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『海炭市叙景』佐藤泰志

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小学館文庫
Amazon

衰退していく海辺の町を描いた群像小説。

見そびれたけれど、近年映画化されていて。
そのイメージから、陰鬱で救いのない物語を思い描いていた。

明るい、とは言えない。
幸せそう、には見えない。
共感を覚えるとは、認めたくない。

閉塞感に満ちた日々を生きる人々に、
その心の底にまだら模様を描く影に、
しかし明らかに、見覚えがある。

「絶望」と呼ぶべき暗い影が
淡く光を放っているように感じるのは何故だろう?

影は光のないところには生まれない。
しかし光が弱々しければ、影の姿も薄れる。
輪郭がぼやけていても、それは絶望の浅さを意味しない。

重い題材に関わらず、淡々と平穏にさえ見えるのは。
照らす光が足りなくて。影がくっきりとは浮かび上がらなくて。
光と影が解け合ったかのように近くにあるから・・・

たぶん。その気配が「親しい」のだ。
静かに発光する、希望と絶望の姿が。
そのどちらもが、孤独を背負っていることが。

(2012.4.8)
実はこの作品は著者の遺作であり、未完の小説。
村上春樹と同世代で、幾度も芥川賞候補になるが受賞に至らず、
四十一の若さで妻子を残して自死してしまった。
「海炭市」は架空の町だが、彼の故郷の函館がモデルとなっている。
丹念に描写された18名。他にどんな住民を彼は描くつもりだったのだろう。


50000アクセス!ありがとうございます♪

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2010年2月28日にブログを始めて、2年と少し。
正確に言いますと本日で786日目。

なんとまぁ。いつの間にやら。アクセス数が50000に達しました!

数字を気にしたくない、でも気になる、ってことは。
いくたびも述べてきましたが。おかでさまで気持ちにも一区切り。
ただ、ただ、こんなに沢山の方が訪問して下さったことが嬉しいです。

ちなみに、記事総数はこれにて1211件となります。
(1000件達成したら祝おうと思ってたのに、すっかり忘れてました・・・)

そこで、改めて。当ブログの方針を申し上げますと。

(1)読んだ本の感想(批評ではありません)をひたすら書く
(2)観た映画についてもメモ程度に書く
(3)日々の出来事や、感じたことも時々書く
(4)おでかけしたら写真を撮ってきて載せる
(5)ツイッターのつぶやきの一部を転載
(6)ごくごく稀に絵を描いたら載せることもある
(7)夢の話をすることもある
(8)心に迷いが生じると「詩もどき」を書いたりもする

あれ?方針じゃなく、内容の説明になりましたね。
たまに暴走することもありますが、基本(1)がメインとなっております。
残りは楽しい(?)オマケだと思って頂ければ幸いです。

方針となると・・・「はじめに」を読んで頂くのがいいかしら?
読んだことのない方は、よろしければお読み下さいませ。
(と言っても、そう大したことは書いてませんが)

私の感想を読んで「この本読んでみたいな」と感じてもらえれば何より。

鋭い洞察とか、見事な描写力とか、明晰な分析力とか、
残念ながら、そういうステキな能力は欠如しておりますので。
何をもってして読者さんに本の魅力を訴えるかというと・・・。

熱意? 根性? 気力? 

いや・・・いえ・・・あくまでも表現力を磨く努力は放棄せず、
ひたすら地道に「素直な気持ち」を綴って行きたいと思っています。

自分の目線で背伸びせず、だけど真剣に作品に向き合って。
何かちょびっとでも、自分なりに掴むことが出来るよう努めて。
読む人の心の琴線に髪の毛一本ほどでも触れる文章を紡げたらいいな、と。

ずっと長く通って下さってる方も、最近ご縁が出来た方も、
うっかり迷い込んで来た方も、読んで下さってありがとうございます。

よろめきつつも、休まず続けて行こうという決意だけは固いので。
今後もどうぞ末永くよろしくお願い致します。
次は。100000アクセスを祝う日を目指して、邁進します〜

写真はベランダにて咲き誇る花海棠。桜に似てて可愛いでしょ?
(現時点では花は終わっちゃってます。ちょうど桜の頃に咲くのです)


002 少女たちの履歴書 14人の画家

当ブログのお部屋に飾られている絵の、簡単な紹介です。
(額の中の絵は、8秒単位でスライドする設定になっています)

