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ポー名作集  エドガー・アラン ポー

4122053471
中公文庫
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なるほど、なるほど・・・

読んだような気になっているポーですが。
よく考えたらオリジナルは読んでいません。
そういう人、意外と多いのではないでしょうか。

いぜん運良く、古本屋の百均棚にて本書を発見。
いつか読もうと思って寝かせてありました。

読み始めてまず感じたのは。
あれ・・・理屈っぽい。
そして。非常になんていうか男性的。

ポーって男性の方が好きじゃないでしょうか?
勘違いか偏見かもしれませんが・・・

ミステリーの元祖と言われますが。
人間性の「闇」の面に非常に興味が強い作家という印象。
ああ。それは現在のミステリー作家にも共通しますよね。

しかし。怖い。
怪異が怖いというよりも。
作者の心に広がる闇の大きさが伝わってきて怖い。

特に「黒猫」。
ポー本人が本当にやったことじゃないかと思えてくる。

ポーが抱えていたであろう「狂気」の濃度にゾッとする。
しかし、それを極めて理知的に描ける頭脳を持つ人でもある。
だから高く評価されているのでしょう。

私は好きではないんだな。苦手なんだな。
狂気にも様々なタイプがあって。
ある種の狂気には親近感を抱くのだけれど。
ポーの狂気は、微かに袖を擦るくらいかな・・・

じわじわと。やはり。まぁ。
なんか凄いよと思えては来るのですが。

破滅型の人生を送る人の道連れになりたくないな。
別に足をひっぱられるというわけでもないのだけれど。
わざわざ不快極まりない闇の底を覗きたくはない。

そう思わせる力量があるってことでもある。

はからずも。
私の根が驚くほど健全な養分から育っていると知らされた感じ。
ちょっと。残念というか、悔しいというか。

(2017.12.25)
「悪」や「残酷」「冷酷」ということには共振できるのだけれど。
「グロテスク」の要素は、昔からどうも生理的にダメです。
丸谷才一氏の訳も、作品との相性はイマイチな印象を受けました。

罪のスガタ  シルヴァーノ・アゴスティ

4903439070
シーライトパブリッシング
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洒落っ気ある残酷さ。

なるほど。著者は映画監督ですか。
実に。絵になる作品です。

ありそうな。
なさそうな。

決してありふれてはいないけれど。
突飛というには、どこか親しみのある・・・
そんな、加害者と被害者。

いえ。どちらも被害者なのか?
善いも悪いもない。
哀しいも嬉しいもない。

罪とは、絶望した人間の本質が表面化したものに他ならない。

人間を閉じ込めている牢獄は目に見えない。だからこそ、その檻は破ることができないのだ。

作中のこの言葉に、著者のメッセージは表れている。

そして。こんなにも明確に「罪」を語っているのに。
やはり、罪のスガタは明らかではない。

「罪」は結局。
その姿を見た者の中にしかないのかもしれない。
それが当人であれ、被害者であれ、傍観者であれ。

あなたにとって、その行為は「罪」ですか?
・・・そう問われたとき、万人が同じ答えは出さないだろう。

そのことは何かトテツモナク、残酷な現実だと感じるし。
一方、同時にそのことが小さな救いでもあると思える。

「罪」は結局。
ひとつの鋳型に嵌るようなものではなく。
だからといって、存在しないとは決して言えない。

(2017.12.5)
日本では無名の監督ですが。
彼の代表作である「カーネーションの卵」は。
フェデリコ・フェリーニ、ベルナルド・ベルトルッチも絶賛したそうで。
そのタイトルの不思議な魅力からしても、機会があれば観てみたいな。
(京都で過去に上映会は行われたようですが・・・)


家なき鳥   グロリア・ウィーラン

4560071608
白水uブックス
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心の鮮度が落ちている人に贈りたい。

この本を読んだ時の私がまさにそうでした。
生きるのが厭になったとか、死にたい訳ではないけれど。
ずっと。こうして耐えて耐えて耐える日々が続くのだな、と。

小さな楽しみを見つけることはできるとは思うけれど。
その楽しみの質や輝きも、どんどん落ちて行く気がして。

簡単に言えば。疲れてる。疲れ過ぎてる・・・心が。
降り積もる疲労と日々闘っていて。もう、うんざりしてる。

そう。そんな人に、ぜひ読んでもらいたい。

自分の身の上に起こる出来事は変わらなくても。
それをどう受け止めるか、感じるかは変えられるのです。

心の持ち様、と言ってしまえば何てことはないけれど。
その心を支える柱だか芯だかが折れている人が多い気がする。

主人公は。見たこともない男の元へ嫁がされる。
たった13歳。しかも相手は持参金目当て。
貧困ゆえの不幸、ここに極まれり・・・という展開。

それでも。主人公の少女の心は歪みません。僻みません。
妬んだり、憎んでも良さそうな相手に対しても優しさを保ち。
かと言って、天使のように善の心に溢れているわけでもない。

