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冬至まで〈下〉  ロザムンド・ピルチャー

4795275432
日向房
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こんなクリスマスが送れたら・・・

かけがえのない大切なものの喪失ということも。
物語のテーマとしてあるわけで。
キラキラにハッピーなクリスマスではありません。

でも。このクリスマスの情景は。
徐々に光の差してくる心と呼応して。

一度は粉々に砕けた心でも。
きっと再生できると信じさせてくれる。

つまり、きみは馬鹿じゃない。少しは自分を主張するようにしなさい。ほかの人がきみに代わってそうしてくれるわけにはいかないんだから。自分を主張しようと思うなら、ちゃんと理屈にかなったことを主張すべきだ。くよくよしたり、やたらすねたりするんじゃなくて。

ルーシーは初めて会ったときから、オスカーが大好きだった。初対面のときから虫が好かない人がいるように、初めて会ったときから好きで堪らない人もいる。会ってすぐはっきりするものなんだわ、好き嫌いって、きっと。どんなに時がたったって、オスカーに会ってすぐ感じたような親しみを、ランダルにたいして感じることはないだろう。

サムの体も冷えこんでいたが、すぐには動きだそうとしなかった。というのは、ふたたび空を見上げたとき、貝殻の内側のような淡いピンク色が突如、紅と黄色の炎にも似た色に、燃え立つ火のようなきれぎれの条に変わったからだった。なお見守っていると、遠くの岬の低い丘の上にオレンジの太陽が一インチ、二インチとせり上がりはじめていた。まばゆいばかりに輝く光の屈曲した縁がうねりを上げている海面に触れ、起伏する砂丘の黒々とした影をおぼろに霞ませ、薄墨色だった空の暗がりを散らして、サファイア・ブルーに、さらに群青色に変えはじめていた。
 その輝かしい日輪が世界のかなたから上るのを見守るうちに、サムは時の観念をまったく失っていた。それは少年の日に見た日の出と同じように新鮮な奇跡であり、彼は寒さも忘れて恍惚と見とれていた。灯台の灯の針のようなまたたきも消え、あたらしい一日が始まっていた。この冬至の日を境として、昼が一日一日と長くなり、そしてやがてあたらしい年を迎えることになる。そう思いつつもサムは、あたらしい年が自分に何をもたらすのか、想像もできずにいたのであった。

善人ばかり登場するわけでもなく。
悪人ではないけれど心の貧しい人の描写は痛烈です。

いる、いる、いる、こんな人・・・
幸い、身内にいないと言える私は運がいいのだろう。

ままならない環境や人間関係に苦痛があるとしても。
くよくよしたりすねたりは、もう卒業しよう。

(2017.12.11)
スコットランドの景色がクリスマスに似合い過ぎ。
中村妙子さんの翻訳、いいですね。
翻訳している本の傾向も好みにあうようです。
あ。津田塾卒業生。父が牧師。・・・なるほど。
キリスト教文化に通じている背景があるからですね。

冬至まで〈上〉  ロザムンド・ピルチャー

4795275424
日向房
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クリスマスの頃に読みたい本。

「あなたは、ご自分がうつくしいと思ったもの、役に立つということを知っているもの以外は何も持っておられないんじゃないですか?」

「ウィリアム・モリスね、それ」

「それこそ、おそらく高雅な趣味の尺度でしょうね」

この何気ない会話が素敵。
心地よい住まい作りの参考にもなる本です。

とにかく。上巻には出てきませんが。
下巻で描写されるクリスマスの情景が素晴らしい。

舞台は現代だけれど。
「赤毛のアン」や「若草物語」などに通じるものがある。

また読みたいな。好きだな。
人間の描き方が温かく、舞台となる土地の情景が美しく。

好きになれる登場人物が多過ぎますが。
だからと言って、「甘い」物語ではありません。

呼吸が楽になる・・・読んでいると。
どれだけ息苦しい世界に私はいるのだろうかと気づかされる。

(2017.12.11)
主人公が11歳の女の子へ贈る本、ジョン・バカン「羊の島」。
読んでみたいと思ったら、未訳の本でした。

シェルシーカーズ〈下〉  ロザムンド・ピルチャー

4931284094

朔北社
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舞台は風光明媚なイングランド南部のコーンワルだけれど。
人間模様には、なかなか苦みがあります・・・
家族三世代に渡る物語で、魅力ある人々がたくさん登場。

