presents 角田光代
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名前。ランドセル。初キス。鍋セット。うに煎餅。合い鍵。ヴェール。
記憶。絵。料理。ぬいぐるみ。涙。
以上、12個のpresents・・・贈り物。
まつわる思い出が、決して感傷的過ぎることなく、
ユーモアと皮肉をスパイスに、語られる。
モノより、やはり「思い」なのだ。
カタチでなく、そこに込められた願いや祝いや喜びや、
悲しみや苦い記憶が、ずっと心に残るのだ。
・・・たとえ、その「モノ」が消滅したとしても。
「思い」は時に、いや、しばしば忘れ去られたりもする。
それでも、いつか、必ず、ふと、思いがけず甦ってくる。
・・・大切なモノは何だろう?
・・・どこにしまってあるだろう?
・・・私も、いつか、そんな素敵なプレゼントを、
誰かに贈ることが出来るだろうか?
それは意図してなされるものではなく。
きっと自分も忘れてしまっているのではないか。
それで、いい。そうありたい。
自然でムリがないからこそ、
作為もなく「あげる」という意識もないからこそ、心に届くのだ。
・・・受け取った側の感謝が返ってきて、
初めて自分が贈り物をしたことに気付く。そういうものだ。
そして、「ありがとう」の言葉が、
今度は贈った側への最大のプレゼントになる。
だから。
照れくさくて言えないままに、時が流れてしまったとしても、
そして相手がすっかりそんなこと忘れていたとしても、
もしも、伝えることのできるチャンスが来たならば、
「あの時はありがとう」と伝えたい。
もし、伝えられぬまま二度と会えなかったとしても、
その贈り物にこめられた「思い」をまた別の誰かに贈りたい。
・・・自分なりの、カタチで。
ささやかな、ほんの小さな思いやりに、人は救われる。
切羽詰まった時こそ、ひとしずくの「思い」の欠片が、
まばゆいきらめきとなって、深く心に残像を残したりする。
あるいは。
行き詰った感情が、出口を失って、どんどん溜まって。
ああ、もう駄目、と思った次の瞬間に、何故だか、
不思議なことに、呆気なく乗り越えていたりする・・。
その支えとなるものは、過去の贈りもの、かもしれない。
大切な贈りものは、人に贈るもの、人から贈られるもの。
そして、ここで語られてはいないのだけど、
自分に贈り、自分から贈られるものでもある・・・と、私は思う。
(2010.10.10)
この本を紹介して下さった、まいまい様、ありがとうございます。
優しさと切なさが入り混じって、じんわりと心に沁みる本でした。
読み終わって、晴れ晴れと、清々しい気持ちになりました。
角田光代さん、こういう小説も書くのですね・・・。
また、他の作品も読んでみたくなりました。