不満、悔しさ、哀しさ、淋しさ、虚しさ。
当然抱くべき気持ちは彼女の心にも生まれます。
ただ、それを育てることはしない。

自分が抱いている負の感情を押し殺すのはマズイ。
あるものはあるものと認めるしかありません。
その上で、それらに養分を与えることはしない。

恵まれない境遇でも、できる限り自分のやりたいことをする。
自分の好きなこと、自分にとって楽しいことを精一杯。
嫌いだけれどやらなければならないことも手抜きせずにやる。

泣くし。落ち込む。でも腐らない。

そりゃ。幸せになれますよ。なりますよ。ね。
こんな真っ直ぐな心が私にあるとは思えないけれど。
読み終えたあと、心がふわっと軽くなっていました。

まるで。爽やかな風が吹き抜けて。
心に積もった塵を吹き飛ばしていってくれたよう。
さらに、小さな可愛い置き土産も残して。

(2017.12.2)

オーウェル評論集  ジョージ・オーウェル

4003226216
岩波文庫
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評論集って、こんなに面白かった!?

とにかく。面白くて。
オーウェルの小説にはさほど魅力を感じなかったのに。
なんだ、なんだ、この評論集の楽しさは。

強い。優しい。明確。
読んでいる間、頭がぐるぐる回った。
回転の速いとは言えない私の頭が猛スピードで。

なんだかね。なんだかね。
脳が刺激されるわけなのです。

オーウェルの意見に賛成だとか、反対だとか。
納得するとか、しないとか。
そういうのを超えたところにある文章です。

カッコいい!

こう言える、こう書ける、ここに気づける。
鋭いとは言えるけれど、才気走ってるわけではない。

対象に接しているのではなく、深く切り込んでいる。
読みながらずーっと。ずーっっと。唸ってました。

個人的には。
「チャールズ・ディケンズ」が面白かった。
自称英国文学好きの私なのに、好きではないディケンズ。
それが何故なのかが、初めてわかりかけた。

わかった、とまでは言いません。
すごく大きなヒントを貰いました。

「好きになれない」ものには、当然理由がある。
その理由が明確でない時こそ、それは重大な理由で。
ええ。自分の性分が隠し持っている弱点もしくは特徴。

この話は長くなるので割愛させて頂きますが。

キーワードは「階級社会」です。
そもそも。私の好きな文学の背景には「階級社会」がある。
その存在の是非は問題ではなく、それが「在る」事実が問題。

その「在る」ものをどう判断し、どのように対峙するか。

私はディケンズの立ち位置に違和感を持っているのですね。
欺瞞を感じとった、と言ってもいい。
ただそれは「気配」でしかなく、証明は出来ません。

オーウェルの評論を読むと。
目から鱗が降るくらいの勢いで、そのことがわかりました。

でもね。オーウェルはどの評論でも。
すごく公平で。自分に都合の良い書き方をしていない。
だから読者も、一方的な考え方から一歩引いて物事を観れる。

読者に「可能性」を持たせてくれる評論です。
様々な方向から、様々なことを考えさせてくれる。

ああ。「考える」って。こんなにワクワクするものだったっけ。

取上げられている内容と。全然別のところに思考が飛ぶことも多く。
飛んだだけでは足りずに、ふらふら彷徨っていくのですが。
その散歩が楽しくてならない・・・そんな評論集でした。

政治的な方面は。正直、私の得意分野でなく。
やはり。文学に関することの方が頭が働くのは致し方なく。

でも。また。読もう。何度でも読もう。

(2017.9.22)
この本を薦めてくれた友に深く感謝。

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々  ジェレミー・マーサー

4309205402
河出書房新社
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この店はノートルダムの別館だ。

・・・と。店主のジョージは言う。まさにそのとおり。

見知らぬ人には親切にしなさい。
彼らは変装した天使かもしれないから

お店の中のプレートにはこう書かれています。

ある条件を満たせば、無料宿泊もできる書店。その条件は。

・執筆計画がある
・1ページの自伝の提出
・1日1冊本を読む
・2時間書店の仕事を手伝う

要は作家の卵を支援しようということです。
書けずに何年も暮らす人もいるわけですが。
というより、そういう人が大半なわけですが。

ひょんなことで、この書店の住人となった著者。
あ。はい、この本、ノンフィクションなのですよ。
カナダで新聞社に勤めていたけれど犯罪に巻き込まれかけ、
逃げるように思いつきでパリに来たわけです。

ジョージをはじめ、登場人物(=書店の住人)が破天荒。
本だらけという点では魅惑の宿ですが、不潔さも相当なもの。
どうだろう、私だったら暮らせるかなぁ、無理かなぁ。

宿泊条件は満たせそうな気がするんですけど。
あ、でも、英語で書くとなると、無理だ。
英語もフランス語も、単語が少々わかる程度だし・・・

煌びやかな貧困というか。
貧しくても絢爛豪華というか。

日本にもこういう書店があったらな・・・とは。
本好きさんはみな、考えるのではないでしょうか。

この本屋さん、訪れてみたいな。

(2017.9.8)
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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