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猫と庄造と二人のおんな   谷崎潤一郎

4101005052
新潮文庫
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リリーという猫の、なんと全き猫らしさよ。

ひらりひらりと身をかわして、
人間の愛情なんて鬱陶しいと言わんばかりにツンと澄まして、
そっぽを向いた次の瞬間には、するするっと、
身のこなしの優雅さを見せつけながら近づいてきて、
あなただけは特別、という顔つきでじーっとこちらを見つめ、
ゴロゴロと喉を鳴らして甘えかかる・・・。

そんな様子が目の前に、くっきりと浮かび上がる。
あでやかに生き生きと、息を呑むほど、見事な描写。

そのリリーを溺愛する庄造という、しょうもない、
あかんタレな男と、その男に捨てられた可愛げのない元妻、
身持ちの悪い若い新妻、計算高い庄造の母。

この人間模様、ぷんぷんと谷崎文学の香りを放ちつつ、
彼の作品の中では珍しく、のびのびと柔らかい空気を纏っている。

魔性と言われる猫にも似た、魔物めいた香気を持つ文章の魅力は、
この作品にも健在ながら、「春琴抄」や「痴人の愛」「細雪」などの、
ねっとりした豪奢さとは異なり、まろやかな愛らしさに包まれている。

道端に寝転がる猫の目線で地べたに近い世界を描いても、
高貴さを漂わせてしまうくらいの、谷崎の卓越した文章力に、
私は酔いしれながら、感嘆することしきりに、幾度も幾度も、
深い深いため息をつきながら、読んだ。

しなやかで艶やかで、けれどすっきりとした仕立て、
という極上の文章が精緻に紡ぎだすものが、
美とは遠く離れた凡庸な人間模様であるという皮肉。

ゆえにこそ、
人間のズルさ、浅ましさが、哀れにいじましくも見えてきて、
ほろりと優しい気持ちになれるのかもしれない。

(2010.9.21)
「すぐ読めて満足感あり」のお題に寄せて頂いたなかの一冊。
空花さん、素敵な出会いをありがとうございます。


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心の整骨  008 creative

2010.09.29 creative   comments 0
町はおこされておきるものではない。その魅力はひとえにそのたたずまいである。おこすのではなく、むしろ静けさと成熟に本気で向き合い、それが成就した後にも「情報発信」などしないで、それを森の奥や湯気の向こうにひっそりと置いておけばいい。優れたものは必ず発見される。「たたずまい」とはそのような力であり、それがコミュニケーションの大きな資源となるはずである。

                    原 研哉「デザインのデザイン」


アフリカのひと ―父の肖像  ル・クレジオ

4087734420

集英社
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ル・クレジオ、なかなか良いかも。
アフリカって深いなぁ。
惹き込まれます。
人生って何かと考えさせられてしまう。

(2006.4.27)
ル・クレジオ、もっと読みたいな。時間ができたら読むぞ。絶対読むぞ。
・・・と言ってすぐに忘れるので、予約する本のリストに入れとこう。
でもチェックしてみたら一番読みたい本が図書館に無かった・・・
「地上の見知らぬ少年」以外で、ル・クレジオのオススメ、
もし、ご存じの方いらっしゃいましたら、教えて下さい。
作品が沢山あって何から読めばいいか、わからないのだ(涙)

アホウドリの糞でできた国  古田 靖 寄藤文平

4757210981
アスペクト
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ナウル共和国。
地球温暖化で海に沈むだろうという、小さな島。
サンゴ礁に集まってきたアホウドリの糞が堆積して、
できたのだと言われている、南の島。

自給自足でのんびり暮らしていた島民は、
この国の資源、燐鉱石を求めてやってきた先進国に占領される。
最初はドイツ、次にイギリス、オーストラリア、そして、日本。

やっとめでたく独立した折りには、その燐鉱石で得る収入で、
国民が全く働かずに遊び暮らせるという、夢の島となった。
教育、病院、電気もタダ、結婚すれば家ももらえるのである。

そんなある日、燐鉱石が遠からず枯渇するという事実が判明。
さて、焦ったナウル共和国がとった政策とは・・・。

ここからが本番、ですが。気になる方は本書を読んでみてください。

もう、あまりの行きあたりばったり、その場しのぎの政策が、
次から次へと湧いて出て、それが当然の如く、バタバタとコケて、
ますます状況が悪化して行く様は、もはや、悲惨さを通り越して、
おとぎ話めいた、ブラックジョーク・・・。

