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人魚の涙 天使の翼  フランチェスカ・リア・ブロック

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主婦の友社
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自分を愛せない少女に贈る物語。

何しろ少女の気持ちはだいぶ失っているから。
読んでいると「取り残される」感じがする。

主人公の少女の痛々しさに。
どのくらい共感出来るかで印象は変わるでしょう。

どちらにしても。
私は少女の環境も、その中での彼女の見の処し方も。
どんなに美しく描いても、哀し過ぎて好きではない。

きっと。
この物語が自分のために描かれたように感じられる、
そんな時期もあったのかもしれないな・・・とは思う。

読者をたいへん、限定するタイプの小説です。
カルト的な人気がある、というのは頷けます。

著者の他の作品が
「女の子のためのナイン・ストーリーズ」と呼ばれている、と。
それは何となく、うっすらとわかるような気がする。

でもそもそも、アメリカのローティーンの現実というのは。
セックス、ドラッグ、大量のポップ&サブカル。
今や日本も似たような現実なのかもしれないけど・・・

なんか、しんどいね。
そういう現実を生きている少女を見ているのは。
「読む」という形で疑似体験するだけでも疲れる。
とても、とても、とても・・・

そういえば。
私はサリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」を。
それこそ擦り切れるくらい繰り返し読んだのだけれど。
ある時、ふっと。読めなくなってしまったのだった。

人は若い時の、ほんのわずかな限られた時期に。
呪いなのか恩寵なのか、純度の高い絶望に捉われる。

ある種の絶望は、才能に等しい。
もしくは、その絶望を失わないことが才能なのだ。

目出たくそれを失った時には。
もう二度と、思い出したいとは思わないだろう。

それは、その絶望を追体験したくないからというよりも。
その絶望と別れるため失ったものを確認したくないから。

(2017.5.1)

優雅なハリネズミ  ミュリエル・バルベリ

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早川書房
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管理人って、そんなに社会的地位が低いの?

ええっと。主人公の管理人の女性の劣等感が凄いんです。
(一方で自尊心もとてもとても強い)
フランスって今もこんなに「階級社会」なんでしょうか?

とにかく、主人公のルネは。
自分に「知性がある」ことをひた隠しにして生きている。
バカで低俗で育ちが悪いという演技を徹底して貫く。

知的要素の濃さが魅力となっている本書は。
おそらく、それを面白いと思える人にしか面白くない。
スノビズムの傾向がかなり強いことは否めません。

ま。でも。そこはいいんです。
私自身、そういう面がなきにしもあらずですから。

知性が強みとなる場所に暮していない場合。
それは隠した方がいいというのは、日本でも同じ。

ただ、ここまでしなくても・・・と思います。
匿名で知性を活かす場所も現在は見つかるでしょうし。

だって、ルネは。
軽蔑している低俗なテレビを観てるフリまでするのです。
話し方もわざわざ魯鈍に装うのです。

さらに。著者の「日本文化の理想化」がこそばゆい。
憧れというのは。なかなか困ったものですね。
特に、「ファン」とか「ひいき」の域に達してしまうと。

作品全体の色調は好ましく。
哲学の香りや、批判的精神の鋭さを満喫しました。
管理人と友達になる少女のこまっしゃくれ具合も素敵。

フランスの小説って、根本的なところで馴染めないんです。
「自己主張の強さ」について行けないというか。
理屈や感情の展開が、どうも想定外なことが多いです。

だからつまらないということではなくて。
近頃は、そこが面白いと感じるようになりました。

実はルネが「バカを演じる」のにはちゃんと理由があって。
最後にそれが判明するのですが。
そこのところも、腑に落ちたとは言い切れないです。

何か、時代錯誤な印象なんだよなぁ・・・

(2017.4.4)
著者のバルベリさんは、なんと今や日本在住だそうで。
ほんまに、日本が好きなんやねー。

あたしの一生  ディー・レディー

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飛鳥新社
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あたしの主人、ではなく。あたしの人間。

