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『金曜日の本』吉田篤弘

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中央公論新社
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片岡義男の株があがりまくる!本

いや。ほんとに。私、特に片岡義男ファンではないですが。
著者のエピソードで、ちょっと惚れました。

吉田さんは片岡義男のファンだったのですよね。
で、手紙を送る・・・ならよくある話ですが。
自分の書き溜めたものを小冊子に仕立てて送ったそうで。

そしたら、なんと直筆の返信が届いたんですって。
送った小冊子と共に。

大事なものだと思うので、
コピーをとり、オリジナルは返送します。


・・・って。まぁ!まぁ!
片岡義男の直筆って、ちなみに、こんな感じ。
ちょっと面白い記事があったので、貼りますね。

編集者/美術ジャーナリスト 鈴木芳雄のブログ フクヘン。
「電子メールもファクスも無かった頃 」

ね。
決して上手くない字だけど、味がありますよね。
らしい、っていうか。
彼の万年筆へのこだわりを思い出しながら見ると感慨ひとしお。

片岡義男はまぁなんだかんだで読んでなくはなくて。
大好きでないにしてもやはり好きというか魅力は感じてたな。

私はおしゃれなヒトではないんで反発はあるけど。
とにかく、洒落ているってことは間違いなくて。

あ。話を片岡義男から離そう。
本好きさんなら共感できるところはたくさんあると思う。

「どんな本を読むの?」ときかれた時の著者の答えが素敵。

「どんな本でもいいんだけど」とひとまず答え、しばし考えた。
なんといったらいいのだろう。
 自分が読んできたいくつかの本を思い浮かべ、それらの共通点を考えると
「気持ちがあったかくなるもの」と。

ちなみに。私はどうだろう。
あったかくなる・・・は違うかもなぁ。
むしろ、さむくなってるときも多い気がする。

ほっとしたいとか。癒されたいっていうのはなくて。
頭がぐわんぐわん、脳がぴょんぴょん跳ねるようなのが好き。
ひやー。ひぇー。ほー。って叫びそうな。

まぁ。穏やかな小説も大好きだったりするんですけれど。
そういう時も「こんなに穏やかに書けるのか!」って興奮してたり。
意外と、熱血な読書家かもしれないです、私。

・・・て。脱線がとまらないので。
心にとまった箇所を幾つか引用して終わります。

 本を買うということは、その本を「未来に読む」というひとつの約束のようなものを買うことだった。借りてきた本には期限がある。そうなると、そこにあるはずの「未来」が、あまりに短くてがっかりしてしまう。
 一方、自分のものにした本には、限りない「未来」が含まれていた。
 本を買うというのは、「未来と約束すること」なんだと気がついた。

 ときどき、そうして未来のことを考えた。
 どういうわけか、未来はもう決まっていると思っていた。それがどんなものであるか知らないけれど、自分の未来は遠いところにもうあって、動かすことはできない。誰かに教わったわけではなく、いつのまにか、そう信じていた。
 だから、未来に対する不安はほとんどなかった。遠いところへ旅することと同じだと思っていた。いつでも、そのことを誰かに説明したかったが、どう云っていいかわからない。ただ、ふとしたときに、未来の一部が映画の予告編にみたいに見えた。見えるというか、それは気配のように、背筋がぞくりとなって感じられた。

 まずは食料と飲みものを確保し、ロッカーに預けて手ぶらで本屋に行く。身も心も手ぶらになる。何の情報も要らない。誰かが推薦しているとか、映画化されているとか、そんなことは知らない。知らない方がいい。子供のころ、学校の図書室で本を選んでいたときの気分に戻りたい。あ、これを読みたい、と思った本を立ち読みし、面白そうだったら、迷わず手に入れる。
 そんなふうに、ただ自分の好きな本を読んで、それで本が好きになった。どうも、そういうことを忘れていた。

 いかにも面白そうな本よりも、誰も読みそうにない本に、自分にとっての「面白い」があるように思う。


吉田さんは、ホンモノの個性がある人なんだなぁ。
好き嫌いがこういう風にはっきりしてるって清々しい。

私もそういうところはあるのだけれど。
下手に一般社会に馴染もうとして迎合した期間があったり。
教育的観点から、好みの偏りを矯正されたりというのがあって。

ま、いいんですけれどね、それはそれで。
好みの幅が広がったし。世の中に取り残されずに済んで。
でも。ちょっと。悔いというか、悔しさがある。

ズレにズレた価値観で生き続けられなかった・・・
自分を貫き通せなかった・・・
今世紀のド変人、とか化石人種になれたかもしれないのに・・・

(2018.4.10)
どうでもいい話をすると。
吉田さんはサーティーワンといえば、
チョコミントでなく、ジャモカアーモンドファッジだそうで。
これは私も同じ! ていうか懐かし過ぎるな、サーティーワン。
もう何十年と食べてない。ちょっと食べたくなった。


『陰陽師 瘤取り晴明』夢枕 獏 村上 豊

4163204806
文藝春秋
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大人の絵本。あ。文も多めだけど。

挿絵がとってもいい。
ゆえに、物語の魅力が倍増。

いいコラボです。

夢枕獏の「陰陽師」シリーズは人気がありますが。
正直、それほどめちゃめちゃ良いとまでは思いません。

時々。「気配」が美しい。
面白くない人には、面白くないと思うし。
その感じ方も間違いではないでしょう。

たくさん、お書きになっているので。
全てが「当たり」じゃないというのもある。


(2017.8.11)
「絵物語」として刊行されているバージョンです。
なので、なおさら。ゆったりと楽しむ感覚で読めます。
取りようによっては、「物足りない」とも言えるのかも。
かなり、絵の魅力の威力が大きいです。


