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カールの降誕祭  フェルディナント・フォン・シーラッハ

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静かな、怖さ。哀しさ。怒り。

殺人者が必ずしも、残忍きわまりない人間ではないことは。
少しの想像力があればわかることです。

残忍極まりない犯行を一見普通の人ができるということも。
昨今の陰惨なニュースを観ればわかることです。

だからと言って。
その心の中までも理解できるとは言えないでしょう。
正直、あまりわかりたいものでもないでしょう。

シーラッハの作品を読むと。
それがわかる、というわけではありません。
でも。なんとなく、腑に落ちる。

殺人者自身が「悪」であるというよりも。
殺人者を生み出した背景が「悪」である・・・いや、そうでもない。
うん、そういうことでは、ない。

ともかく。それは個人だけの問題ではなくて。
だからといって。殺人者を庇うつもりもないのだけれど。

社会の中に燻っている「悪」と。
それに背中合わせの「哀」が見える。

人間の哀しさの、ひとつのカタチとしての殺人。
私は違う方向に発するだろうけれど。
同じ哀しさは持っているなと思うのです。

繰り返しますが。
殺人者を擁護するつもりはまったくありません。
それは著者にもないでしょう。

けれど。ヒトラーユーゲント指導者を祖父に持つ著者が。
過敏に感じるであろう「罪」の意識は常に作品に生きている。

その表現方法が、素朴を装った洗練という型であることに。
なぜだかとても、魅力を感じるのです。

大声や、派手な宣伝文句や、
くだくだしい韜晦は聞き飽きた・・・というだけかもしれないけれど。

シーラッハの言葉の静かさがお腹に響いてきます。
なんだろうな、胸じゃなく、腹って感じがするんだな。

そしてやっぱり。ちょっと怖い。

(2017.11.18)
デビュー作の「犯罪」ほどの感動や衝撃はありませんが。
それでも現存する作家としては注目している存在です。
生きている作家にあまり興味を持たない私には珍しいこと。

禁忌  フェルディナント・フォン・シーラッハ

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表紙の写真に秘密あり。

あー。気づかなかった・・・
私、こういう「仕掛け」のある小説、好きなんだな。

だけど。シーラッハは短篇の方がいいかなぁ。
謎と、芸術と、暗い過去と、時間のズレ。

読んでいて楽しくはあったのですけれど。
凝り過ぎていて、かえって興が削がれる面もあり。

シーラッハじゃなければ、これでも納得だけど。
正直なところ、期待値を下回ってしまった。

すごく好きな作家さんなんだけどなー。
これはこれで高踏的な香りのエンターテイメントで。
ま、アリなんだろうけど・・・なんか陳腐だわ。

シーラッハの本気のファンには、些か残念な作品です。

(2017.8.21)

コリーニ事件  フェルディナント・フォン・シーラッハ

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「犯罪」を読んでファンになったフェルディナント・フォン・シーラッハ。
「犯罪」に比べると凡庸に感じなくもないけれど、これはこれで好き。

すっきりした文体なのに情感があるところが好みです。
作品とは関係がない・・・というか。いや関係あるかな。
著者の血筋については、かなり驚かされました。

ああ、だからなのか・・・と。
いや、そう決めてはいけないなと思いつつ。

著者の作品はいずれも(って二作しか読んでいませんけれど)、
人間の持つ、本人にも理解し得ない「得体の知れなさ」が、
じわりじわりと怖くありつつも・・・妙に愛おしい。

(2013.11.29)

犯罪  フェルディナント・フォン・シーラッハ

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言ってみれば、「犯罪短篇集」。
すべてが犯罪の話。これは新しい。

ミステリ的な意味の犯罪とは違う。
・・・違うんだが。どう違うんだろう?

まず。犯罪者が大抵、間抜けである。哀れである。
さらに。罪を免除される場合も少なくない。

そもそも。何が罪であるのかが、わからなくなってくる。

私が好きなのは、『棘』という作品だが。
彫刻にこだわり過ぎた男の、奇矯な犯罪の話である。

どの犯罪も、共感するのは難しい。
ちょっと、そういう域を超えている。

いや。罪に至るのはわかる気がするんだけれど。
そのずっと前に、違う解決方法があったはず、と思えるのだ。

だが。人間は。そうわかりやすい逃げ道へは進まない。

犯罪そのものというより。
罪を犯さざるを得ないところまで自分を追い込んでしまう人間の、
業なのか、悲哀なのか、滑稽さなのか・・・

これが。すこぶる面白い。
その可笑しさが、鋭く切り込んでくる。
痛みを感じないほどに、切り口が鮮やかで。

気がつくと、流れる鮮血を見下ろしている・・・

(2012.3.28)
気が早いけど、私の読書の中で今年のベスト10に必ず入ると思います。
読んで良かったなぁと、満足のため息が出た作品でした。



  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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