ああ、そうか。
猫は自分が飼われているとか、保護されているとか。
そういう風には考えていないのかもしれないな。
うん、きっと、そうなんだな。

飼い主への愛情は深い。
その想いのまっすぐさに胸が痛むほど。

この物語の主人公は、猫のダルシー。
飼い主が自分を選んだのではなく、
自分が飼い主を選んだのだと、強く主張する。

彼女の良いところは。
一途に「あたしの人間」を愛しつつも。
誇りを持って「あたしの人生」を生きている点。

これは猫が語る自分の一生の物語だけれど。
彼女の人生・・・ならぬ猫生は、
飼い主にとってかけがえのない贈り物だったとわかる。

自分らしく生きる。

そう願うのは簡単だけれど。
そこに愛が絡む時。その実現は難しくなる。
でも、だからこそ、人生は輝く。

猫にでも出来る、とは思わない。
猫だから出来る、とも思わない。

多くを望まず、しかし自分の求めているものには貪欲な生き方。

猫好きさんも。そうでない人も。
人嫌いさんも、人見知りさんも、寂しがりさんも。

愛ってなんだろうと考えてみたことのある人は。
胸にズキン、と響くものがあるでしょう。

著者が何度も繰り返したであろう言葉を、最後に。
「ありがとう、ダルシー」

(2017.4.6)
感想を書くにあたって。もう一度読み返しました。
(再読日は2017.8.25です)
内容を軽くチェックするつもりだったのに。
気付けば最後まで読み切っていて。目には涙・・・
猫目線の物語を読むのはこれが初めてではありませんが。
これほど、リアルな猫らしさを体感したことは無かったかも。
小説向きに脚色されていない、これぞ猫!な感じ。
(あ。私、擬人化された猫が主人公の物語とかも好きですよ)

ブルックリン   コルム・トビーン

456009022X
白水社
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一目惚れしたタイトル。

この本に出会った経緯など語ってみましょう。
私はある映画を観たいと思っておりました。
公開前の数ヶ月前から「これはきっと好き!」と予感して。
早々とスケジュール帳にまで書き込んでいたのです。

が。折り悪く、上映している頃は本人も家族も体調が悪く。
最後のチャンスという休日もぐったりと家で伸びていました。

うー、やっぱり行きたい。他の場所で違う時にやってる?と。
京都や神戸の映画館を調べてみました。
結果、京都か神戸は時期が違うので運が良ければ観れると判明。

で、なぜか京都で上映中の別の映画が目に留り。
「なんか、これ、私、すごく好きそう。絶対好きだ!」と。
一目惚れ、でした。それが「ブルックリン」。

でも。日程的に、観に行くのは不可能でした。
妙に悔しく落ち込んだところで、原作があると知る。
きっと、原作もいいに違いない!と確信し。
映画が無理なら、せめて、原作を読むわ!!!と。

さて、ここからが本書の感想。

若い女の子の心理が緻密に描かれている。
賢く、どちらかというと老成しており、感情の起伏は穏やか。
観察力が高く、自分自身を客観視することもできる主人公。
その目を通して描かれる景色は妙に見慣れたものに感じられる。

嬉しくはない「親しさ」。
都会の風景は国や時代が異なっても普遍的であるということなのか、
居場所がないと感じている者の目に映る景色は似るということなのか。

アイーリッシュ(主人公)の物事の感じ方、受け止め方は、
まるで自分のもののようにしっくりと馴染む。
(私のほうが彼女よりも愚かで感傷的ではあるけれど)

自分の手には届かぬものがあると知っている者。
そのことに苦痛はあるけれど、それを諦めて生きると決めた者。
そして「諦める」ことが「負け」とは思わない者。
閉じられた可能性を思い出の中に封印して生きていく者。

そう、訳者さんもあとがきに書いておられたが、
極めて「日本的」とも言える感性が描き出されている。

「読んで良かった!」と、ぎゅっと心を掴まれる小説でした。

(2016.11.23)
観たかった映画とは「シーモアさんと、大人のための人生入門」で。
後日、無事に観ることができました。予感通り、いい映画でした。
ああ。「ブルックリン」も観たかった!!!

ロスチャイルドのバイオリン  アントン P. チェーホフ イリーナ・ザトゥロフスカヤ

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(チェーホフ・コレクション)
未知谷
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心を覗いて絵にしたなら・・・?

チェーホフの短篇の物哀しさと。
しっくりと馴染む挿絵。

絵を添えた、というのではなく。
一体化して溶け合っているよう。

物語の中のバイオリンの音と絵とが響き合う。

ああ、いいな。いい仕事だな。
チェーホフの書いた物語も。
イリーナ・ザトゥロフスカヤの絵も。

(2016.9.4)
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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