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『きことわ』  朝吹真理子

4103284625
新潮社
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美しい日本語、という評判でしたが。
読み始め、しょっぱなから派手に躓く。

この冒頭、印象的・・・ですか? 空っぽでしょ?
嘘臭く、ただの雰囲気、なんちゃってトークでしょ。
響きがいいから、こんなのどうでしょ、的なノリの一節。

読めば読むほど、「キレイ風」な空虚さが際立ってくる。
いや、際立たないほど、つらつらと流れて行く。

メリハリ、ゼロ。山場、なし。それなら流麗で美しいかと言えば。
そう思うには退屈過ぎて、いつまで続くの?と苛立つ。
無駄に全面キラキラして、どこか一点、きらりと光るとこがない。

安手の(でも高級そうに見える)スパンコールを散りばめたドレスのよう。
つまんない。心を打たない。なんか、ぺらぺらしてる。

無駄に多用される、ひらがなの使い方。
「ちらちらとひかりがとりかわる」・・・は? 何ですか、それ?

目指そうとした、雅な柔らかさ、は私には感じられない。
作為の感じられる女らしさが、その媚びがウザイ。
そのくせ、ちっとも本モノの女らしさはない。

育ちの良さゆえの趣味の良さと小物遣いの華やかさ、くらいしか
見るべきものはない。ブルジョワの香りだけは、ホンモノかも。

何の実感もなきゃ、心に残る場面もない。
いかにも、ちょっとここらで沁みるでしょ、的なワザとらしさが目につく。
描かれる人が、誰ものっぺりしてる。表情が無い。

心象風景も、ぺらっぺらに薄い。向こうが透けて見えるほど。
透かして見たところで、またタダの、白いペンキ塗りの壁。

繊細に見せかけて、ところどころ、あり得ぬほどに言葉遣いがぞんざいだ。
雰囲気にのせて、こんな言葉をこの辺に当てはめたらいいかなぁ・・・って。
そんな具合に書いてるのだとしか、思えない。

ええ。たぶん。誰もが言うように、上手いでしょう。器用でしょう。
だけど、この人。何も伝えるべきものを持っていない、と私は思う。
もっと、どうしようもなく下手でも、心に響く文章はいくらでも存在する。

この程度の技術なら、無い方がマシだ。
こんなもので、心のない文章を評価できるのなら、形式の美なんて!
ましてや、上辺の美しさだって、それほどのものでもない。

水で薄めたワインのように、不味かった。ちっとも酔えない。

こんなに空虚なものを堂々と書くくらいならせめて。
その空虚が美学としての力を持つまでに磨きあげねば。

それを著者は目指している? そして今後が期待できる?
私は、そうは、思わない。

(2011.6.3)
ごめんなさい。こんな感想は書きたくなかったのです。
何度も感情を抑えて冷静になろうと努め、何日も考えました。

この作品を読んで、感動された方もいらっしゃるでしょうに。
それは、私は。その人の感受性の美しさだと思います。

むしろ。こんな感想しか抱けない私の感性が鈍いのかもしれません。
ただ何度読み返しても。私の気持ちは変わりませんでした。

読者さんに嫌われても。嘘は書けなくて。
(当初心に湧いた思いはもっと激しく「罵倒」に近いものでした)

私は物語も好きですが。文章も好きです。
どちらも合わせて楽しむこともありますし、別々に味わうこともあります。
この人の文章が美しいというのなら、私は美しい文章が好きじゃないのでしょう。
いえ、私の思う美しさとは全く違うものなのでしょう。

「想い」が伝わってこない文章は嫌だ。
じゃあ、自分はどうなの?伝わるような文章書けるの?と問いながら。

否定的な、負の感情を取り消せない自分に、傷ついていました。
なんだか面倒くさくて、女々しいな、と自嘲しながら・・・。
穏やかに、さらりと釘を刺すような、大人な感想が書きたかった。

それでも、言い切れる。この人には全く期待もしていない、と。
初期の作品に、作家の一番良いところは絶対表れるはずだから。
それを感知しなかった自分の直感を信じている。