「★★★★★」 また読みたい本

『孤狼の血』  柚月裕子

404103213X
角川書店
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広島弁が妙に、ツボ。

あれ? あれれ?
読みながら首を傾げていました。

えー。ミステリちゃうやん!
警察小説なん? ていうかヤクザ物やん。
(ちゃうちゃう、それ言うならマル暴やし)

あ。でもハードボイルド・・・かな。
けど、一匹狼ちゃうし。コンビやん。

あ、すいません、下手な関西弁で。
ていうか私、純粋に大阪育ちなんやけど・・・

ちなみに本書は舞台が広島で。
コテコテ(とは言わんのか?)の広島弁に溢れています。

面白いけど、ミステリーとはちゃうやんか。
とブツブツ内心嘆きつつ、読み進め。

最後の最後に。
うわっ。おい、おい、おーい! そ、そうやったん!?
騙された・・・やられた・・・

合間に挟まれる黒字で塗りつぶされたノートの意味が。
あああ〜迂闊。悔しい。

このオチ、ちょっとやり過ぎなんかもなぁ。
デジャヴ感のある、ある意味よくあるパターンです。

類型的っちゃ、類型的なんよねぇ、全体に。
だから安心して読める面白さになるんかも。
夏の疲れた頭にはちょうど読み頃でした。

(2016.8.15)
こんな感じの悪徳警官いかにもいそうだけど、どうなんかな?

『毒言独語』  山本夏彦

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中公文庫
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昔、著者のエッセイを読んだ。すごく面白かった。ズバズバと物を言っていて痛快だった。で、本書はタイトルもいいなと読み始めたわけだけれど(実は古本屋で100円だったから何となく買った)。

なんか、違う・・・。言いたいことを言ってるというのはわかるのだけれど。考え方が「時代」の枠の中での反抗っていうんでしょうか。本書が書かれた頃とは時代が変わってしまっている今、意見の大半が陳腐に感じる。

時代が変わっても面白かったり共感できるエッセイは沢山ありますから・・・。こんな風に時代に対抗するような書き方は鮮度が落ちると不味くなってしまうのかな。

いや、共感する人もいると思う。時代を超えた全うな意見だと感じる方も。でも、私はそうは思えなくて。

おっしゃる通りだと思える部分が実は大半ではある。それでも「そうだそうだ」と簡単に頷けない。山本氏が切って捨てている物事や人や社会の在り方の中で何とか生き延びていかねばならぬ身としては、痛快どころか洞察力の浅さと感じてしまう。

なぜ、世の中が悪くなっていったかということに対して、女性にばかり責任を押し付けているようにも感じる。後味の悪い読書になりました。

(2016.4.11)

人生論手帖  山口 瞳

4309016286
河出書房新社
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古本屋で見つけた本ですが。
まず、なによりも装丁に一目惚れしました。

小泉癸巳男の『東京百景』の中の一枚が使われています。
って、この装丁を見て知った版画家さんなのですけど。
『東京百景』を収録した本があるらしく。
欲しいなぁと思いましたら・・・アマゾンの中古価格¥39,978!

あ、肝腎の内容は。何と言っても。山口さんならではの。
淡々とした辛口トーク。このさりげない毒に憧れます。
なんと鋭い。手厳しい。優しい。

串田孫一氏の思い出話などもチラホラと出てきます。
もしも読む方のために秘密にしておきますが。
向田邦子さんのエピソードにもドキッとしました。

長々と語らない。でも核心をズバッと突くのでもない。
周辺をうろうろしていたようなのに、いつの間にか「着地」してる。

どこに?うーん。うーん。

ええとね。なかなか公けには口にしにくい真実。
だから・・・どうしても「毒」になるのだけど。
その表現というのか、切り口というのか。上手いんだなぁ。

私が同じことを言おうとすると、けんもほろろになっちゃう。
こういう・・・愛嬌と悲哀を滲ませた毒舌。羨ましい。
さらりと口にしてるようだけど。かなりの高等技術ですよねぇ。

著者が身近なことを語った随筆集。
一篇がとても短いけれど。うっとりする美文ではないけれど。
こんな風に書けたらいいなと思う文章がぎっしり詰まっています。

伝えたいことをどう表現するか、と考えた時に。
自分のことを語りながら、もっと大きなことを実は語っている、
それが尊大でもなく、卑屈でもなく、滑稽味を纏っていて。

だから・・・うん。
言い難いことは堂々と言えばいいってもんじゃないのね。
正面切っての発言は一見、格好いいようだけど・・・

かといって。気を遣い過ぎて回りくどくなるほど、
何を言ってるのかわからなくなって、ただイライラさせられる。
勘のいい人には察せられる真意が、ただ反感を呼ぶ結果になる。

山口氏の文章の面白さが、ほろりと苦い。
何気なさを装って。どれだけのものを込めているか。
「書く」苦しみ。「書く」病。書かずにはいられない「業」。

本書の中の「綴り方少年」という一篇の中の一節。
「木山捷平さんは、書くときはヤケクソになって書くといっておられた」

だから私も見習ってヤケクソ、っていうわけには・・・いかない。
ヤケクソへ到達するまでにも、長い長い道のりがあるのだと思います。

(2012.3.30)
随筆というものが、もともと好きです。
日常の、誰の身の上にも起こるようなことが。
胸に迫るほど、心に沁み透るほど、文章で再現できることに。
なんだか、魔法を見せられたような気持ちになります。
当たり前と思っていることの、当たり前でない側面を見せてくれる。
あるいは気づいていたけれど、カタチならずモヤモヤしていたものの、
輪郭を描いてみせてくれる・・・その技量が眩しくて、ちょっと悔しい。



  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

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