この小さな額に、自分の好きな絵を収めることは私の楽しみの一つ。
1シリーズ14枚というルールを定めてチョイスし、気分によって変えています。

ただいま展示中の14枚は、以下のとおり。
今回は画家のプロフィールをざっと、まとめてみました。

girl-1.jpg フェルメール「真珠の耳飾りの少女」
 1632-1675 | オランダ | オランダ絵画黄金期

 調和のとれた明瞭な色調
 簡素かつ静謐でありながら綿密に計算された空間構成
 光の反射を明るい絵具の点で表現(ポワンティエ)
 ラピスラズリを原料とするウルトラマリンブルーを多用
 真作とされる総作品数は33~36点と寡作の画家


girl-2.jpg グイド・レーニ「薔薇を持つ少女」
 1575-1642 | イタリア | バロック・ボローニャ派

 考え抜かれた構図、優雅な人物表現、柔和な色彩
 生前から「ラファエロの再来」と呼ばれ
 ゲーテによって「神のごとき天才」と激賞される
 古典主義的絵画の人気が下落した20世紀以降、評価も下落
 近年アカデミスム絵画と共に再評価されるようになった


girl_3.jpg コロー「真珠の女」
 1796-1875 | フランス | 写実主義・バルビゾン派

 銀灰色の靄に包まれたような独特の色調の風景画を描く
 繊細な写実性の中に抒情性を感じさせる風景表現は
 絶大な人気を博し、印象派の画家たちに多大な影響を与えた
 風景画が主だが、人物画や神話も優れた作品を残している


girl-4.jpg ルノアール「イレーヌ・カーン・ダンヴェルス嬢の肖像」
 1841-1919 | フランス | 印象派

 印象派の中でも名が知られ、人気のある巨匠
 時に女性的と直喩される流動的かつ奔放な筆勢
 明瞭で多様な色彩、豊潤で官能的な裸婦の表現
 揺らめく木漏れ日による人物や風景への効果など
 特徴的な表現で数多くの作品を制作


girlred.jpg エンネル「Study of A Woman In Red」
 1829-1905 | フランス |アカデミズム 

 アカデミズムの最後の大物画家の一人
 ローマ大賞、レジオン・ドヌール勲章を授与され
 お抱え画家として名声を欲しいままにする
 歴史的テーマの扱い方や荒々しい大胆な筆跡など
 アカデミズムらしからぬ近代的な要素を含んでいる


anker1301.jpg アルベルト・アンカー
 1831-1910 | スイス | 印象派

 写実主義や印象派が台頭する時代をパリで過ごす
 フランドル絵画のような落着いた色彩で日常風俗を描く
 30年間パリに住んでいたにも関わらずパリの絵は一枚もなく
 題材にしたのは故郷アネの村人 市井の人々が主である
 スイスの国民的画家だが 日本ではあまり知られていない


girl7.jpg ミレイ「アリス・グレイの肖像」
 1829-1896 | イギリス | ラファエル前派

 ラファエル前派の創始者
 歴史的・文学的主題を明るい色調と細密な手法で描く
 ハムレットを題材に制作した『オフィーリア』が有名
 (夏目漱石の『草枕』にこの絵に言及した箇所がある)


girl8.jpg ハラモフ・アレクセイビッチ『Contemplation』
 1840~1925 | ロシア | アカデミズム
 
 農奴生まれのロシア画家
 ペテルブルク帝国アカデミーで学ぶ
 名声を得て ロシアの著名人の肖像を数多く手がける
 甘美で可憐な少女たちの絵を好んで描いた


girl9.jpg ブグロー『Head Of A Young Girl』
 1825-1905 | フランス | アカデミズム

 アカデミズム絵画を代表する画家
 神話や天使、少女を題材とした絵画を数多く描いた
 甘美で耽美的な画風で 生前は高い人気と地位を得る
 モダニズムの台頭とともに忘れ去られた存在となるが
 20世紀末になって再評価されるようになる


girl-10.jpg ソフィ・アンダーソン「キジバト」
 1823-1903 | フランス・パリ | ラファエル前派

 フランス人の父とイギリス人の母の間に生まれる
 フランス2月革命の際、一家はアメリカに亡命
 その後イギリス→アメリカ→再びイギリスと移住
 田園風景を背景にした子供と女性の絵を専門とした


