「なずな」という名前の赤ちゃんを預かった、中年男の日常。
子育ても男目線だと、何だかとても新鮮で。
日々成長する命への愛おしさが静かに心に満ちてくる。
牧歌的な毎日とはいかず、育児やつれの激しい主人公に。
幾つもの、温かな救いの手が差し伸べられる。
赤ちゃんは天使で。周囲を幸せにするなんて幻想だと。
そう思える世の中に、こういう心温まる物語があってもいい。
赤ちゃんと暮らすことで、書く文章にまで違いが現れる。
(男は、地方新聞の記者なのである)
そのくらい、気付かされること、学ぶことがある。知らず知らずに。
たぶん、男と赤ん坊の距離が程良いのかもしれない。
感情的にならず、先入観もなく、「大切な預かり物」として。
無心に、精一杯に、見守り育てる男の誠意と愛情は、きっと。
まだ物言えぬなずなちゃんにも、伝わっているのでしょう。
彼の子育てをサポートする人々も魅力的で。
その人間模様も、心に潤いを与えてくれます。
生まれてたった三カ月で、両親と離れるという不運が
預かった者にとって、かけがえのない美しい時間の贈り物になった・・・
夢のような話かもしれないけれど。
「私は守っているのではなく、守られているのだ、この子に」
この言葉に共感できる時間を持った人もたくさん、いらっしゃるでしょう。
(2011.11.13)
現代は、子供を育てることに不安を抱く人が増えていると思います。
確かに考え出したらキリがないほど、不安材料がありますし、
不幸な事件の情報も大量に溢れていて、嫌でも耳に飛び込んできます。
そんな時、この本を読むと赤ちゃんを迎えること、育てることが、
「楽しみ」に感じられるのではないかしら・・・。
(子供を持ったことのない私が偉そう言えることでありませんが)