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『清明 隠蔽捜査8』今野 敏

2020.02.03 今野 敏   comments 0
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爽やかな風の気配。

以下、ちょっと引用。
個人的にちょっと、心に留め置きたいことなど。

 竜崎は常に出世を望んでいた。それは権限が増えるからだ。裁量権が増えるということは組織内での自由度が増すということだ。公務員としてできることが増えるのはいいことだ。
 その代わりに責任も大きくなるのだが、それは仕方ないことだと思っていた。上司とは責任を取る立場のことだと、竜崎は思っていた。

 仕事柄引っ越しは多い。だが、決して慣れることはない。移転するたびに、不思議な気分になる。なぜか、わくわくするのだ。
 これは自分だけなのだろうかと自問したことがある。他人に質問したことがないのでわからない。
 だが、誰でも新天地での生活は魅力的なものだと感じるのではないだろうか。人類はアフリカで誕生し、常に新天地を求めて世界に広がっていった。もしかしたら、その記憶がDNAに刻まれているのではないかと、竜崎は思う。

 官僚たちは、よりわかりにくい文章を、よい文章だと言う。そう言う文書をやり取している自分たちを、彼らは優秀だと思っているわけだ。

 竜崎に言わせると、そんなものは優秀でも何でもない。難しいことをわかりやすく説明できる者が本当に頭のいい者なのだ。そして、真に優秀な官僚とは、形式よりも本質を考える者たちのことだと思っている。

 自分自身や家族を守ろうとするのは当然のことだ。だが、そのために近隣の住民と対決することがあるとしたら、それは無駄な軋轢と言えるだろう。
 もっと視野を広げて、自分が町内の一員であることに気づけばいいのだ。
 さらに、町と町が争うような場合は、自分たちは同じ区民や市民であることに気づけばいい。
 県と県が対立するなら、自分たちは同じ日本国民だと言うことを意識すべきなのだ。
(中略)とはいえ、視野を広げることは簡単ではない。

清明時節雨粉粉
路上行人欲断魂
借問酒家何處有
牧童遥指杏花村

杜牧の詩(七言絶句)

清明というのは、二十四節気の一つで、旧暦では三月節と言われたそうだが、現在の暦でいうと、四月の上旬。すべてが、すがすがしく明るい季節ということ。

いいなー。やっぱり。
このシリーズは今でも好きです。
本作は、タイトル通り爽やかで良かった。

竜崎の神通力が強くなってる感じはする。
そんなに現実はうまくいかないような気がする。
いや。多分、いかないはずだ。

それをご都合主義と言ってしまうのは、でも違う。
竜崎のようなキャリア警察官はファンタジーなのだけれど。
こんな人がいたらいいなぁという夢物語なのだけれど。

断固として自分の信念を貫いて生きていく竜崎が。
それなのに格好良く感じないところが面白くて。
それでも呆気にとられるくらいの迷いのなさが眩しくて。

いいなー。

ちゃんと。成長の跡が随所に見られて。
融通の利かなさが緩和されているんだよね。
そこが妙に淋しかったりもするのだけれど。

伊丹との掛け合いも噛み合ってきたなぁ。
うん。二人の会話が楽しい。

当たり前のことを俺はやっているだけだ、と。
竜崎が本気で信じているところが私は好きだ。

周囲の凡人にはそれがとても難しいことで。
できないと思って諦めて敷かれた道を歩むのに。

彼は自分の道を歩く。

自分が正しいと思うことを環境や情勢に負けずにやる。
やって、結果を出して、周囲を納得させる。
どんなときも自分の行動に責任をとる。

あー。前言撤回。やっぱりめちゃめちゃ格好いい!