そもそもこの本は、寄藤文平氏のイラストがふんだんにあしらわれ、
古田靖氏の文章も小学生も読める易しさで、絵本の様相を呈している。

一国の歴史が童話か昔話のようにシンプルに語れてしまうのは、
この国の物理的な小ささ(東京の品川区ぐらい、車で一周約30分)、
国民性の素朴さ、素直さ、産業の無さ、といった要素によるところも
大きいには違いないのだけれど・・・。

案外、肥大化した資本と文化、それによって生まれた多様な嗜好、
などを削ぎ落としていけば、どんな巨大な国家も似てる気がする。

暮しって、何なんだ?人間の幸せって何なんだ?
人間らしく、とか、充実した暮らしとか、簡単に言うけど、それナニ?
文化も働くことも忘れたナウルの人々を笑ったりは出来ない。

嫌が応にも「国」単位の価値観から自由になりきれずに生きている、
私たち現代人にとって、自分の住む国が安泰であることが重要なのは、
ナウル共和国の人々となんら変わることはない。そして。
・・・海に沈まなくとも、国は沈むのだ。

そんな、とても大事な、国の行方を定める方針が国民の(無言の)
物質的豊かさを限りなく求める欲求にコントロールされていることも、
ナウル共和国と同じではないか?
キレイごとのご託で飾って、「権利」「自由」と言ってはみても。

小さな、愛らしい絵本に込められた思いは、掘り尽くせないほど、深い。

(2010.9.21)
このスタイル、様々な可能性があるなぁと思います。
知性とセンスがなくては書けないものだけど。
同じような体裁で、他にも色々面白い作品は作れそうな気がする。

「すぐ読めて満足感あり」な本を紹介して下さいという呼びかけに
イチ早く応えて下さったキヨハラ様のおかげで出会えた、本書。
ほんとうに、すぐ読めて満足できる、おトクな本です。
時間がないけど読書がしたい、という方にお薦めします。
キヨハラ様ありがとうございました。いい息抜きになりました!

「すぐ読めて満足感あり」の本、に関する事情をご存じなくて、
知りたい方は、こちらをご覧ください→「コメント大募集!」

キヨハラ様に続き6名の方が、思い思いに沢山の本を推薦して下さって、
只今、19冊がエントリー。すでに読んだことある本もあったのですが、
読んでいない本は、少しずつ読んでいるところ。
順次、感想はアップしていきます。時間はちょっとかかっちゃいますが。

今もひっそり募集中なので、思いつく本がある人は、
どうぞ、お気軽にご参加ください。
なぜかまだ、一冊もミステリが無いんだよね・・・



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にらめっこ

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勉強に行き詰って、ヤケ気味に本を一気読みした話を先日しましたが。
その後は、落ち着いて、たまに少し、読むだけで済んでいます。

ただ。大きな問題が。
8冊読むのは簡単だったけど、8冊分、感想を書くのは大変だ。
日が経つほどに内容も忘れ、感動も薄れ、図書館の返却日も迫る!

とりあえず。机の上に件の本を積み上げ、じーっとにらむ。
これ。これは、どうしたもんか。1冊に1時間としても、8時間。
もちろん、1時間で書けるわけもなく・・・。

この。試験間近な差し迫った時期に、貴重な時間を割いて書く、
そんな必要性があるものなのか・・・。

でも。
全ての読んだ本について、感想を書くのは私が守り続けてきた習慣。
長さや質やタイプはマチマチなれど、欠かさず書いてきたものだから。

・・・試験よりも、大事だ!

と、結論を出して、まず1冊目にとりかかったものの。
駄目だ。調子悪い時ほど、余分なことを書くというクセが、
めまいがするほど濃厚に表れた記事になってしまった。

「ヤングアダルトパパ」の記事ですが・・・。
そのうち、消すかもです。

最初にコケたので、憂鬱度が増してきた。
やはり、ここは特例を発して、書かずにいようか。
一番いいのは、さらっと一言ずつ書いてすませることなのだが。
それが出来そうにない・・・。ああ、どうしよう。

机の上に積まれた本を、にらみながら、また悩む・・・。

写真は、洋ナシ。熟れるのを待っているところ。
  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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