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ハーモニー  伊藤計劃

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ハヤカワ文庫JA
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伊藤計劃「ハーモニー」読了。近頃では珍しい、夜更けの読書。夢中で読んでいたが、ある地点から強烈な懐かしさに捉われた。私が自分は30歳までは生きないと根拠なく固く信じていた頃、ずっと描いていた世界に極めて近い。病気も不快も苦痛もない完璧な社会と、そこから脱落し、反抗する者たち。

完璧ということに(もちろん限りなく近いだけだが)、人間は耐えられないと私も思った。それでも一度世界が滅亡の危機を迎え(人類の大多数を失い)、それを乗り越えたなら、「善」「健康」「美」を志向し、死守するようコントロールする社会が生まれるだろうと。そしてその世界は自滅するだろうと。

でも、ここまで突き詰めることは出来なかった。最後は、びっくりした。完璧な社会を作り上げるためのコントロール方法は私はもっと古典的・・・というか、SFよりはファンタジー寄りの手段を考えていた。どちらにせよ、一部の過去の世界の悲惨さを知る者たちが世界を牛耳るのは同じだったけど。

完璧な社会を作りあげたとしても、アンダーグラウンドやグレーゾーンは存在する。ただ私はそれは徹底的に隠される(隠せる)と考えていた。正しいことしかない社会からはみ出したものは、一つにまとめられて隠蔽されつつも上手に利用される。ああ。ほんと懐かしいな。色々な小物(道具)も考えたっけ。

小説のアイデアとして温めていたわけではまったくなくて、ただ自分が生きている世界が耐えられなくて、もっと生き辛い世界を脳内に構築していただけだった。だから結局、物語にはなり得なかった。基本的に。私の妄想は悲惨さを追求する方向にある。(仮の)主人公をいかに不幸にするかが主題。

若いうちは誰でもそういう時期があるような気がするんだけど。絶対に幸せになんかなりたくないという・・・。長生きも全然したくなくて。うん、確実に現在の年齢までは生きてない予定だった(笑)。今になってみると、たぶん私は長生きするタイプなんだろうなと思う。

自分の未来が思い描けないことが、自分が長く生きないことの根拠だった気がする。もちろん病気ばかりしてたので、何かの病が命取りになるだろうと期待もしていた。今も未来が思い描けないことは同じで、でもそれが逆に死や老いを実感できない方向へ転化している。過敏と鈍感は紙一重ということ。

病気がなく、不快な味を経験することもなく、不快な画像を見ることもなく、
仮にそれを体験したとしても、後には大量のセラピストが控えている。

不快感のない世界・・・あなたなら、そこで幸せに生きられますか?
私は、確実に無理だと思う。耐えられない。
著者が重い病を負っていたことが、何だかとても腑に落ちます。

苦しんでいる者は、苦しみの消えた世界を望むのではない。
自分が長きに渡って苦しんでいることを否定したくはないから。
むしろ苦しみに意味があることを証明しようとする。

ああ、残念だな。著者がもう新しい作品を書くことが出来ないのは。

(2012.12.22)
読了直後にツイッターでつぶやいた言葉を転載しました。
(点線の枠で囲ってあるのがそうです。だいたい140字×7)

きちんと思考を整理して書き直すつもりでしたが。
それにはかなり深く掘り下げなくてはならないので見送ります。

忘れていた若い頃の自分に対面させられたような感覚がありました。
もっともっと著者の本を読みたかったと強く思います。

虐殺器官   伊藤計劃

4150309841
ハヤカワ文庫JA
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タイトルを見ただけで、まず思う。
きっと凄惨な虐殺シーンが展開されるだろう、と。
だからと言ってたじろぐ可愛げなど、とうに卒業したが、
読むのに躊躇することには変わりはない。

たぶん、私が読書する前にあらすじを知りたくないのは、
「知っていたら読まなかった」という本が多いからだ。

危険な気配を察知すると近づかない私であるが。
実生活の過度の臆病さを少しでも埋め合わせしたいのか、
読む物に関しては敷居を低くするべく努めている。

とは言え、避けたい要素や傾向はある。
本来は読書に関しても相当の偏食・・・否、食わず嫌い。
大抵、見た目が駄目なので。口を運ぶ直前まで目を瞑る。
(つまり、出来る限り予備知識を遮断するのだ)

ゆえに読む本のジャンルさえ把握していないことも多々あり。
ハードボイルドのつもりで読んでいたら純文学であったり。
フィクションだと思っていたらノンフィクションだったり。

今回も、まさかのSF!知っていたらもっと早く読んでいたかも。
サイコ系の犯罪小説と勘違いしていたのだ。
(まぁ・・・広義で言えば。その認識も間違ってない。)

しかし。なんとまぁ。文学と哲学の香気漂うというか。
イマドキ珍しくなってしまったような、真性の繊細さというか。
ナイーブ過ぎる殺人者なんて使い古された設定のはずなのに。

罪を逃れたいと願うのではなく、罪を背負うことを選択する。
積極的に。一途に。盲目的に。命をかけてでも。
それによってかろうじて自己を保つことが出来る・・・

自らの生は、どれだけ多くの屍の上に成立しているか?
そんなことを問えば、青臭い感傷だと笑われてしまいそうだけど。
足元に踏みつけている犠牲者の感触をずっと感じている・・・私も。

自虐的な妄想であるとは思わない。
そして罪の意識が一層の利他主義を生む皮肉も否定しない。

あり得そう過ぎる近未来の地獄絵図。

(2012.11.24)
青臭くて小っ恥ずかしい、と感じる方もいらっしゃるかも。
主人公のキャラクターに加味した要素でもあるでしょうが、
もともと著者本人のパーソナリティーなのだと思います。
このどこか幼くも見える強い「後ろめたさ」の感覚に惹かれました。
ストーリーから類推される残虐さは感じず、静謐さすら漂っています。

  

プロフィール

Author:彩月氷香

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時々、写真や雑記も。

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  • 伊藤計劃
2013年01月18日 (金)
ハーモニー  伊藤計劃
2012年12月01日 (土)
虐殺器官   伊藤計劃

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