しかし、残念ながら「そうではない」人もいて。
その描き方はなかなかに「容赦ない」と感じます。

だから、ただ快い読み心地の田園小説にはなっていない。
けれども、主人公と主人公の愛した人々の「心映え」が、
読み手の心も明るく照らしてくれます。

大袈裟でなく、ここには「人生」があるな、と。

もっと早く出会っていたら、きっと何度も読み返したでしょう。
そして、これからでも、やはり何度か読み返すでしょう。

(2015.2.25)

シェルシーカーズ〈上〉  ロザムンド・ピルチャー

4931284086

朔北社
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それはどう考えてもワクワクすることが起こりそうにない生活だったが、エセル叔母さんは毎日をせいいっぱい楽しみ、いつも金づまりのはずなのに、それを心おどる、期待にあふれたものとしていた。

人はいつも老人の孤独について語る。しかしペネラピは自分に与えられた孤独を楽しんでいた。

父さん、よく言ってたわ。「人生は折り合いにつきる」って。

読むうちに言葉の一つ一つが溶けては消えていった。雨に洗われているガラス窓をとおして見た、さまざまな形のように。幸福を容易に見出す能力をもっていたソフィー。彼女は単に幸福を見出しただけではなかった。その全存在から幸福が輝き出ていた。

いつもながらごくありふれた素材から、ただ楽しい雰囲気をつくりだすだけでなく、目に快い風情をたくみに演出する母親の生まれながらの才能に感嘆せずにはいられなかった。

 独立自尊。それこそ、人生の大切なキーワード、運命が人に投げつける、どのような危機も乗り越えさせてくれる、ただ一つのものだ。自分自身でありつづけること。他に依存せずに独立独歩で生きること。あらゆる才能で才覚を働かせ、自分のことは自分で決めて行くこと。自分の余生についても、自分で決断をくだし、自分でその航路を定めて行くこと。

主人公のペネロピが、素敵過ぎます!
老いることに希望が湧いてくるような、魅力ある女性。

潔いんですね。そして精神が豊かで自由。
伸びやかな心の持ち主って、見ていて清々しい!

こちらの気持ちもぱぁぁっと晴れるようです。

それに比べて私と来たら・・・とグズグズ落ち込もうにも、
その代役のように、彼女の子供たちがダメダメぶりを発揮。

なぜ、この母にして、この子????
うん。それが作品として良い按配になっているんです。

(2015.2.23)
気にいったところを幾つか引用しましたが。
最後の一文、「航路」としているところがもしかすると、
まるで違う言葉かもしれません・・・
慌てて打ったせいか「コーウ」となっていて。
だとしたら「航路」?と推測したんですが。
うーんでも、何か違う気も・・・

双子座の星のもとに  ロザムンド・ピルチャー

4795212678

日向房
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作者自身が愛着のある作品だそうです。
ああ、わかるなぁ・・・

ひとことでいうと、「みずみずしい」。
善意からの嘘に苦しむ主人公の気持ちに。
らしくもなく、涙を誘われました。

情景描写も心理描写も美しく。
読んでいて気持ちの晴れ晴れとする本です。

優しさと楽しさと切なさと。
そして光の泡がはじけるような幸福感と。

ひととき、清らかで温かな光に包まれて。
魂を丸洗いしたみたいな、すっきりした読後感。

ありがとう、と著者にお礼を言いたくなります。

(2015.1.28)
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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