(2020年1月 読了)
早く次作が読みたいです。
引用した内容に関して捕捉しますと。
私は責任を一切とらないバカ上司に苦しみ。
わかりやすい説明をできない無能教育係にイライラし。
視野の狭い同僚の中で疲弊しているのです。
引っ越しに関しては・・・
まぁ私も引っ越しはなんだかんだで好きですね。
つまり、竜崎に共感するということです。
だけど、現状を変える力が私には残念ながらない。
いや。自分自身の態度も改める余地があるな。
その点は素直に反省しましょう。
それから。このシリーズの自分が書いた感想を。
何かの気まぐれで全て読み返してみましたが。
一貫して私、「爽やかすぎる」と評していますね。
小説としては美点でもあり傷でもある点です。
今も爽やかすぎるという感想自体は変わりませんが。
それに救われるほど人生はしんどいものと知りました。
今野さんはきっと、とても優しい人なんだと思います。

『棲月 隠蔽捜査7』今野 敏

2018.02.16 今野 敏   comments 0
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竜崎中年の成長物語。

主人公の竜崎は自信家で石頭で超自己流かつ正義派で。
これだけの要素が揃えばふつう、勘違い野郎か、無能だ。
もしくは有能ではあっても、いずれ自滅する。

そうとは見えなかったけれど。
竜崎は自滅したかもしれなかったんだと今、思う。

長いモノには決して巻かれない彼は。
自分のやり方、考え方が正しいという揺るがぬ自信がある。

正論だけど、それを言っちゃあ、駄目でしょう!
あああああ、そこはテキトーに誤摩化しときましょうよ!

・・・と部外者は余計な心配をするわけですが。
本人はビクともしてないし。ちゃんと通るんですよね、主張が。

彼の信念が通用するのは、読者にとって誠に痛快ですが。
実際にはありえない、夢物語でしょう。

その信念というのは。以下のとおり。

警察官は国民のために働いている。
立場に関係なく自分の能力を最大限発揮するべきだ。
そのためにも常に最も合理的な手段を選んで仕事すべきだ。

・・・という、誠にシンプルなもの。
でもそうはいかないのが世の中ってもんで。

しかし、竜崎にはむしろそのことが「わからない」。
だから、「変人」と呼ばれるわけです。

凡人が「負け」てしまうこと、「曲げ」てしまうこと。
それらと正々堂々勝負して勝つ。それが竜崎という人。
改革者としてのヘンな力みもなく、スタスタ無駄な事を変えていく。

だけど有能過ぎるがゆえに、彼にも「わからない」ことはある。

彼が何がわからないかをひとことで言えば。
「他人の心」・・・とくに「凡人の心」
本人が否定しようとも、彼は一種の「超人」ですから。

それが。大森署の署長を勤めているうちに。
いつの間にか少しずつ、少しずつ、わかってきた。

そのことを本人は「俺は駄目になった」「感傷的になった」
・・・となぜか気に病んだりしていますが。
周囲の指摘通り、彼は「学んだ」「成長した」のですよね。

そして。その学びの成果を抱いて。
いよいよ、次のステージへと進みます。

うん。そうか。そうだったんだ。
これは、竜崎という変人中年の成長物語だったんだ。
だから私はこのシリーズが好きなんだ。

(2018.2.12)
ミステリーとしては御都合主義だと言われても仕方ない。
ストーリーに緊張感もないし。予定調和的だし。
犯罪のタイプを現代的に仕立ててはあるものの、底が薄い。
事件よりも人間ドラマを楽しむのが正解でしょうか。
その点も良くも悪くも安定し過ぎている観も否めません。

『去就 隠蔽捜査6』今野 敏

2017.02.07 今野 敏   comments 2
4103002581
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今後の展開に期待。竜崎、次回は異動?

正直、マンネリ感は否めませんね。
それでも楽しく読みましたよ。
私、好きな物に限っては「マンネリ」可なので。

主人公の竜崎がいつも通りの「変人」であればいい。
「変」じゃなくて、実は頗る「まっとう」なんだけど。
それが通用しない社会を「当然」と諦めて。
泣き泣き不満だらけで生きている凡人には眩しくて。

ああ。こんな上司がいたらサイコーだな!
同僚だったら、泣けるかもしれない。
(引き比べると自分が惨めで・・・)

まぁ、ともかく。
竜崎さんは「デキる人」です。
いつもながら、あっぱれですね。

でも。彼には「署長」というポストは。
そろそろ「役不足」になりつつあります・・・

もう、どんな事件・事故・災難があっても。
完璧に対処出来ちゃうでしょう。

なので。きっと。
シリーズの次回は間違いなく「異動」です。
くっきりと作中にも臭わされております。

何より、確かな証拠は。
我が家は毎日新聞を購読してるのですが。
今、夕刊で今野敏さんの連載をやってまして。

変わり種の警察ものっぽいんですが。
そして、正直、ちっとも面白くないんですが。
なんと、私、読むのを断念したんですが(!)

