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ヤングアダルトパパ  山本幸久 

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角川書店
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題名を見て、ふーん、若いおとーさんが育児を頑張る話かぁ、
ほのぼのしてていいかも、と軽い気持ちで読み始めた。

まもなくして。
ん? 若いパパ? え? ちょーっと待ったぁ!
中学生って、「若い」んじゃあなくて、「幼い」っていうんでは・・・。
そうか、ヤングアダルトってそ~ゆ~コト、はぁ・・・納得。

びっくりした。・・・中学生のパパって。
でもって、ママは、彼より10くらい年上の歌手もどきで、
子供を置いてトンズラしたんだと・・・。

しかしだな。静男クン。君、めっちゃいい子やね。
息子の優作への愛の溢れる日々の子育て、もう私、素直に応援しちゃうよ。
花音さん、という子供を捨ててった女にも何故か怒りは湧かない。

そもそも、こんな事態が起こってるのを把握しなかった、
静男のお父さんも相当なもんだけど、ま、それも気にならない。

たぶん。これ、山本幸久の魅力だと思うけど、
作中に、どんなハチャメチャな人間が登場しても、
結構これって大事件、てな出来事がおこっても、
なぁーんか、のほほ~んな空気が漂ってて、
読んでいても気持ちが、ぜんぜん焦らない。

まったりするのではなく、一緒に笑ったり泣いたりはするのだが、
何だろう、うまく言い表しにくい、安定感がある。
たぶん、根本的に、とても健やか、なんだと思う。

とぼけた味の、ちょっとチャラけた感じの、
だけど、きちっとした、明るい世界だ。
でも、考えてみて、普通、静男の立場だったら、もっと暗くなるよね。

あ、彼の母親は家を出て、再婚しちゃったんだよね。
で、父親は、ふらふら仕事と女に忙しくて、家に帰ってこないの。
これならグレても、当然じゃん?
でも、べつにグレて子供を作ったワケではないのだ・・・。

彼の子育て、感動的なんだよねぇ。笑えるけど。
で、思わず、こんなデキスギな少年、いるかぁ~?って思ったり。
だけど、いそうな気がするんだよね。
彼の友人たちも、程良く自分勝手で、でもなかなかイイ奴で、楽しい。

清々しい感動で、気持ち良く読み終えたけど、
ああ、まだまだ、静男クンの子育ては先が長くて。
ほんとに、君、大丈夫かぁ~って。
うん、でも、心配だけど、心配じゃない。
きっと、色々あるんだけど、優作君は健やかに育っていくよ。

そう、思わせてくれるのが、嬉しい。
いいよね、こういう小説。
ストレート直球勝負で、潔いね。好きだな。

(2010.9.22)
本の感想はここまで。
この先は私がこの本を読んで思いだした過去のエピソード。
さて、皆さま、静男クンみたいな子は、実在すると思いますか?

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心の整骨  004 other

2010.09.26 other   comments 0
偽りが嫌いだ、と公言する人間を、僕はさほど信用していない。自分の人生をすっかり飲み込んでしまうくらいの巨大な嘘に巻かれているほうが、よほど幸せに思える。

              伊坂幸太郎「オーデュポンの祈り」


悪について   中島義道

4004309352
岩波新書
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悪について。

それは、私がずっと心の底に抱え続けている重い石のような想念。
様々な場面で、つんのめるようにその課題にぶつかって立ち止まる。

そんな自分を持て余していた際、そのものズバリのタイトルの、
本書に出会った・・・さて。ここに私を導く答えはあるのか?

結論から言うと、それは無理だった、予測できたことだけど。
だいたい中島義道氏のことも何も知らなかった私は、
この本のなりたちを読み誤っていたのだ。

残虐な事件が起こるたび、その「悪」をめぐる評論が喧しい。しかし、「悪」を指弾する人々自身は、「悪」とはまったく無縁なのだろうか。そもそも人間にとって「悪」とは何なのか。人間の欲望をとことん見据え、この問題に取り組んだのがカントだった。本書では、さまざまな文学作品や宗教書の事例を引きつつ、カント倫理学を「悪」の側面から読み説く。

この紹介文を先に読んでいたら、私はこの本に手を出さなかったかもしれない。
カントは、私がどうしても読み通すことができなかった、数少ない本なのだ。
いや、まったく歯が立たなかったと行った方が正しい。

著者は、何十度と読み続け、読めば読むほどわからなかったカントを
ある日、異国の地、ウィーンで理解したのだそうな。
さほど、カントは難しい。悪を語るにカントとは・・・。

だが、びっくりするほどにスルスルとカントの倫理学が理解できるという、
本書はまるで魔法か手品のような本であった。
もっとも、原本を読解出来なかった私には著者の読みが正しいかどうか、
判別するすべがないのであるが・・・。

昔々、チンプンカンプンのまま意地で繰り返し読んだためか、
私の記憶の中にはカント特有の語法や言い回しが残っており、
それが中島氏のわかりやすい説明と繋がることで、
まるで、もともと自分の力でカントを読みこなしていたかのような、
思い違いも甚だしい勘違いに、いつしか陥っていた。

