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閑な読書人  荻原魚雷

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ダーッと書き抜いた引用とメモです。私自身のための記録ですので、何のまとまりもありません。ごめんなさい。

想像力のためには適切な空腹が必要なのかもしれない。

世の中には、あんまり儲かっているようには見えないけれど、潰れない店がある。そのころの自分はそんなふうなかんじで食っていけないかなあと考えていた。

それでも自由業の世界では、会社員だったら欠点にしかならないような怠惰さや金銭感覚の欠落も、ほめられはしないが、それによって全否定されることはない。

 私は毎日ものを買いに出るんだけど、私の住んでいる岩倉で、同種のものを商っているうちが三軒か四軒ある。そうすると、自分の足が向くのはそのうちの一軒ですね。なぜ、その一軒を選ぶかというと、別に長話をするわけではなくて、二言三言なんだけど、そこへ行くとだんだん元気が出てくるような人がいる。つまり、人生の応援歌みたいな感じがする人がいるでしょう。言葉に花があって、それがおまけなんだよね。机の上で経済学者商行為といってとらえているのとはちょっと違って、やりとりがあるわけでしょう。
 
 自分の内部が空洞化しているかもしれないと不安になったときも、ジタバタ焦るのではなく、逆にのんびりしたほうがいい。
 もしかした空洞というか心の空き地みたいなものがあるくらいでちょうどいいのかもしれない。

 わたしも日々の仕事や生活を送っているうちに、「自分の生地」が磨り減っていくような不安をおぼえる。ずいぶん磨り減らしてしまったなあという悔恨もある。
 それでも一読者としては、「自分の生地」を守りぬいているような人の作品に触れたい。
 詩でも文章でも、その人ならではの「生地」、あるいは「初期の詩精神」のようなものが失われてしまった作品はどこかものたりなくおもえてしまう。

 おもしろいものを探すのと同じくらい、ちゃんと何かをおもしろがれる状態を作ることが大切なのだろう。

 「辛さ」や「鬱屈」をストレートに吐露するのではなく、小説の中に溶かし込み、ふくらみをもたせる。

 働かなくても食べていける“本隠居”はむずかしくても、「晴れ時々隠居」であれば、会社勤めしている人にも不可能ではない。
 休日、あるいはその日の仕事が終わったら、のんびり隠居然として過ごす。
 隠居の価値観で生きるといってもいい。
 とくに予定をつめこみすぎないことはすごく大事だ。一日のうちに、あれもこれもやろうとすると、忙しくなりすぎて、余裕を失う。
 隠居の立場からすれば、年収が多い少ないとか家が大きい小さいとか、どうでもいいことだ。
 いかにのんびり、その一日をすごせたか。ひと手間かけて、ちょっと贅沢な気分を味わえたか。いかに自分の時間を楽しむか。そこに隠居の価値はある。
杉浦日向子

 「濁貧」に遊ぶ。何の役にも立たないことの趣味や研究に一生を捧げる。世の中の基準ではなく、自分にとって大切なことに時間をかける。

 「私は人間の最上の徳は、人に対して上機嫌で接することと思っている」

 「人生は木のようなもので、まっすぐに伸びた幹だけの木よりも、枝があちこちに伸びている木のほうがおもしろい」

 言葉は道具として不断に手入れをされ、だいじに取り扱われ、使慣らされることで仕事を手早く進め、仕上げを整えるものだった。
 その人の使っている言葉と言葉に対する態度で「人」は評価された。
 なぜなら道具には個人の経験を超えた摩滅と洗練と修復を生抜いた形があって、それが深い共感を伝えるから。

 無用とおもわれるものをどんどん切り捨ててしまうと、味気なくなるというか、息苦しくなる。

 本を読むということが、読んだ人間に残す痕跡というものは当人の自由にはならない。自分が必要だと思ったり、読むべきだと思って一生けんめい読んだ本が、その人間に対して必ずしも力を持つとは限らないと思う。(中略)反対に、何気なく手にとって読んでしまったもの、あるいは、好きだ、ということに気づかないでいて、しかし無意識にひきつけられて読んでしまったものが、あとで意味を持って自分自身に働きかけていることがあり、しかもそれにずっとあとになってから気づくということもある。