心が狭いと言われても。これは理屈では説明できないものなのだ。

ああ、ごめんなさい。どこかで少しは祈っていますよ。
何年か後に今の自分の感想を恥じるくらいの作品を書いてくれることを。

そうじゃなきゃ、芥川賞の名が堕ちるもん(もう大分、傷だらけですが)
今年は西村賢太さんだけにしておけば、納得だったのに。


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彩月さん、こんばんは。

まさに。

「今年は西村賢太さんだけにしておけば、納得だったのに。」

まったく。同感です。
「書く必然」があって初めて作家なのだと思います。

しかし、感心してしまいました。
わたしだったらこんな感想は書けないなあ。

彩月さんの文章からは、想いがしっかり伝わってきます。
2011.06.15 00:24 | URL | ハル #jjURaDtE [edit]
このコメントスペース。
なんかすごい移動の仕方をしますね!
ちょっとびっくり@@;

読書感想文。
派手に書きましたねぇ。
彩月さんの読書感想では。
初めて目にするような率直さ。

だが。
それがいいw

単刀直入そのもので。
感想なんて。
ズバリ言えることが。
大事なんだと思います。

自分の思うホントの事を。
書けない読書人の感想文は。
それは感想文ではなく。
(無味)乾燥文なんだと思いますw^^)/

2011.06.15 00:25 | URL | waravino #- [edit]
言いたい気持ちに嘘はなく、その点、悔いはないのです。
でも、なにも、ここまで執拗に言いつのらなくても・・・とも。

なんかね。読み終わって、怒りで煮えたぎってしまって。
そんなになぜ、熱くなるんだ私!って思いながら。

珍しく、他の人の意見にも耳をかしてみようかと、
よそさまの書評を読み漁るという前代未聞の行動に及び。
(もともとは、人のことは気にしない性格なので)
なのに、褒めてる人に出会うと、またそこに激しく突っ込む自分。

「幸田文を思わせる」なんて批評に出会った日には。
もう、怒り沸騰のあまり、倒れそうになりました(笑)

「書く必然」。結局は、それに尽きますよね。
ありがとうございます。心が救われました・・・。
2011.06.15 00:50 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
コメント欄、私は試してないのですけど。
(当たり前か)・・・・どうなってるのかしら?

派手ですねぇ。やっちゃいましたね(笑)
脳内そのまんまだと、もっと激しかったです。

たまーに。沸騰すると、ずーっと冷めなくなります。
そうですねぇ。私の「率直」はミもフタもないので。
いちおう、常日頃は慎んでおります。

それが出来ない時は、よっぽどな事態です。
ので、いいですよね。たまには。

ええ。嘘は書けませんから。
ただ、あまり一方的なことを書くと、思わぬところで、
人を傷つけることがあるので、それが怖いのです。

でも、私の敬愛するお二方が褒めてくださったので、
それだけでも、十分、書いた甲斐がありました。

褒められるために書いてるのではないですが。
人数に関係なく、想いが伝わったら何より嬉しい。

ありがとうございます・・・。
2011.06.15 01:04 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
本というのは、紙からできます。そしてその紙は、森の木を切ってできます。つまり、ぼくらが日頃 読んでいる本は、森という地球にとってたいせつなものの犠牲の上でできているのです。

だから、本を書く人(それを出版する人)は、その罪を十字架にして、心の森林浴になるようなものを書かなくてはいけないのです。

これは今は亡き開高健氏の言葉です。(文章の形態はこんなではありませんでしたけど)

かつてぼくは物書きを志していましたが、そのときは上の言葉をお守りにして書いたものでした。それは決して楽な作業ではなかったけど、物を書く側の人間の最低限の責任だと思って、くだらないものを書いてしまうたび、悔し涙をこらえながら、その原稿をくしゃくしゃにしてごみ箱に捨てていました。

だからぼくも、くだらない本を読まされると、激しい怒りをおぼえます。それが大きな賞を受けたものなら、なおさらです。

その「きことわ」なる本は読んでいませんが、彩月氷香さんが珍しくそこまで罵倒しているのだから、何となく本のレベルは想像できます。単につまらない本、自分の好みと合わない本、というだけではないのでしょう。

批判記事、書いていいと思います。

ぼくはまだ自分のブログで、本についての批判記事は書いてませんが、「道下森の道具箱」では、はっきりと商品を批判する記事を書いています。今後「道下森の本棚」でも、書くべきだ、と自分が判断したときは、批判記事を書くかもしれません。