girla.jpg ミレー「犬を抱いた少女」
 1814-1875 | フランス | バルビゾン派

 写実主義の農民画家
 代表作のひとつである『種まく人』は
 岩波書店のシンボルマークに採用されている
 晩年には印象派に近いパステルや水彩画も制作した


americangirl.jpg フィッシャー「HER EYES WERE MADE TO WORSHIP」
 1877-1934 | アメリカ | イラスト

 魅力的な女性を描き人気を得たイラストレーター
 「千人の少女たちの父」の異名で知られる
 長年雑誌「コスモポリタン」の表紙を飾る
 本の挿絵なども手がけている


girlb.jpg ジョージ・ロムニー「麦わら帽のハミルトン夫人」
 1734-1802 | イギリス | 肖像画家

 ロンドンで肖像画家として成功を収める
 ジョシュア・レノルズとの長きに渡る確執も有名
 総長をジョシュア・レノルズが務めていたために
 生涯ロイヤル・アカデミーの展覧会に出品しなかった


girlbbb.jpg フランク・カドガン・クーパー「虚栄」
 1877-1958 | イギリス | ラファエル前派

 ノーサンプトンシャー生まれ
 1897年ロイヤル・アカデミー美術学校に入学
 (当時の会長はジョン・エヴァレット・ミレイ)
 ラファエル前派最後の継承者とみなされている




関連記事

2012年 3月に読んだ本

今月読んだ本・・・・・・22冊


本の画像をクリック アマゾンへ  
タイトルをクリック 私の感想ページへ



カント入門 (ちくま新書) 「カント入門」 石川文康
高度な入門書。しかし極めて良心的。
読むのに根性は必要ですが。
カントに一歩近づけた気がします。

剣と絵筆 (1981年)
剣と絵筆 (1981年)バーバラ・レオニ ピカード
友人に借りた稀少本、その1。
これ、好きです。少年の成長物語。

素数の音楽 (新潮クレスト・ブックス) 「素数の音楽」 マーカス・デュ・ソートイ
数字の美しさに心を奪われて。
数学大嫌いの私が根気よく時間をかけ、
丁寧に読みました。また読みたい本。

時の旅人 (評論社の児童図書館・文学の部屋)
アリスン・アトリー 小野 章
4566012077
これも友人に借りました。
時を旅する少女の物語。
描写がたいへん美しいです。

濁った激流にかかる橋 「濁った激流にかかる橋」 伊井直行
面白い。伊井直行さんの独特な世界観が好き。
ぶっ飛んでるけど、リアリティがある。

手帳なんていらない ソーシャルネットワーク時代の情報整理術 「手帳なんていらない」 幸田フミ
iPhone購入を検討してる人は、ご一読を。
初心者向けかもしれませんが参考になります。

青チョークの男 (創元推理文庫) 「青チョークの男」 フレッド・ヴァルガス
キャラクターの個性が楽しい。
続きを読みたくなるミステリのシリーズ。
どこかやはり、フランスの香り。

時間割 (河出文庫) 「時間割」 ミシェル・ビュトール
この時間の多層構造・・・凄い。
主人公とともに時の迷宮に閉じ込められる。

図書室からはじまる愛 「図書室からはじまる愛」 パドマ・ヴェンカトラマン
読後感の爽やかなヤングアダルト小説。
インドの少女が読書を通じて成長していく姿に共感。

ともだちは海のにおい (きみとぼくの本) 「ともだちは海のにおい」 工藤直子 長 新太
なんて。まぁ。どうしたら。
こんな素敵な物語が書けちゃうんだろう。
大人も子供も。一生大切にしたくなる本だと思う。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) 「祈りの海」 グレッグ・イーガン
「私」とは何であるのか?
自我の問題でもあり、遺伝子の問題でもあり。
久しぶりのSFが大当たりでルンルン。

ロードサイド・クロス 「ロードサイド・クロス」 ジェフリー・ディーヴァー
ディーヴァーは大外れすることなし。
私にとって安心して読める上質な娯楽。

手帳カスタマイズ術 最強の「マイ手帳」を作る58のヒント 「手帳カスタマイズ術 最強の「マイ手帳」を作る58のヒント」舘神龍彦 
手帳の可能性を模索する人のヒントになります。
著者がツイッターで、お声をかけて下さいました。
ありがとうございました。

