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床下の小人たち  メアリー・ノートン

Posted by 彩月氷香 on 31.2010 その他 翻訳文学   0 comments   0 trackback
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岩波少年文庫
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今、公開中の映画「借り暮らしのアリエッティ」の原作。
イギリスの児童文学の名作。

映画化するの、あのお話を?・・・大丈夫なんかしらん。
観てないけど、「ゲド戦記」もイマイチだったらしいのに。
と、言いながら、例によって昔読んだ本の記憶は薄れている私。
これをいい機会と、読み直してみた。

う~ん。さすが。イギリスの児童文学って、なかなかシビアだわ。
なんていうか、随所に辛口。人間の描き方が。
ふんわりしたファンタジーなんかじゃ、ない。

8歳の私がどう思って読んだのか、気になるな。
たぶんね、私、ホミリーがキライだったわ。
主人公の少女(小人の)アリエッティのお母さんなんだけど。
いやまぁ、見栄っ張りで贅沢好きで、キンキンやかましい。

今、読むとなんか愛らしくも思える俗っぽさと、
そのくせ彼女なりの信念が見えたりもして面白いんだけど。

しかし、どうも、私の記憶に残ってる場面がない・・・
たぶん、これ、5作くらい続くシリーズ物だから、
私が好きなのは、この第1作ではないのだと思う。

昔からシリーズものの、どれか1作に肩入れして繰り返し読む、
っていうことが多かったんだ、そういえば。
赤毛のアンシリーズ(10作以上あるのだ)も、
なぜかアンでなく娘のリラが主人公な話が好きだったし、
三島由紀夫の豊穣の海シリーズも、一作目の「春の雪」だけ読み返すし、
小野不由美の十二国記も泰麒が登場する巻のみをリピート。

ごめんなさい、話がずれた。で、私、続編も読むかどうか悩み中。
大人も読めるファンタジーには違いないんだけど、
めちゃめちゃ続きが気になるっていう気持ちにはならないんだよね。

しかも、今、amazonでチェックしてて驚愕の事実発覚!
私、どうやら、いぬいとみこ作「木かげの家の小人たち」と
記憶が混じっちゃってるんだわ・・・。

おかしいなぁ、牛乳は?って思ったんだよねぇ。
いぬいさんのお話は舞台が東京ながら小人はイギリス人(!)で、
少女ゆりが毎朝、牛乳を届けるんだよね。青いコップに入れて。
時代は戦争中、なんか薄暗いトーン。でも、すっごくいいの!
なんていうんだろう、どこかしっとりした趣で・・・。

ああ、また読み返さなきゃならない本が増えちゃった。

(2010.7.26)

心の整骨  001 other

Posted by 彩月氷香 on 31.2010 other   0 comments   0 trackback
私は、いつも「最高」のものばっかり好んできく趣味はないし、それを特に探そうと考えているものでもない。バッハには、まだ別のバッハが幾つもある。そういう中で、リヒターのバッハと著しく違っていて、しかも、私を魅了してやまないのは、グレン・グールドのバッハである。リヒターとグールドと、私は、そのどちらも捨てたくないし、捨てる必要を少しも感じない。音楽は、それを許すのである。

              吉田秀和「一枚のレコード」




森と氷河と鯨   星野道夫

Posted by 彩月氷香 on 30.2010 星野道夫   0 comments   0 trackback
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世界文化社
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アラスカの雄大な自然と野生動物を一心に追い続けた写真家である著者。
この本は、ジャンルとしてはエッセイ写真集という体裁だが、
その文章は、よくある写真の添えものなんかとはまるで違う。

星野さんのことを何一つ知らないとき、一枚の写真を目にした。
彼の主要な題材である、ホッキョクグマの写真。
動物の写真に興味を持ったことなどないのに、一目で強く惹きつけられた。
説明のし難い、胸に迫ってくるものを感じ、心を奪われた。

それは、写真そのものに対してというよりも、
写真を通して訴えかけてくるカメラマンの「念」のようなものだと、
そのとき、何故か、はっきりと感じた。
それが、具体的にどういうものなのか、わからぬままに・・・。

星野道夫さんの本を読むと、その謎は一気に氷解する。
私は、幾たびも、著者の言葉に打たれ、涙ぐんだ。

飾らない、抑制の効いた、しかし、深く心に染みとおってくる文章。
読んでいると、月並みだけれど心が洗われるような、
ううん、そんなんでは足りない、生まれ変わるような気がする。

厳しい大自然のなかで、なにも構えることなく、
そこに溶け込んで立つ星野さんの姿。

「ワタリガラスの伝説を求めて」と副題にあるとおり、
彼はその伝説を追って、旅をする。
たくさんの消えゆくインディアンの種族に出会い、対話しながら。
魂を巡る旅。伝説のなかに息づく神秘。多くの絶望と救済。

彼は何万年という昔に軽々と思いを馳せる。
彼の「時」の観念は、地面をしっかりと踏みしめながらも
常に宇宙的な広がりで遥か遠くまでを見据えている。

こんな人がいる、と思うだけで私は涙が湧いてきてしまう。
こんな人がいた、と過去形で言わなければならないことが無念でならない。

ワタリガラスの伝説を追う旅の途中、シベリアの地で、
彼はクマに襲われて帰らぬ人となる。

この本は彼の未完の遺作。
彼はどのようにこの物語を終えるつもりだったのか、
巻末に添えられた彼の英語混じりの日記を読み、また涙ぐむ。

(2010.7.28)
彼の作品はどれも素晴らしいのですが、この本は最高傑作だと思う。
人間の、いいえ、生物の、いいえ、宇宙の、「たましい」のことを
感じとる力の貴さと、その力を衰退させ続けて生きている現代人
(自分も含む)の行く末について、考えさせられる。
・・・突きつけられるものは厳しいのに、限りなく、優しい。