本が好きだから、いい本に出逢ったときは「最高!」と評価するし、ムカつく本にぶちあたったときは「最悪」とこき下ろす。

この二つは同じことです。根源には、本に対する愛情と敬意があるのです。

この記事、アリですよ(^_-)

気にする必要はありません。

だけど、書いた後に、ちょっぴり後悔する彩月さんのやさしさにも共感します。またまた彩月氷香さんのファンになりましたよ(^_^;)

長文、失礼しました。

今日も、いい一日を。
2011.06.15 07:09 | URL | 道下 森 #- [edit]
なんともありがたい、お言葉・・・朝から、噛みしめております。

「心の森林浴」・・・良い言葉ですね。
私も「紙=木」という思いが常にあり、紙を無駄に出来なくて。
過去、学校で先生が捨てるという藁半紙を何百枚も持ち帰ったくらい。
(裏を勉強や、下書きに使いました。何年分もありました。)

批判するのは、辛いですね。それを言える能力と立場が、
自らに備わっていると自信が持てない時は、なおさらに。

何よりも、まだ読んでいない人に印象を強く植え付けるのが心苦しい。
出会って、それぞれが自分なりに考え、感じて欲しいと思って。
いつも、断定的には書かないようにと心がけているのです。
ひとつの明確な形にしないで、興味を持ってもらえたらいいな、と。

これじゃ、「余地」ゼロですものね・・・。

おっしゃって下さったとおり、ですね。激しい怒りの出処は。
こんな風に、言葉が使われるのを見たくなくて。
また、それを評価する人がいるということに、絶望を感じて。
日本語って、ここまで衰退しちゃったの?と。

私と似た感想を抱いた人も少なくはないようなので、それが救い。
選考委員は名も功も成した作家かもしれませんが。
だから一般の読者より正しい判断が出来るものではないでしょう。

私が見落とした長所も、あるのだろうとも思っています。
それが掴める人には、違う景色が見えるのかもしれないと。
そう思わないと哀しいです。

そして、やっぱり、ごめんなさいの気持ち。

私の、文章、文学、書物への愛ゆえだとは言っても。
他の読書さんの同じ想いを、傷つけるかもしれないくらい、
強い語調で、まくしたててしまったなぁ・・・と。

私が正しいというわけでは、ありません。
そのことが、ちゃんと伝わることを願っています。

私も長くなりました。良い一日を築くのも、自分の責任かな。
励まして下さった方に感謝しながら、いい一日にしたいです。

ありがとうございます。
2011.06.15 08:23 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
こんちゃ(´∀`)
芥川賞関係は、隠居(例のストーブつける。おっと今日もつけてる)が毎月「文藝春秋」を買っているので読ませてもらえるのですが、ちょっと掴みで失敗してしまい2~3ページで止まっちゃいました(^^;)
でも、芥川賞ってこういう系列が多いですね。
選ぶ人が毎回一緒だからかな。似た感じだな~といつも思ってました。
2011.06.15 09:30 | URL | igaiga #jWiXvKEs [edit]
うん。そうかも。だから、いつもハナから期待もなく。
そもそも、ここ数年受賞作を読みもしなかったのですが。

なんかね。ちょびっと気を惹かれて。ついつい読み。
西村賢太さんは良かったので。それと並ぶくらいなら・・・って。
ここまで怒り狂う自分にも、ちょっと驚きです。

貧乏性で、最後まで読まなきゃソンした気分になるんで。
あと、最初がダメでも段々良くなるかも・・・って思いながら、
耐えつつ読み続ける、無駄なポジティブさがあって(笑)

ご隠居さん、キャラ立ってそうですね。
ウチの社長は自分のことを棚にあげ、つい先ほど、
「街に出ると年寄りばかりで恐ろしい世の中や!」と叫んでました(笑)
2011.06.15 10:00 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
おーー、書いてますねえ、激しく(笑)
彩月さんは文章、本、小説に対する、きりりとした軸を持ってるがゆえに
ここまで真剣に立ち向かって、感想を書けるのだと思いますよ。

