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『妖談うしろ猫―耳袋秘帖』  風野真知雄

4167779013
文春文庫
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思ってたんと違う?

前もってお断りしておきますと。
私は「時代小説」と「歴史小説」がやや苦手です。
いえ。明確にしましょう。

「時代小説」は物によっては好きで。
「歴史小説」は大の苦手。

しかし。どちらも率先して読まないことが共通しています。
なぜ、この本を読んだのかがそもそもよくわかりません。

たいてい、ヒトに勧められない限り読まないのです。
「時代小説」も「歴史小説」も。

でも。今回は違う。ただなんとなく気分転換に?
読んだことない作家を読んでみようと思ったのでしょうか。

人気あるんですね。わかるような気はします。
シリーズの中のスピンオフを読んじゃったらしいです。
だからって、何かがおかしいってこともないですが。

話もキャラクターも出来が悪くない。
ただ、もっと読みたいと思うほどの魅力は・・・
私は感じられなかったです。

それというのも。冒頭で申し上げた通り。
私は時代小説をそれほど好きではないからでしょう。

そう考えると。感想って公平ではないですね。
大好きな古き良きイギリスの時代を描いた小説なら。
きっと私は「また読みたい!」って言ってるかも。

作品の出来不出来だけではなくて。
その物語の背景とか世界観が好きかどうかって。
かなり印象を左右すると思います。

とは言いましても。
「時代小説好きでない人間も魅了する時代小説」なるものも。
実はちゃん存在していたりもするので・・・
本書は残念ながら、そこまでには至らなかった、と。

秀作ではあると思います。
時代劇を読み尽くしちゃったヒトなら読んで楽しめるかな。

私は藤沢周平すらロクには読んでいないので。
読むなら、藤沢周平からにします。

えー。ちなみ藤沢周平は嫌いではありません。
すごく好きでもありません。
でも。安心して読めるクオリティだと評価しています。
(すみません。偉そうで・・・)

時代小説も。
「あ〜いいなぁ」って思うこと、あるんですけれど。
そう言う場合は、時代小説の括りを超えてるのかな。

苦手な分野に対しての方が問答無用に厳しくなってしまうね。
好きなジャンルだと。自分で補足しちゃってる気がする。

瑕疵はうっすら感じられても。
せっかくだから楽しんで読みたいものね。
いいところだけを見てしまうのかもしれない。

愛読してるシリーズものに関しては私も点が甘くなりますし。
ミステリーの駄作も「必要悪」くらいな感じで。
これだけたくさん出版されてたら、仕方ないとも思う。
まぉまぁ楽しませてくれたらオッケー、みたいな。

たぶん。どこか現代的だからかもしれませんが。
宮部みゆきの時代小説は違和感なく読めます。

あと。大昔に読み出したら夢中になったのが。
眠狂四郎シリーズの柴田錬三郎でした。
あれは今でもちょっと読み返してみたい気がする。

あ。何が思ってたのと違うかと言えば。
もっと怪談っぽい、怪しげな話なのかと思ってて。
怪事件っていえばそうなんだろうけどな。

(2018.3.27)
何かがマズイわけでもないけど、相性が良くなかったみたい。
まぁ。時代小説のシリーズ物まで読み出したら時間が足りないし。
助かった、と思うことにします。

わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい  鴨居羊子

4480422978
筑摩書房
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ああ、誤解。

苦手なタイプの女性筆頭みたいなイメージでした。
鴨居羊子さん・・・こんなに繊細な女性だったとは。

自由奔放という従来の印象が弱まったわけではありません。
だけど。切なくなるくらい、鋭敏な感性を持っている人。
彼女にとっての母の存在が読んでいて胸に突き刺さる。

彼女みたいな行動力を持てる女性(いや性別は問わない)は、
非常に稀であることは確かで。自分とはまったく違うけれど。
気持ちはすごくわかる。考え方には共感する。

行動へつながらず終わる凡人からの遠い憧れかもしれない。
でも、そうは感じさせないくらい、文章が鮮やかで近い。
とてもしなやかな、伸びやかな、率直な・・・
そして。強い。輪郭がはっきりしている。力がある。

