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渚にて  ネヴィル・シュート

Posted by 彩月氷香 on 09.2016 ネヴィル・シュート   2 comments   0 trackback
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創元SF文庫
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人間性への、美しくも強い信頼。

人類がもしも滅ぶなら。それはきっと今までも書き尽くされ、数多の映像でも描かれたように、自らの愚により迎える終焉なのだろう。本書でも、その点は変わらない。核戦争の放射能で全人類が死滅するというお定まりの展開。

しかし、このように静かに終わりを受け入れる姿は想像したこともなかった。滅亡間近の人々の暮らしぶりは恐怖と哀しみを背景に持ちつつも、牧歌的とさえ言える穏やかさで。私は知らず知らず、どうかこの人たちを救って下さいと祈る気持ちで読み続けていた。

実際には、あと数ヶ月後に全てが終わりますと宣告されたならヒトは狂乱状態になるだろう。吐き気を催すほどの人間性の醜悪さが続々と露呈するのだろう。

だから、この作品の登場人物たちの姿に驚き、驚きつつもそれがあり得るかもしれないと感じたことで、不思議なほど心が癒された。それぞれの流儀で大切なものを守り、最期を迎えようとする人々の行動の尊さに涙が止まらなかった。

「どうせ終わりなのだから」と思ってしまえば、どこまでも落ちて行くしかない。終わることを頑なに信じないのは逃避でしかない。終わるとわかっていても、現在も過去も未来も捨てずにいることが人間の尊厳を守り、精神の平衡を保つ唯一の道なのだ。

たとえ先が短くても今を楽しみ、失われたものと知っていても過去を慈しみ、実現できないとわかっている未来の夢も封じずにいる・・・そんな奇跡のようなことを人間の精神は成すことができる。少なくとも、この作品はそう語っている。

著者のネビル・シュートは信じていたのだろうか。それとも信じたかったのだろうか。人類が滅びの時も気高く美しく純粋な心を持ち続けていられるということを。

私は信じることはできない。けれど、もしもの時の自分を支えるために、この本の中で出会った人々の姿を忘れずにいたい。そして作者が人類に注いだ信頼と愛を贈り物として胸に大切にしまっておこう・・・ずっと。

(2016.8.12)
「パイド・パイパー」を読んだ時も感じましたが。ネビル・シュートという人の作風は、静謐で透明感があります。テーマは重いけれども、声高に語りません。その筆致と世界感が私はとても好きです。ただ、静けさゆえになおさら恐怖や哀しみの浸透度が深く、ほんとうに一つの世界が滅びてしまったような衝撃が長く尾を引きました。

パイド・パイパー   ネビル・シュート

Posted by 彩月氷香 on 11.2012 ネヴィル・シュート   4 comments   0 trackback
448861602X
創元推理文庫
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イギリスの老人が戦火の中、子供たちを連れて。
フランスから故国を目指す・・・その道中を実に淡々と描く。

これで、ちっとも退屈しないのは作者の見事な力量。

日本では知られていないが、英米では人気作家というのも頷ける。
イギリスではアガサ・クリスティ、ハモンド・イネスと
並ぶくらいの人気なのだそう・・・ほほぉ。

訳者さんの言葉を借りますと。

思えばどの作品も物語の楽しさを存分に味わわせてくれる、端正な作風の稀有な小説家である。

一作しか読んでいませんが。この意見に賛成です。
他の作品も探して読んでみよう。

(2005.4.1)
大雑把な感想ですみませぬ。いずれ読み返そうと本を買ってあります。
再読した際にはまた詳細な(?)感想を書く・・・かもしれません。
他の著作は軒並み絶版だったので、古本を買うか、いっそのこと、
原書で読むべし・・・かなぁと思ったり。
私が原書を読もうかなとか言い出すのは(その気もあまりないクセに)、
相当に気に入っている作風だということです。
しかし創元推理文庫から出てますが、ミステリではないよね・・・

  

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