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醜い日本の私  中島義道

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新潮選書
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感受性のマイノリティ? 私も?

あとがきは、一読の価値あり。
しかし、著者は自分を「ヘンな人」というが、
そうではないのではないか・・・と思う。

本書の主題とは外れるかもしれないが。

「治り」たくない。

これは、この本の中の名言。
病あるものは、少なからず病に愛着を持っている。

すべての場合に当てはまるとはもちろん、言わない。
だが、心の有り様に直結している病は治らないのではない。
そう。不思議なことに「治り」たくない。

そのことを著者は上手く表現している。すなわち、

自分の暗い性格に悩んでいるものは、たとえそれを完全に明るい性格に変える薬が発明されても飲まない。肌の色で差別に苦しんでいるからといって、色を変える手術はしない。ほとんどのゲイは「ゲイを治す薬」が出来ても飲まない。

おっしゃる通りで。
私は自分の「暗い性格」に思春期には死にたいほど苦しんだが。
明るい性格になりたいとは、微塵も思っていなかった。

「暗い性格」のまま、認められたいのである。
否、「暗い性格」に苦しんでいる自分は捨てられないのである。
「暗い性格」だからこその自分、と信じているのである。

自分が自分の欠点や弱点と感じるものを。
克服しようと前向きに努力できる人もいるのだろうけれど。
自らの「弱さ」「醜さ」こそを愛してしまうのが人間だ。
そのことを自覚しているかどうかは人によるだろうけれど。

結局、「醜い日本」というのも。
そうだからこそ愛しい、と思えてしまう人間の性から生じる。

本書に張った付箋、30枚あまり。

共感する内容なのに。
読んでいて、不快感が強かった。
切り口というか、語り口というか。

なぜ著者は。
そんなに自分を「マイノリティー」に分類したいのか。

私は別に自分が少数派であることを誇ろうとは思わない。
心の底にその意識がないかと言えば、なくもないだろう。
しかし、声高に語って読者を不快にすることもあるまい。

テーマと、語ろうとしている内容に対しては同意できる。
日本の風景の醜さに関して泣きたいのは私も同じだ。
だからと言って自分の感受性がマイナーだとは思わない。

いや。待て。実はそうなのか?
その可能性を認めることはさすがに私も怖い。

(2017.5.11)
私は表に見える部分がどうあれ。
本質的には「少数派」に属する価値観を持っているかもしれません。
しかし、昔ほどそのことを強く意識しなくなりました。
「隠れ少数派」が実は少なからず存在していると思うのです。
言い換えれば、「隠れている」けれど「少なくはない」。
実感より、価値観の近い人はいるのだろうとぼんやり考えます。
多い少ないが、そもそも問題ではないのだけれど。
自分が大切に思うことを同じく大切に思う人がどこかにいる。
そう信じられることは、私にとって意味のあることなのです。

悪について   中島義道

4004309352
岩波新書
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悪について。

それは、私がずっと心の底に抱え続けている重い石のような想念。
様々な場面で、つんのめるようにその課題にぶつかって立ち止まる。

そんな自分を持て余していた際、そのものズバリのタイトルの、
本書に出会った・・・さて。ここに私を導く答えはあるのか?

結論から言うと、それは無理だった、予測できたことだけど。
だいたい中島義道氏のことも何も知らなかった私は、
この本のなりたちを読み誤っていたのだ。

残虐な事件が起こるたび、その「悪」をめぐる評論が喧しい。しかし、「悪」を指弾する人々自身は、「悪」とはまったく無縁なのだろうか。そもそも人間にとって「悪」とは何なのか。人間の欲望をとことん見据え、この問題に取り組んだのがカントだった。本書では、さまざまな文学作品や宗教書の事例を引きつつ、カント倫理学を「悪」の側面から読み説く。

この紹介文を先に読んでいたら、私はこの本に手を出さなかったかもしれない。
カントは、私がどうしても読み通すことができなかった、数少ない本なのだ。
いや、まったく歯が立たなかったと行った方が正しい。

著者は、何十度と読み続け、読めば読むほどわからなかったカントを
ある日、異国の地、ウィーンで理解したのだそうな。
さほど、カントは難しい。悪を語るにカントとは・・・。

だが、びっくりするほどにスルスルとカントの倫理学が理解できるという、
本書はまるで魔法か手品のような本であった。
もっとも、原本を読解出来なかった私には著者の読みが正しいかどうか、
判別するすべがないのであるが・・・。

昔々、チンプンカンプンのまま意地で繰り返し読んだためか、
私の記憶の中にはカント特有の語法や言い回しが残っており、
それが中島氏のわかりやすい説明と繋がることで、
まるで、もともと自分の力でカントを読みこなしていたかのような、
思い違いも甚だしい勘違いに、いつしか陥っていた。

そのカントが理解できるという驚きに、肝腎の「悪」の考察に
集中できないという事態が起きた。

と、いうよりも。
やはり、カントという希代の哲学者が語る、高次元の「悪」の概念と、
それを全く冷静な視点で読み解いているかというとやや疑問な著者の、
「悪」を分析する文章とは、私の「悪」とは一致しないわけである。

で、ありながら、示唆するところの鋭さと、グサグサと痛いくらいに
私の弱点を突いてくる論旨の展開に哀れな私の頭は翻弄され続けた。

いや、わかりやすすぎるくらい、わかりやすく語られているため、
サクサク読み進んでしまい、あっという間に読了したのだが、
その間に次々と生まれる疑問や、自分自身の問題との比較に、
立ち止まる余裕がなかったのだ。

高速回転する頭脳を持たぬのだからゆっくり読むべきだった、と思う。
とりあえず、気になる箇所に付箋を貼りながら読み進めたのだが、
毎ページ毎ページに、個人的キーワードに出会い、
読み終えたときには貼った付箋が100枚を超えていた・・・。

キーワードを頑張って絞ってみるならば。
「自己愛」「嘘」「意思の自立と他律」。

そう、悪と言うと普通並びそうな、「殺人」「暴力」「強姦」ではないのだ。
哲学とは根本へ、根本へと遡っていくものだから。
カントに至っては、その厳格さゆえ、様々な超人的な決断を、
人間に強いるような事例を幾つも発っしている。

嘘をつくことで救える命(しかも友人の)を犠牲にしてまで、
真実を語る必要があるだろうか・・・?
が、そんな小市民感情で終わってしまうと到達できない境地へと、
本書を読むことで潜っていくことができるのは貴重な体験だった。

そしてまた、取り上げられる文学が、
軒並み私の「ひっかかかり度」の高い本だった。
ドストエフスキー「罪と罰」「白痴」。夏目漱石「こころ」。
これらは、あまりにも私の気持ちを鋭く深くひっかくので、
好き嫌いを越えた因縁を長年抱えている文学なのだ。
はからずも、本書のおかげでその謎がほぼ、解けたのは大きな収穫。

それに関しては長くなりすぎるので非常に申し訳ないが割愛。

区切りがない文章ですが、長すぎるのでこの辺で一時停止。
ここで約半分、まだ読めるという方はお進み下さい。


  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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