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苦役列車  西村賢太

4103032324
新潮社
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中卒だし。父親は性犯罪者だし。働く気はないし。モテないし。
金もなければ、向上心もない。ないない尽くしの主人公(=著者)。
潔く、開き直っているわけでなく。中途半端なプライドもある。

ただ、だから負けずに頑張るとかいうんじゃ、全くない。
とりあえず、かつかつ食べて。ねぐらがあって。
時々女が買えれば、まぁ良しとする。

シンプルだ。これはある意味、清貧な生活(あ、違うか)。
煩悩だけは有り余っていてもモノがなく、友もなく、しがらみが無い。
大きな声では言えないが、ちょっぴり羨望すら湧くのである。

とにかく自虐の嵐。なんとも粘り強く、下卑た自虐。
しかし、えげつないような描写も多々あるのに、妙に端正だ。
韜晦と自己弁護を延々と聴かされたなら、うんざりしそうなものなのに。
これが読ませる・・・惹きつけられて、頁から目が離れない。

何だろう。「ここに私がいる」。

何不自由ない、普通の家庭に育ち。
汚いものは、「見なかったことにしよう」と思う部類の綺麗好き。
努力でなんとかなるなら、努力で浄化しますともさ!

ダメな自分も、閉じ込めて蓋しちゃえ!
うわべを美しく繕うことなんて、簡単、簡単。処世術の初歩ってもんだ。

でも。でも。駄目な自分から抜け出せなくなり。抜け出す気もなくなり。
親のせい、社会のせい、生まれ持った性分のせいにして、
開き直ったふりをしつつ、自分をネチネチ責め続ける・・・。

暗がりの穴倉に閉じこもったきり、光なんて見たくもないし。
だんだん、自分をいじめることに歪んだ喜びすら生まれてくる。

慣れる、とか、開き直るとか、そんな甘っちょろいもんじゃなく。
やがて腐って爛れて、悪臭が漂ってくるような・・・
そんな日々は、私じゃなくても経験ございませんでしょうか?

さらに進めば、精神の腐敗も発酵して美酒に化けるのかもしれない。
本書を読んでいて、ふと、そんな突拍子もないことを思う。
私は、そこへは行きつけない。多くの人は行きつかない。幸か不幸か。

どこで、こんな絶妙な呼吸を習得したのやら。
苦くもどこか清涼な滑稽味。自虐の隙間の自己観察力。鋭い客観性。
思いもかけぬ方角から、攻め込まれた!やられた!という感じ。

(2011.5.28)
「瘡瘢旅行」の方が、うわぁ~嫌だ~と鼻をつまみたくなる迫力があります。
それとくらべれば、大人しいとも言える。文体のアクもあっちのが強い。
本作を読んで、懲りなかった人はぜひチャレンジしてもらいたい怪作です。
ただ、覚悟は持って挑んで下さい。何とも表現し難い味わいです。

「何もない」と申しましたが、彼には「文学的野心」があります。
併録の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」に見えるそれも見どころ。


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瘡瘢旅行  西村賢太

4062156768
講談社
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読み始めてすぐ、「しまった」と思う。
なんだ、これは・・・。
私の大嫌いな、駄目男とそいつに尽くす冴えない女の話、ではないか!

しかも、無駄に難しい語を散りばめおって。
文章から熟語が浮き上がってる・・・全然、馴染んでないし。
「穢悪」「慊い」「威迫」「一伍一什」だの、日常会話で使わないでしょう。

これは絶対、著者は学歴が低いに違いないと、私は決め込み、
やれやれ、僻み根性満載の癖にプライドは高いという、
やっかいな男の韜晦か、勘弁してくれよ、とため息。
・・・の割に、不思議とどんどんと読み進み、呆気なく、読了。

えっと、なんて感想書いたらいいんだろう。
そもそも、何故、私はこの本を読んだんだろう。
たぶん、誰かが面白いと言ったのを覚えてて、
作者のことも本の筋も知らずに借りてきたのだと思うけど・・・。
知ってたら、読んでないだろうなぁ。

何から何までイヤな感じなのに、するする読めてしまった。
ぞっとするほど「汚なさ」が漂う小説なのだけど、
なんだか、そのイヤさが癖になるような味わいがある。

結局、著者と自分が、そうかけ離れてはいないことを実感できてしまう。
それが、厭な感じがしない。同類嫌悪、を引き起こしたりしない。
こんな妙な読み味の小説って今まで出会わなかった気がするな。

また、他の著作も読んでみよう。

最後に著者が中卒と知り、私は密かに、自分の勘に悦にいったりした。
やっぱり、人間、しょうもないとこで、イヤミなもんだよね・・・。

多少なりとも日常的に文章を書いてる人間は、本書に限らず、
私小説というもの、その特有の匂いに、馴染めてしまうのかもしれない。
それはそれで、ちょっとぞっとすることでは、ある。

(2010.3.27)

  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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2011年06月13日 (月)
苦役列車  西村賢太
2010年03月27日 (土)
瘡瘢旅行  西村賢太

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