暮らしを美しくするコツ509 「暮らしを美しくするコツ509」
これ。読んでると癒されます。
日々の生活を愛おしむことは心を健やかにします。

猫にかまけて 「猫にかまけて」 町田康
町田さんの文章、好きです。
猫の話も好きです。幸せな一冊。

春の数えかた (新潮文庫) 「春の数え方」 日高敏隆
自然に親しむ。はて、「自然」とは何か?
生物の世界を見て、人間の「自然」を問う。

クララからの手紙 (トーベ・ヤンソン・コレクション) 「クララからの手紙」 トーベ・ヤンソン
このサラサラとした肌合い。
切り詰めた言葉の持つ空気に憧れます。

君のいない食卓 「君のいない食卓」 川本三郎
食卓。食事じゃなく、食卓。
食べることにまつわる思い出の豊かさに。
羨望と自戒の念が湧いてきます。

犯罪 「犯罪」 フェルディナント・フォン・シーラッハ
これは。これは。興奮。
読んでいて、血が沸き立った!
ミステリではない、犯罪小説集。

普段づかいのかわいいバッグ―作りやすくてかんたん 「普段づかいのかわいいバッグ―作りやすくてかんたん」 くぼでらようこ
わかりやすく、かわいく、実用性もあるバッグ。
いずれは、これを参考に作りますよ〜。

人生論手帖 「人生論手帖」 山口 瞳
こんな風に書けたらいいのに。
・・・とため息をつきながら読みました。
さすが、と唸らされる随筆集。

3色ボールペンで!かんたん、ちょこっとイラスト帖 「3色ボールペンで!かんたん、ちょこっとイラスト帖」坂本奈緒
ちょっとイラストを添える。
それだけで、日々のメモも楽しく。

以下、今月の私のつぶやきです。

関連記事

人生論手帖  山口 瞳

4309016286
河出書房新社
Amazon

古本屋で見つけた本ですが。
まず、なによりも装丁に一目惚れしました。

小泉癸巳男の『東京百景』の中の一枚が使われています。
って、この装丁を見て知った版画家さんなのですけど。
『東京百景』を収録した本があるらしく。
欲しいなぁと思いましたら・・・アマゾンの中古価格¥39,978!

あ、肝腎の内容は。何と言っても。山口さんならではの。
淡々とした辛口トーク。このさりげない毒に憧れます。
なんと鋭い。手厳しい。優しい。

串田孫一氏の思い出話などもチラホラと出てきます。
もしも読む方のために秘密にしておきますが。
向田邦子さんのエピソードにもドキッとしました。

長々と語らない。でも核心をズバッと突くのでもない。
周辺をうろうろしていたようなのに、いつの間にか「着地」してる。

どこに?うーん。うーん。

ええとね。なかなか公けには口にしにくい真実。
だから・・・どうしても「毒」になるのだけど。
その表現というのか、切り口というのか。上手いんだなぁ。

私が同じことを言おうとすると、けんもほろろになっちゃう。
こういう・・・愛嬌と悲哀を滲ませた毒舌。羨ましい。
さらりと口にしてるようだけど。かなりの高等技術ですよねぇ。

著者が身近なことを語った随筆集。
一篇がとても短いけれど。うっとりする美文ではないけれど。
こんな風に書けたらいいなと思う文章がぎっしり詰まっています。

伝えたいことをどう表現するか、と考えた時に。
自分のことを語りながら、もっと大きなことを実は語っている、
それが尊大でもなく、卑屈でもなく、滑稽味を纏っていて。

だから・・・うん。
言い難いことは堂々と言えばいいってもんじゃないのね。
正面切っての発言は一見、格好いいようだけど・・・

かといって。気を遣い過ぎて回りくどくなるほど、
何を言ってるのかわからなくなって、ただイライラさせられる。
勘のいい人には察せられる真意が、ただ反感を呼ぶ結果になる。

山口氏の文章の面白さが、ほろりと苦い。
何気なさを装って。どれだけのものを込めているか。
「書く」苦しみ。「書く」病。書かずにはいられない「業」。

本書の中の「綴り方少年」という一篇の中の一節。
「木山捷平さんは、書くときはヤケクソになって書くといっておられた」

だから私も見習ってヤケクソ、っていうわけには・・・いかない。
ヤケクソへ到達するまでにも、長い長い道のりがあるのだと思います。

(2012.3.30)
随筆というものが、もともと好きです。
日常の、誰の身の上にも起こるようなことが。
胸に迫るほど、心に沁み透るほど、文章で再現できることに。
なんだか、魔法を見せられたような気持ちになります。
当たり前と思っていることの、当たり前でない側面を見せてくれる。
あるいは気づいていたけれど、カタチならずモヤモヤしていたものの、
輪郭を描いてみせてくれる・・・その技量が眩しくて、ちょっと悔しい。



  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

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