でも、最後にちょっと後悔してみたり、優しい愛も垣間見ることができますよ。

私はそういう軸を残念ながら持ち合わせていないので、読む本のレベルに自分を合わせすぎる傾向にあります。彩月さんのようなこういうびしっとした感想を書いてみたいなあと、ちょっとは思いますが、私には無理かな・・・・
多分、私の感想も読んでいただいたとは思いますが、基本、私のモットーはすべての書物に愛を!なので、書けないんですよねえ、びしばしとは。。。。

ドラッカーのマネジメントに書いてあった「真摯さ」
彩月さんの文章には真摯さが感じられますよ。

ぜひぜひ、こんな感じでこれからも書いてくださいな!!
2011.06.16 18:22 | URL | 速読おやじ #- [edit]
なんと、思いやり深い言葉でしょうか。
ありがとうございます・・・。

書くのも、公開するのも辛く感じていた記事ですが。
思いがけず、読者の方々に、いっぱい励まされ。

うん。こういう嬉しいことがあるから続けられる、と。
改めて、しみじみと喜び噛みしめています。

「書く」姿勢についても、考えさせられました。
結構、好評なようなので、いっそうの「きりり路線化」を図る?
いえ、まぁ、そうと意図して出来るものでもなさそうです。

ただ、強く心に思ったことは、弱気にならず、引っ込まず、
もう少し表に出して行こうかな、と考えております。
2011.06.16 21:21 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
ありゃ楽しい。
そんなこともありますよね。
しかしブログで反対意見を書くのはパワーがいりますよね。
ずいぶんしんどかった事、お察しいたします。

他の方が絶賛されている本、勧めてくれた本を、「これはないわー。つまらーーん。」とか絶対書けない(笑)
うん、悩みまくります。

全く同じ感想を抱く必要なないのですが、相手に嫌な思いをさせたくない気持ちにはなりますね。
無理に誉めてしまって、「彩月さん、こんな本好きなんだ」と他の方に思われかねませんし。
その辺り難しいです。

自分の意見を書くことが、読み手の誰かを傷つける可能性がある。
そこを考えすぎると、ブログは自分の言葉ではなくなる。
当たり障りのないことばかりでは、自分のブログではないですし。
その辺りでよく悩んで迷子になります。

もの凄く誤解を招きそうな事を書きたいとき、言葉を選びすぎて、
「ああ、ブログ面倒くせーーー!!」となるときあります(笑)

氷香さんは、いつも十分配慮されている方なので、これ以上の心配大丈夫ですよ。
私のようにもっと毒吐きなはれーー。
2011.06.17 17:09 | URL | ごろちゃん #- [edit]
楽しんで頂けると、救われます~。

いや、なんか結果的に、この記事ってもしかして大好評?(笑)
まいまい様も、「読みたくなった」とおっしゃってくださいましたし。
けなし倒す方が、読書欲も促進する効果があったりして!?

もう。書く前から、鬱っぽくなって数日、グズグズしてました。
なのに書きだしたら、言葉が暴走!

「私はこう思いますが、違う感じ方を否定しません」という、
まぁ説明しなくても当たり前なことを、強調しないと不安・・・。
私って小心者!?いや。そうでもなく。

毒を吐くのに、センスが必要だと思うんです。
ごろちゃん様には、それがあるので。毒に「愛」と「笑い」が見える。
あと、普段のノリに毒っ気が程良く発揮されてる人も大丈夫。

私が毒を吐くと、真正面からガツ―ンと、しかも畳みかけてしまう。
受け手に逃げ場を与えない調子になってしまう傾向が。
程々で切り上げるということが出来ないんですよね。
「愛」から生まれた毒なんですけどねぇ。伝わり辛いかなぁ。

>「ああ、ブログ面倒くせーーー!!」
ははは。最高!わかります、その気持ち!!

毒を吐くことも、慣れてきたら加減がわかるかな~。
うん。やってみよう。名付けて彩月氷香「毒吐き週間」とか。

ありがとうございます。
ブログ主の弱気を励ましてくれる読者さま方がこんなに大勢。
私は幸せ者ですよ~e-420
2011.06.17 23:17 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]


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  • 『きことわ』  朝吹真理子
  • 2011年06月15日 (水)

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