その中に「前署長が非常に優秀」という記述が。
竜崎氏の名前は出ませんでしたが・・・
その「署」が大森署なんですよ。

間違いないでしょ。絶対、竜崎でしょう!
スピンオフといった作品ではありませんが。
きっと世界はリンクしてるんですよね。

ふふっ。

次回作が楽しみだ。
頼むから、つまらない女性を登場させないでね。

今野敏さんの描く女性の薄っぺらさには辟易してます。
ファンですが、女性像のリアリティのなさには毎回、絶句。

そうそう、夕刊に連載中の小説にも女性署長が登場。
もうこの美人署長がダメ過ぎて、読めないんですよ・・・

以下、毎度毎度の「竜崎節」から幾つか引用。

誰かの都合に合わせるのではなく、いかに本来の目的を効率よく達成できるかを考えるのが本当の合理化だ。

みんな余計なことを考え過ぎて、自分で自分を縛ってしまう。やることと考えることを自分で増やしているだけだ。

一般に、考え過ぎという場合は、たいてい、考えが足りないときなんだ。

えっと。2番目と3番目、矛盾してるようですが。
いや、どっちもありますよね。
人間、考えなくていいところで考えて。
考えなきゃいけないところで考えない。
うわぁー。耳が痛い。

(2017.1.18)
行動する勇気が出ない時は。ずーっと考え続け、
本当は出せているはずの答えを避けていて。
「精一杯考えた」つもりの時は、
初めから「無理」と思い込み、真剣に考えていない。
シンプルに誠実に「考える」のは難しいのです。

『自覚 隠蔽捜査5.5』今野 敏

2015.08.08 今野 敏   comments 0
4103002573

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私が女性だったら、それを最大限に利用するよ。それだけじゃない。キャリアの立場も利用するし、今なら、署長という立場も利用する。利用できるものは、何だって利用する。それが、人の特質というものだ。

訓練の目的は、疑似体験を通して新たな能力を身につけることだ。そして、先ほども言ったが、訓練は、自分自身のためにやるものだ。だから、人それぞれに成果は異なる。一つだけ言えるのは、体力を使うより頭を使うほうが、ずっと大切だということだ。頭を使ってこそのキャリアであり、体力を補うために頭を働かせてこその女性なのではないのか?

ある人に言われました。足をひっぱるとか、お荷物だとかは考える必要がない。訓練というのは、自分自身のためにやるものだ、と。

 今のマスコミは、常に悪者を探している。本当の悪者ではなく、さまざまな局面で悪役になる存在を探しているのだ。(中略)それを叩くことで、自分たちの正当性を強調しようとしている。それが、醜いことだと本人たちは気づいていないのだ。

「自覚」というタイトルに呼応しているような文章。
なんとなく、励まされたので引用してみました。

えーっと。内容は忘れました(笑)
とりあえず、短編集です。
いわゆるスピンオフ作品です。
このシリーズのファンであれば楽しめます。

周囲の人々から見た竜崎。
やっぱり変人で。やっぱり凄い。
それでやっぱりカッコいい。

以上!

(2015.5.6)
本編も早く次作が出ないかなー。
そろそろマンネリ感もあるのかもだけど。
私、竜崎さんの言動を見てるだけで元気が出ます。

『転迷 隠蔽捜査4』今野 敏

2014.10.11 今野 敏   comments 0
4101321590
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この本、以前に読んでました。
それに気付かずに最後まで読んだ私・・・(汗)
感想はこちらで、どうぞ。



http://raffiner.blog70.fc2.com/blog-entry-1505.html

(2014.6.20)
ちなみに。二度目でも面白かったです。
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

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