ある日、二日酔いで酒臭い著者の横にすっと来て、
「叩かれる!」と身構えた、その頬をそっとなで、
「顔色が悪い。ちょっと休んでおいで」と優しく言ったそうだ。

苦しんでいる著者のことを、ずっと見守っていて。
知っているけれど、何も言わなくて。そして、このセリフ。
思わず、もらい泣きしてしまったじゃないか・・・!

本書に話を戻しまして。
著者言うところの「静思」とは、文字通り立ち止まり静かに考えること。
何を考えるか?それは自分自身、他者、現実のこと。

この「静思」こそ幸せに生きるために必要もの。
真の幸せは、辛いこと苦しいことがあっても幸せに生きること。

あとは・・・気になった人は、読んで下さい~。
(実は、説明できるほど明瞭に覚えておりません)

(2011.6.)
上記の感想が脱線し過ぎなのを反省し。
本書でいいなと思ったところを具体的にひとつ。
(かなり自分風にアレンジしちゃってますが・・・)

「アイ マスト」(私は~ねばならない)ではなく、
「アイ ウイッシュ」(できれば~だといいなぁ)で生きよう。
そう、断定形ではなく、願望形で。
望んだもの全てが、出来なくたっていいんだよ。
それは手抜きじゃなくて、心に余裕を持つことだから。

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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