私が読み始めてまず思ったのは。
なんなん、文章上手過ぎやん!!!めっちゃウマイやん!
個性的というか、独特やけど。ぐいぐい迫ってくる。
この文章力はケタ外れ。面白い、可愛い、鋭い。

派手で奇抜で悪趣味(ごめんなさい!)な下着と、
不気味な人形とグッズ(あああ、すみません、すみません!)
のお店のオーナーであるド派手なオバサン、という認識でした。

ちょこっと。何か気にかかる気配はあって。
好みではないけれど、無視出来ないオーラがあって。
それでも、行ける距離にあるお店を一度も覗きもせず。

行ったところで、私は気に入ったとも思えないわけですが。
何か伝わってくる、感じ取れるものはあったかもしれない。

新聞記者だった彼女は、デザインの勉強もしていないのに、
いきなり「下着をつくる!」と決めて退社し。
勢いのままに突っ走り続ける人生を送るわけなのですが。

その人生を味でたとえるならば。
苦いでもない、甘いでもない、酸っぱいでもない。
しょっぱいでもないし、辛いでもないし・・・

表現しようのない味のお料理を食べた気分になる。
美味しいかマズいかで言うと、おいしいと思う。
でも未知の味すぎて、美味しいと言いきれもしない。

言えるのは。目が覚めるような味だということ。
誰も作ったことないような料理だということ。

彼女の人生は。
そんなお料理のような、不思議な魅力です。
正直、毎日は食べられそうもないような。

胸いっぱいに広がる思い出なのか、悔恨なのか、
憧れなのか、楽しさなのか、哀しさなのか・・・
心に呼び覚まされるものたちの鮮やかな彩り。

そうだ。料理は目でも楽しむものなんだ。
それはそれは、とてもとても豊かな味でした。

(2017.1.8)
「敬遠したい女性」というイメージだった著者。
その生き方や行動だけ追えば、その印象は覆らない。
しかし、彼女の文章がすべてを変えてしまいます。

あっ!と叫んでしまうような。表現力と個性。
久しぶりに「神々しい」文才に出会った気がします。
彼女の文章に唸りっぱなしで読み終えました。

彼女の絵も実物を観てみたいな。
生き生きとしてチャーミングです。

弟の鴨居玲の絵は昔、大阪市立美術館で観ました。
いつだっけ、と検索してみましたら、1991年。
圧倒される「暗さ」でしたね・・・惹き込まれたなぁ。

とことん「陽性」に見える羊子さんも。
抱えていた孤独は底なしに深かったのだな・・・

悪魔のささやき  加賀乙彦

4087203549
集英社新書
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人間はなぜ殺人者となるか、なり得るか。


私は殺人ということに興味というか、自分なりの考えがあります。
その考えは、著者とほぼ一致しています。

要は、誰でも(当然私も)殺人者にはなれるということです。

著者は人が凶事に走ることを後押しをする力を、
「悪魔のささやき」と名づけました。

宗教的ニュアンスが入るため、
できれば「悪魔」という言葉は使いたくなかったそうですが・・・

その「悪魔」の力はどんな時、人を動かすのか。
その圧倒的な力に負けないにはどう生きたらいいか。

何しろ、著者は犯罪心理学者として身を立てようとして、
何百人という犯罪者に会ってきたのです。

何より、殺人者が殺人に至る経緯のあっけなさが怖い。
まさに「悪魔のささやき」にふっと乗ってしまったような。

著者は「私たち日本人は、特に流されやすい」と言います。

もの凄く、簡単に言えば。
社会が刑務所化している。そして人間の関心も狭くなっている。
興味の幅が狭くなるというのは大変、危険なことなのだと言う。

そして。
悪魔は人間の無知につけこむ。

そうですね。
加賀氏の言葉を追いながらゆっくり考えていくと。
私はやはり「悪魔のささやき」には乗らない人間ですね。

(でも、「悪魔のささやき」を聞くことはありますよ)