 狭くなることを洗練と錯覚し、わからないものをわからないままぼんやりと受け止めることができなくなる。

(2016.3.10)
私、この人の感性と文章が好きです。

古本暮らし  荻原魚雷

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わたしは『菜根譚』は魚返(善雄)訳がいちばん好きだ。

 本の整理をするとき、「もし今この本を持っていなかったとして、百円均一の棚で売っていたら、買うかどうか」と自問する。百円でも買わないなぁ、とおもえるような本なら、迷いなく売る。この方法は、本にかぎらず、衣服や贈答品にも応用できそうだ。「これは百円でも買わんな」というような食器もどんどん捨てることにした。今なら百円ショップでもっといいものが買える。

 なにかしらの制約を自分で決めないときりがない。
 向き不向き、要不要。その見極めはとてもむずかしい。

ペットボトルのダンボール。二リットル×六のものが本やCDの引越用にぴったり。

新しいことをはじめる。それを習得するのに十年かかる。人生の残り時間はあとどのくらいか。そんなことを考えていたら、何もできない。
 あとさき考えずにやりたいことをやる。それがいちばんだ。

 経験上、「文章を書くことによって、心を落ち着かせたい」とおもうようなとき、ようするに、あるていど不幸、不遇なときのほうが、文章に気持ちがこもる。
 そうすると、仕事が順調なときは、あんまりよくないということになる。
 矛盾しているようだが、そうなのだ。

 体力にも個人差があるように、欲望にも個人差がある。でも好奇心や欲望のおもむくままにいかなくなったのは、体力のおとろえとも関係している気もする。

 収入が不安定だと人生設計ができない。その結果、なりゆきまかせになる。なりゆきまかせでいくにしても、なんらかの計算が必要になる。計算ばかりしていると、おもしろみがなくなる。なんの計算もしないと長続きしない。むずかしいところだ。

共感しすぎて、引用だらけになりました。本を読む、本を買う、文章を書く。それで暮していけたら幸せだなと思ったこともあるのだけれど。著者のように雑文書きで生きていくのはなかなか大変。うん、でもこの人の暮らしぶりは好きだなぁ。それにしても最後に引用した一文、突き刺さるほどに他人事じゃないな・・・

以下、本書の中から気になった本を書き抜いてみた。

菜根譚、眼中の人、天野忠随筆選 (ノアコレクション)、一人のオフィス、すこぶる愉快な絶望、軽薄派の発想(吉行)、うらおもて人生録、男性諸君(神吉拓郎)、たたじまいの研究、ジャーナリスト感覚(太田克彦)、悲しい生活(松村)、「ベターホームのスピード料理」、無用のかがやき、旦那の意見(山口瞳)、灰皿抄(永井竜男)、ふつうがえらい(佐野洋子)、神も仏もありませぬ(佐野洋子)、東京的日常(関川夏央)、詩論のバリエーション(荒川洋治)、自分を語るアメリカ(片岡義男)、気晴らしの発見(山村修)、

さて。

同人誌『VIKING』編集人黒田徹さんが挙げていたという「いい作品の条件」
一、作者が「書きたい」と思って書いたもの。二、いやしさを感じさせないもの。三、自分の言葉で書いてあるもの。四、作者の精神が隠れていないもの。以上の四点。
著者はこれにさらに付け加えるなら「なるべく短く」だそうだ。

うん。わかるわかる。そしてこの四点を満たすのは、大抵の場合、作家の処女作もしくは初期の作品である場合が多いんですよね・・・

(2016.4.10)
著者が同業者の先輩に言われた言葉が、やけに耳に痛い。

「自分の言いたいことなんてたった一行でいいんだよ。おまえの原稿は最初から最後までぜんぶ自分のいいたいことばかりだ。それだとおまえのことを知ってるやつならおもしろいかもしれないが、知らない読者には伝わらないよ」

これ・・・自分も思い当たるなぁ・・・

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
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時々、写真や雑記も。

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