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密会  ウィリアム・トレヴァー

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新潮クレスト・ブックス
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今、いちばん好きな「短篇」作家、って思ってましたが。
うーん。本作はなぜか、そこまで良いと感じなかった。
なぜかしら・・・

タイミングなのかもなぁ。
私自身があまりにも心の状態が悪くて。
感度が下がっているというか、狭くなっているというか。

今まで読んだ作品(と言っても2冊)は感動に浸ったのだけれど。
いや、なんか普通に「ま、いいんじゃない?」って感じで。

なんか、哀しいんですけど。
レビュー読む限りでは、「さすがトレヴァー」な出来らしいのに。

(2016.7.1)
すみません、こんな感想で。ほんと情けないわ。
通常だと、どこが私にとっては面白くなかったかを書けるんだけど。
なんかそれすらも無いっていう・・・ 何、この鑑賞力の低さ。

聖母の贈り物   ウィリアム・トレヴァー

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国書刊行会
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ミセス・モールビーは死についてあれこれ考えてみた後で、たぶん、死が訪れた後には、眠っているときと同じような夢を見ることになるんじゃないかしら、と思い至った。天国と地獄はそういう愉快な夢劇場にかかっている映画にすぎないのでしょう。あるいは、目覚めて開放されることが決してない悪夢という映画。ミセス・モールビーの見るところでは、罰やごほうびを分配しているのは愛に満ちた万能の神様ではなくて、結局最後まで生き残る人間の良心であった。

やがてわたしはアイルランドに帰ってきて、今シャーロットがしようとしているみたいに夫を迎えるだろう。いや、もしかすると結婚はしないで、弟の屋敷にずっと暮らすことで満足するかもしれない。アデレイドと一緒にね。子どもが生まれるかもしれない。でも、もしかすると独り身のままで、この修道院遺跡のあたりを歩きながら、大昔のことや湖で釣をする修道士のことなんかを詩に書いているかもしれないわ。

「世の中には後始末をするのに時間がかかるひとだっているのよ。そういうふうにできているんだからしかたがないの」

ひとりぼっちの人間にとっては、つらつら考えることが友達みたいなものだ。

以上、心に残った文章の抜粋。
誠実で穏やかな淋しさ・・・とでも言うのでしょうか。
静かにそっと、励まされる感じがします。

訳者あとがきにこんな一節もありました。

著者が学校教師のかたわら独学の彫刻家として開業して、小さな村で暮らしていた頃のことを「すこし『日陰者ジュード』みたいでした」と語っていた。

「日陰者ジュード」(トマス・ハーディ)は私の大好きな作品!

あと。訳者さんの言葉をズルして引用しますと。

トレヴァーは、カトリック的心性にひそみ入りやすい欺瞞を見逃さないと同時に、神秘的なものを神秘のままに受け止める無垢な精神のありように深い共感を抱いている。

こういうところが、トレヴァーの魅力なのだなと納得。

そして、以下、読後の私のつぶやき。

ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』をぽつりぽつり読んでいる。数年前に『アイルランド・ストーリーズ』を読んだ時も感じたことだけれど。彼の作品は何とも不思議な魅力に満ちている。重苦しく、晴れやかさというものとはまるで無縁。静謐というにはどっしりとして。曇り空の下の草原の美しさ。

時々あまりにも心に突き刺さり。思わず涙ぐみながら本を閉じた。風化させることの出来ないものを抱いて生き続ける人間へのひっそりした愛情を感じる。厳しいほど率直に、美化されることなく描かれる人間の弱さの数々ではあるけれども。それを許すでもなく咎めるでもない視線に少しだけ、心が救われる。

上記の感慨を洩らしたのは、
「マティルダのイングランド」という物語を読んだ時のことです。

あ。いいそびれていましたが。本書は短編集。
この人の短篇の出来の素晴らしさには、ため息が出ます。

(2015.4.20)

アイルランド・ストーリーズ  ウィリアム・トレヴァー

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国書刊行会
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12編の短編。
明るいとは言えない。暗いとも言えない。
ポジティブではない。ネガティブでもない。

敢えて言うなら、諦念や諦観が近いかもしれない。
でも、そう名付けるには不適当なしぶとさを感じる。

アイルランド人の国民性?

作風を国と結びつけて考えたことはあまり無いけれど。
風土が作品に影響しないなんてあるはずもなく。

こじれた、決して晴れやかではない歴史の痕は、
どの物語にも重苦しい影を落としている。

自らが背負ったものを常に意識しながら、
正面から見ようとはしない・・・その姿勢を。
逃げていると言える強さを持つ人にはきっとわからない。

乗り越えられないものと共存して生きる強かな弱さ。
時が流れて風化しても、また繰り返し鮮明に甦る傷跡。
耐えることも習慣になった日々に宿る歪な自己愛。

消えないのか、消さないのか、消せないのか。

いつも曇り空のイメージのアイルランド。
気候だけなら隣国のイギリスもそう変わりはないはずで。
でも。もっと重たく灰色の空が広がっているように感じる。

昔。イギリスを旅行した時。
アイルランドに住んでいる日本人の女の子に出会った。
彼女がイギリスでなくアイルランドに惹かれたわけが、
今になって、なんとなくわかるような気がする・・・

名前も忘れてしまったけれど。
彼女の目を見ると暗い森のようだと感じたことを思い出す。
頭上に重い雲が広がって影を落としているような表情をしていた。

それは、哀しげであるとか、不幸せそうというのとは違う。
曇り空を、彼女は厭うているようには思えなかったから。

婚約者と別れていなければ、今はアイルランド人なのかも。
それとも、案外日本に帰って来ているのだろうか。

(2012.11.17)
鴻巣友季子さんのエッセイ「全身翻訳家」のおかげで出会えた本。
どうやら彼女の本の好みは、私と相性が良いようです。
この作家をもっと読みたい。幸い翻訳作品がたくさんありました。

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
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時々、写真や雑記も。

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