アカデミズム絵画について

Posted by 彩月氷香 on 30.2010 額の中の絵   4 comments   0 trackback
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はじめに、お断りを幾つか。

①この記事は、私の以前の記事にお寄せ頂いた小泉宗次さん(素敵なブログを運営しておいでで、よくお邪魔させて頂いてます)のコメントへの、返事となっております。こちら→「消えた美少女たち」を読んでからお読みいただけると幸いです。

②ご本人に許可を頂いて、その質問を以下に転載させていただきます。
 詳しくありませんが、
アカデミック美術って真実の美を追求するのではなく(美は遍在し得る)、美が真実である(絶対的な美のみ在り得る)と観念論的に考えているのでしょうか? 描かれるものは全て理想的、観想的であり、主体性や具体性を著しく排除する傾向があると考えていいんでしょうか? よくわからないです。写実主義的ではないとすると、画の中の少女はつまるところユートピア的な存在なのでしょうか? 質問ばかりで申し訳ないです。

③私の絵画の知識は中途半端ですので、必ずしも正確とは限りません。間違いにお気づきでしたら、ご遠慮なくご指摘いただけると嬉しいです。

④絵画に興味のない方には退屈かもしれません。その上、とんでもなく長いです。

では、覚悟の出来た方はどうぞ。
*****************************************************************

当時(19世紀)のフランスには、アカデミーという国立の美術学校がありました。そこでは、宗教画、歴史画が重んじられ、アカデミーの支柱は「理想美」でした。彼らの信望する「美」とは、伝統意識にのっとった絵。つまり、正確なデッサン、写実的に表現する技術、細部までこだわり抜いた精緻さ、迫力ある画面を作りだす構成力。授業は相当厳しく、規律で定められていたといいます。

その中で超一流と認められた画家の技術水準は、やはり素晴らしいものだと思います。題材が限定されるために、表現の幅が狭いことと、技術の完璧を目指すことでどうしてか、精神性が薄い印象を見る者に与えるのは不幸なことです。実際、甘美さを追求しすぎて、どうも薄っぺらくなっている部分は見受けられます。

ともかく、当時はルイ14世やナポレオン3世などに庇護され、世の中にももてはやされ、アカデミー会員といえば芸術家のエリートでした。彼らは徹底的に印象派の絵画を否定しました。

19世紀末に印象派を含む革新的な絵画が脚光を浴びるようになると、形成は一気に逆転します。
アカデミズム絵画は、時代遅れで保守的、進歩もなく、体制的・・・と嫌悪され、美術史の中でも忘れ去られていきます。20世紀末になって、再評価されはじめたのですが、印象派の人気には及ぶべくもありませんね。反印象派というイメージの悪さも祟って作品の価値も不当に低く、行方不明になった作品も多いそうです。

絵画史をちょこっと齧った程度の私は、アカデミズム絵画のなんたるかは朧に記憶していましたが、その代表的画家といっても名前が浮かばなかったくらいです。偶然に、美少女の絵を探していて、ブクローに出会い、彼がアカデミズムの巨匠と知った次第。他にはカバネル、この人は名前は聞いたことありますね。確認してみたところ、やはり、ブグロー同様の甘美な画風です。

写実性を求めつつ、非現実的な理想の美に走っている、というのが面白いところです。構図や明暗、質感に完璧を求めながら、美しくない(と彼らが思ったもの)は徹底して切り捨てた、その姿勢は或る意味、とても潔くも感じます。

精緻な技術、安定感のある構図、万人が愛らしいと思う美しい顔立ち。これだけ揃うと、なんだか少女漫画めいた通俗性を帯びてしまうのですよね。実物を観ていないので、はっきりとしたことは言えませんが、画面はとても滑らかだそうです。筆使いを消し、つるつるとした印象だとのこと。だとしたら、なお一層、綺麗なだけの絵、に見えてしまうのでしょうか。

質問の答えにはなっていないかもしれませんが。私が語れるアカデミズム絵画の知識はこれくらいです。正確を期すならば新古典主義とのかかわりにも触れなくてはなりませんが、長くなりますし、私の怪しげな知識も馬脚を現しそうなので、割愛させていただきます。

以下、私の独断と感傷に満ちた長文が続きます・・・


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賞の柩  帚木蓬生

Posted by 彩月氷香 on 29.2010 その他は行の作家   0 comments   0 trackback
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新潮文庫
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傑作サスペンス、は褒めすぎと思う。
けれど気持ちよく読める。品位がある。
それが私には物足りなくもあるけれど。

ノーベル賞にまつわる陰謀、という題材に、正直なところ興味もない。
それでも、一つの道を選んで生きる人の姿勢の、様々な有り様に
考えさせられることがたくさんある。

「留学先で最新のものを学ぼうとしても、そんなものは時が経つにつれて色褪せる。それよりも、古いものを学んだ方がいい。深い所にある、ものの考え方を学ぶべきだ」

人物の描き方や、ヨーロッパの情景の描写などは、
静かで、一歩控えた語り口に好感が持てる。

「デザートに出たケーキは頭の芯が痛くなるほどに甘かった」
これは私の経験にもぴたりと呼応して、笑えた。懐かしく思い出した。

(2004.10.21)
端正な作風の作家だと思います。
一時期、まとめて何作か読みました。
安定感のある、極めて上質な小説をお書きになるのですが、
どうも、「お行儀が良過ぎる」印象があって、物足りないのです。
私の勝手な、感覚的な感想に過ぎませんが・・・。
でも、読んで泣ける力作だったりはするのですよね。
近頃の作品はどんな風なのか、ちょっと気になります。


  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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*ブログタイトルの由来

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  • 2010年07月

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