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遠い朝の本たち  須賀敦子

Posted by 彩月氷香 on 15.2010 須賀敦子   2 comments   0 trackback
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ちくま文庫
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本書は、須賀さんの読書の思い出を語ったエッセイ。
今まで彼女の本を結構読んでいる私には、馴染みのあるエピソードもちらほら。

しかし、なんて、気持ちのよい文章だろう。
何も、特別なことは語っていないし、特徴のある文章とも思われないのに、
読んでいると、静かに心が浮き立ってくる。

彼女の、イタリア滞在時代の随筆は、もう少し、否、だいぶん、
重苦しい空気に染められている。
その、陰鬱な印象と異国の香りの混ざった色調が魅力ではあるのだけど。

この本の、幼少期、女学生時代の思い出を語った文章は、
優しく、やわらかな光に満ちている。
わけもなく、ぴょんぴょん跳ねたくなるような、
なんだか嬉しいプレゼントをもらった子供のきもちになるような、
読んでいて幼いくらいの素直さを自分に発見できるような、

・・・ああ、ああ、ほんとうに、すてき。

時代は違うが、私も彼女と同様、キリスト教系の女学校へ通った。
祖母はクリスチャンだったし、彼女の親友が修道院に入ったのに似て、
私の親友は牧師と結婚したのだ。

だから何、っていうと。
読んでる本や、その周りの情景が、かなり、共通していて。
なんとも言えない、懐かしい空気が漂っている。

学生時代を振り返ることが嫌いな私なのだけど、
思いがけず、楽しい思い出が幾つか甦って、頬が緩んだ。

私の作文や、感想文をいつも褒めてくれる先生がいて、
よそのクラスでまで、私の文を読みあげては大絶賛するので、
おもはゆい嬉しさと、それを上回る恥ずかしさと、
いい加減なものが書けないというプレッシャーとで
じたばた、していたことを、思いだした。

一番、最初に私の文を褒めたときに、
「あなた、詩を書くでしょう!」と断定的に言われて、
反射的に否定したのだったっけ。
ほんとうは、詩人になるつもりがあるくらいだった私は、
ものすごく、どきっと、したのだ。

若くはないのに、なんとも颯爽とした、ちょっと男装の麗人っぽい、
すらりとカッコいい先生。歌うように、のびやかな大きな声で、
耳にとても心地よい話し方をする人だった。

私の勝手な追憶はさておき。
須賀女史の文章の魅力は、たぶん、誰にでも伝わると思う。
とくにこの本は、彼女が大好きだった「読書」を語っているせいか、
伸び伸びと穏やかで、読みやすい。

読後、まだ、しあわせな余韻が、ふわふわと身を包んでいる。

(2010.5.15)

ヴェネツィアの宿  須賀敦子

Posted by 彩月氷香 on 01.2010 須賀敦子   0 comments   0 trackback
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文藝春秋
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もしかしたら、過去に読んでいるかもしれない。

須賀女史(と呼びたくなる女性である)の随筆は、
読んでいると、どうにも心細くなってくる。

その心細さが、しーんとして甘美な静けさで、心地よい。

頭も育ちも良く、芯も強い人だと思うが、
まっすぐ、不器用に、ひっそりと佇んでいる風情。
むやみと美々しくない、控え目な抒情性。

この本を読んで感じたのは、須賀さんも「父の娘」なんだな、と。
森茉莉の好きな人には何となく、わかると思う。

(2010.2.1)

  

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