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わたしたちが孤児だったころ   カズオ・イシグロ

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ハヤカワ・ノヴェルズ
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不思議な味わい。

上海とイギリスで繰り広げられる、過去と現代が交錯する物語。
カズオ・イシグロお得意の、自己を偽って、
過去を自分流に作り変えて生きる主人公・・・。

何もかもが、やがて曖昧になり、不幸という影も淡くかすれてゆき、
ただ、静かな淋しさだけが、なぜか仄かな光に照らし出される。

そこに救いはないように思えるのに、
あり得た幸せを捨ててしまった後悔があって然るべきと思われるのに、
そんなことは深層意識下でも決して認めはしないのだ。

「これで良かった」と密やかに、しかし頑なに思い込む。
そう、そうしなくては、自分の嘘を本気で信じなければ、
人間は辛い過去を抱えて生きてはいけない・・・。

サラも、クリストファーも、彼の母も、父も、フィリップおじさんも、
皆がそうだった。自分のために作った物語を信じて生きた。
それぞれの熱意も愛情も、真実に立ち向かう強さにはならなかった。

カタチを成すことが出来なくても、
「愛」はその思い出だけで、人を支えるものなのかもしれない。
・・・失った痛みさえ、生きる糧となるのだ。

(2007.3.3)
「日の名残り」に心打たれて以来、著者の新作は読み続けていますが、
いまだに「日の名残り」が一番好きです。
私はどんな作家でも初期の作品に惹かれる傾向があります。
作家の技量は、作を重ねていくごとに磨かれていくのだと思うのですが、
それより、未熟でも「書きたい」想いが凝縮した作品に魅力を感じます。
進化、成熟と評されるものが、私には行き過ぎた作為に思えてしまう。
・・・あ、この作品は好きです。
彼の作品で、巷で激賞されてても私には良さのわからないものが多くて、
つい、ぼやいてしまいました・・・。
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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