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全身翻訳家   鴻巣 友季子

4480428496
ちくま文庫
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パラパラ読もうと軽い気持ちで開いたが。
楽し過ぎて一気に読んでしまう。元々翻訳家のエッセイは大好物。

中でもこの人のは秀逸。気が利いているけれど洒落過ぎてない、
笑えるけどドタバタじゃない、しんみりもあるけど湿っぽくない。
軽妙な筆致だけど意外と深いところまで染み込んできて、余韻が残る。

翻訳家に「全身」ってついているとこ。何となくわかる。
ただの憧れで終わったけど、翻訳家になろうと考えた時期があった。

翻訳しようとすると言葉にとても敏感になる。
文化や歴史を交えて言葉を見つめるようになる。
それがしんど過ぎると感じた私は向いてなかった。

翻訳(真似事だけど)をしていると翻訳小説が読めなくなってしまった。
いちいち翻訳の言葉が気になって。「ひっかかる」箇所が増えて。
翻訳者が苦心惨憺したんだろうな、という痕跡が見えてしまったりして。
「自分ならもっと上手く訳すのに」と思えるほどの野心も自信もなかった。

・・・そんな私の思い出話はさておき。

村上春樹の翻訳者が世界数十カ国から一堂に会した際、
ロシアの翻訳者が「心」という日本語を何と訳そうか悩んだ末、
訳さないことを選んだという興味深い話とか。

間違い電話も国際電話が多いという著者の国際的(?)な生活。
下高井戸シネマの近くに住んでいることを自慢げに語るお茶目な一面。
保育園の連絡ノートを書くのに文章の組み立てを考え徹夜・・・など。

共感出来るような、できないような・・・面白さ。
加減、ということをとてもよくわかっている人だと感心する。

「雨に想う人」と題された、久世光彦氏を語った一篇がいい。
文庫のたった5頁の中に贅沢に凝縮されたものは、思い出ではない。
久世氏のことを語っていながら。そこに託された祈りに似たものがある。

良い出会いというのは。
このように一見すれ違いながら心に根ざすものなのだろう・・・

(2012.10.13)
微妙にずれた翻訳の気持ち悪さ。これはよくわかる。
作中にて触れられる書物の話も、私の好みに合っていて。
だから尚更、弾んだ気持ちで読めたのかもしれない。
あと不思議と。翻訳家の方って料理好きな人が多いですね。
著者の料理の描写も随所で楽しめます。真似て作ってみたくなる。

やみくも  鴻巣友季子

4480816593
筑摩書房
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近頃では珍しいことに、書評を頼らず、何となく良さそう、と選んだ本。
著者は翻訳家。副題も、「翻訳家、穴に落ちる」とある。気軽なエッセイ。

装丁と挿絵がまず、気に入った。
文章も内容も、いい感じ。
読みながら、挟んだ付箋は15枚以上。
どうやら、また読みたい本を増やしてくれたようだ。
(ありがたいやら、ありがたくないやら・・・)

ちなみに、いつか読む本リストにプラスされたのは、
久世光彦「美の死」、ヴァージニア・ウルフ「壁のしみ」、
アンドレアス・スタイコス「彼女はいつもおなかをすかせている」、
深澤直人「デザインの輪郭」、エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」
アルベルト・モラヴィア「軽蔑」


さばさばってこともなく、しっとりでもなく、
肌触りの良い文章。センスがいい。

翻訳家になりたかった頃を思い出しながら読んだ。
そういえば翻訳家のエッセイは当たりが多い。
著者が嘆く微妙にズレた翻訳の気持ち悪さはよくわかる。
翻訳で台無しになった本を読み、幾度泣きたくなったことか。

世界十数ヶ国から村上春樹の翻訳者が一堂に会すシンポジウムの様子など
非常に興味深い話題もあり・・・

さらに、いいエッセイの条件ともいえる美味しそうな料理の描写。
いいなぁ、こんなエッセイを書きたいな。
いえ、別にエッセイストを目指してるわけでは無いですけど。

(2009.6.10)


  

プロフィール

Author:彩月氷香

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  • 鴻巣友季子
2010年04月07日 (水)
やみくも  鴻巣友季子

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