氏が語る「悪魔のささやき」を避けるための方法は。
つまるところは、「自分を生きる」ということです。

本物の「個人主義」は、自分の生き方を決めるということ。
流されずに自分について考え、自分を育て、生きるということ。
著者も言うとおり、それが一番大切なことだと思います。

自分自身の内面を見つめ、個人としての成長を重んじること。
自分で物事を考えること、そして反省すること。

悪魔のささやきに乗る瞬間、
きっと「自分」は失われているでしょう。

そういう、「自分を失う瞬間」を日常に持って生きている。
自分の心や意識を、乗っ取られることが珍しくないような、
そんな弱い意識しかない「自分」を生きている。

いえ。やはり。
私もそうなりかかっている・・・と思います。

時代にそのまんま乗っかれば、そうなります。
そうじゃないな。どの時代でも、あることです。

自分自身と対峙するのは決して楽なことではない。
不満足だらけの「自分」を育てるのもしんどい。
もっと言えば、自分の姿なんて見るのも面倒くさい。

「自分」を好んで「失う」素地があって。
社会のシステム、風潮、娯楽がそれを後押しする。

凶事は「強い自我」が生むものではない。
むしろ「自我」の空白から生まれるのだという気がする。

残念ながら。
ありとあらゆる恐ろしい犯罪の根っこは。
人間の「欲望」から生まれている。

たいていの人は道徳や両親や理性などが歯止めになり、
それらの欲望は娯楽や空想で遊ぶだけに留めて一生を終える。

でも。その歯止めは脆い、と著者は言う。

人がもともと持っている残虐性を。
解き放つきっかけとなるのは些細な偶然であることが多い。

「漂っている意識」が危険なのだ・・・というのもわかる。
そして、その「漂っているふわふわした意識」はよく見かける。

あ。私もその一員になりかかってた・・・

(2017.6.8)
怖くて、面白くて、共感して、反省する。
そんな、感情が「忙しい」読書となりました。
読了した本は、付箋で膨れ上がっていました。
犯罪心理に興味のある人はぜひ、ご一読を。
加賀乙彦の小説もそういえば昔、読んだなぁ・・・
近々、また何か一冊読んでみよう。

おさがしの本は   門井慶喜

4334763227
光文社文庫
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図書館に勤務していて、
リファレンスカウンター担当の男性が主人公。

本好きさんには、なかなか楽しい本です。
ほほーぅ。そういう風に調べるんだなぁ、と。

(2015.8.30)

へたも絵のうち   熊谷守一

4582763251

平凡社
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青木繁と美術学校で同じだったそうですが。
ほんと、びっくりするくらいのそうとう変人!
もちろん熊谷守一だって負けていません。

読んでいて。実に自然でいい文章だなと思いましたら。
書いた物ではなく、聞き書きでした。

その点に関しては、
解説の赤瀬川原平がいいことを書いています。

 まず観察の興味があって、それが結局は一生つづいている。あとはみんなそれに付随することなのだ。観察というとふつうはその結果として正解を得るための観察となるわけだけど、この人の場合にはそれもない。あるけど、さらにその先、ひたすら見ていることが気持ちいい。自分がいて何かを見ているという、その距離感を楽しんでいる。

実際にペンを手にして書くというときには、どうしても自意識が作用する。だから文章を書くときには出すぎる力の制御が難しい。良かれ悪しかれ、自意識の後押しによって文章は書かれるものだけど、話の場合はそういう後押しもなく前に人がいるからというだけのことで自然に言葉が引き出されてくる。そのさり気なさが全篇にあふれていて、それがむしろこの人らしい自然な話になっている。


以下、本文から書き抜いた文章の断片。


  

プロフィール

Author:彩月氷香

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