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昼が夜に負うもの  ヤスミナ・カドラ

Posted by 彩月氷香 on 12.2010 ヤスミナ・カドラ   4 comments   1 trackback
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ハヤカワepiブック・プラネット10
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貧困、別れ、出会い、友情、恋、差別、裏切り、病、すれ違い、
戦争、死、成長、再会・・・・と、あらゆる要素が詰まった物語。

読み終えて、言葉を失う。

魂が、どこか遠くへさらわれたかのように、
現実と夢のあいだの広大な空白を漂うのを、
どこか別のところで眺めている私がいるような、
心地よい非現実が身を包んだ。

その、心が浮き上がり、ゆらめくような余韻は、
まるで壮大で、しかも緻密な映画を観た後にも似て、
色彩豊かで鮮明な、切れ切れの残像に彩られている。

なんて、見事な。
原語で読んでいない私に語る資格があるのか一抹の不安を感じつつ、
気がつくと、ヤスミナ・カドラの文章の比類ない美しさを、
どう表現したらいいのか、頭を悩ませていた。

しばらく、頁をめくり返しながら言葉を探したが、見つからない。
言えることは、ここには私の理想とする文章のスタイルが、
奇跡のように実現されている、ということ。

華やかな形容詞も、それどころか目につくような特別な表現も、
思わず感嘆するような比喩も、ない。
平易な言葉で、しかし、一語の選び間違いもないと思わせる文章が
淡々と、紡がれていく。

畳みかけるように短い文節が途切れず長く続くのに、
全く、息苦しさがない。
そこには、何とも言えないリズムがある。

単調なようで、自在な・・・ああそうか、バッハのピアノ曲に似ている。
整然として、でも一音一音がきらめいて天から降ってくるような、
神に捧げる、荘厳な音楽。
きらびやかなのに、つつましい。

著者の作品、あまり、多く翻訳されていないのが残念。
フランス語が読めたらいいな、今からでも勉強しようかな、と
無理に決まってることをふと考えてしまうくらい、
この人の文章は、私を魅了する・・・。

(2010.6.9)

テロル   ヤスミナ・カドラ

Posted by 彩月氷香 on 02.2010 ヤスミナ・カドラ   4 comments   0 trackback
テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)
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文章の力を感じたのは久しぶりのことだ。

衝撃的な幕開けから、さらに言葉を失うラストシーンまで、
物語の力強さにも圧倒されるが、それ以上に、
簡潔な美しさがまるで詩のような、比類のない文体に惹き込まれる。

同じ内容の物語を、もし、ヤスミナ・カドラ以外の作家が書いたなら、
きっと私は読み通すことはできなかっただろう。
主題の重さもあるし、主人公の心の動きにもうんざりして
付き合いきれなかったに違いない。

何を語るか、よりもいかに語るか、なのだと思わされる。
絶望が物語の根本に深く浸透していて、
しかし、そこに著者が浮かび上がらせる「希望」は、
成就される可能性は全く見えないままに、ひたすらに美しい。

透徹した文章の美しさに魂がさらわれていくような、
時空を越えて異次元に入り込んだような時間を、読んでいる間、私は過ごした。

(2007.10.9)



  

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