そのカントが理解できるという驚きに、肝腎の「悪」の考察に
集中できないという事態が起きた。

と、いうよりも。
やはり、カントという希代の哲学者が語る、高次元の「悪」の概念と、
それを全く冷静な視点で読み解いているかというとやや疑問な著者の、
「悪」を分析する文章とは、私の「悪」とは一致しないわけである。

で、ありながら、示唆するところの鋭さと、グサグサと痛いくらいに
私の弱点を突いてくる論旨の展開に哀れな私の頭は翻弄され続けた。

いや、わかりやすすぎるくらい、わかりやすく語られているため、
サクサク読み進んでしまい、あっという間に読了したのだが、
その間に次々と生まれる疑問や、自分自身の問題との比較に、
立ち止まる余裕がなかったのだ。

高速回転する頭脳を持たぬのだからゆっくり読むべきだった、と思う。
とりあえず、気になる箇所に付箋を貼りながら読み進めたのだが、
毎ページ毎ページに、個人的キーワードに出会い、
読み終えたときには貼った付箋が100枚を超えていた・・・。

キーワードを頑張って絞ってみるならば。
「自己愛」「嘘」「意思の自立と他律」。

そう、悪と言うと普通並びそうな、「殺人」「暴力」「強姦」ではないのだ。
哲学とは根本へ、根本へと遡っていくものだから。
カントに至っては、その厳格さゆえ、様々な超人的な決断を、
人間に強いるような事例を幾つも発っしている。

嘘をつくことで救える命(しかも友人の)を犠牲にしてまで、
真実を語る必要があるだろうか・・・?
が、そんな小市民感情で終わってしまうと到達できない境地へと、
本書を読むことで潜っていくことができるのは貴重な体験だった。

そしてまた、取り上げられる文学が、
軒並み私の「ひっかかかり度」の高い本だった。
ドストエフスキー「罪と罰」「白痴」。夏目漱石「こころ」。
これらは、あまりにも私の気持ちを鋭く深くひっかくので、
好き嫌いを越えた因縁を長年抱えている文学なのだ。
はからずも、本書のおかげでその謎がほぼ、解けたのは大きな収穫。

それに関しては長くなりすぎるので非常に申し訳ないが割愛。

区切りがない文章ですが、長すぎるのでこの辺で一時停止。
ここで約半分、まだ読めるという方はお進み下さい。


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すべての美しい馬  コーマック・マッカーシー

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ハヤカワepi文庫
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少々読みづらい文章。
独特の味わいや美しさはあります。
情感があるというか・・・。

いささか残酷な物語です。
不条理な世界。
青春の苦いきらめき。

馬好きなら、きっと馬の端正な描写にうっとりするでしょう。

(2006.3.2)
馬の描写の見事さには、太鼓判を押します。
馬が好きな人なら、読んで損はないと思います。


転がる毛糸だま

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眠れないので、ちょっとした呟きを書きとめようとペンを持ったら、
もつれた文章が、つまづき、からまり、よじれながら、
まるで手から落ちた毛糸玉が、ずーっと遠く見えないところまで、
逃げるようにコロコロ転がって糸の尾を長く長くひくのにも似て、
どうにもまとめようもなく脈絡を失った言葉が延々と続き、
我に返ったときには、A4の反故紙5枚が、みっしりと文字で埋まっていた。

どうして、こうなるのだ?
・・・と、深々とため息をつきながら、
その長すぎる文章を読み返す気力ももはや湧かず、
お蔵入りするであろうその書き付けを、それでも捨てはせず、
引き出しの奥に放り込んだ。

ところどころは、とってもいいこと書いてるんだけど、な。

そんな夜が明けた次の朝。
勇気を出して、絡まった糸のような文章を読み返す。
そして、やっぱりこの期に及んでも図々しく、
ところどころ良い部分あるんだけどな・・・とつぶやく私。

「わかりやすい文章とは」っていうテーマなのだ。
で、私が思うところの「わかりやすい文章」とその意義を長々と語り、
最後には、じゃあ私は「わかりやすい文章」を書けているのか、
そもそも、わかりやすく書きたいと思っているだろうか・・・という
個人的な問題につながっていく、という内容。

たぶん。この、個人の問題を投入するから混乱が起きるのだ。
グルグルするのだ。やめときゃ、いいのに。

そのなかに「質の悪いわかりやすさは、どこかしつこい」とあり、
それは、もしかしてというか、もしかしなくても、
自戒の言葉、のように思えるのだが・・・。

先日、申し上げたとおり、「未来の自分は他人」。
私、昨夜の自分の言葉すらも正しく理解できる自信はない。
他人の言葉として、昨夜の文章から一部を抜粋してみるとしよう。

眠れぬ夜の彩月のひとりごとに興味のある方だけ、続きをどうぞ。


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プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
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