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タルチェフ  モリエール

4003251229
岩波文庫
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詐欺師に振り回される一家。
家族の長たる父が、すっかり騙されて。
おかげで、娘も息子も結婚話が潰れかけ、
それどころか財産全てを巻き上げられる危機に。

何だか、時代と国は違ってもどこかに今もありそうな話。
ただ、家庭の有様や現代とは違って馴染みにくいところも・・・
女中なんて、今は存在しないし。

それにしても。騙される者の姿の、哀れを通り越した滑稽さは、
残酷なほど見事に生き生きと描写されている。

家族中が、父の目を覚まそうと奮闘する様が楽しい。
いや・・・少なからず、父のアホさ加減に呆れかえる。

思うに。騙される人間は思考回路が単純だ。
単純なだけなら、正しい方向へ向き直ることも簡単なのだが、
往々にして単純な人間は頑固でもあって。
一度、思いこむと考えを改めるのに、とんでもなく手間がかかる。

台詞のみで物語を成り立たなければならぬ形式ゆえの宿命なのか、
戯曲の登場人物は、非常識なまでに多弁である場合が多いが
この作品でもその例に漏れず、誰もが立て板に水のごとく喋る。

その弁論能力の高さ、比喩表現の多彩さに少々圧倒される。
おおお。こんな風に話せるなら、あなたも詐欺師になれますよ!
・・・などと、不謹慎な感想を抱いてしまうくらい。

これはモリエールの文才は当然として。
当時の民衆はこのくらいの会話が出来たのだろうか?
(そんなわけはない、と思うのだが・・・そうでもない?)

なんでもかんでも「可愛い」で表現してしまう風潮にも。
すっかり馴染みつつある現代に暮らす私は憧れすら抱いてしまう。

飾り立てた言葉がむしろ胡散臭いのも事実だけれど。
華麗な言葉遣いというのは、立派な芸術だと再確認させられる。

何よりも。モリエールの人間観察の鋭さは、時代や風俗の違いも越えて、
「騙す」「騙される」という、今も変わらず繰り返される営みに潜む、
人間の心理の綾と、そこに潜む我欲の応酬を鮮やかに浮かび上がらせている。

詐欺師になろうとは、ゆめゆめ思わないとは言え。
自分が騙す側にまわることも、騙される側にまわることも。
ごくごく小さな事象では、誰もが経験があるのではないだろうか。

それは個々によって少しずつ異なる、その人の弱点を知らしめるものでもある。
・・・と、そんなことをつらつらと考えさせられた一冊でした。

(2011.10.22)
すっかり頓挫(計画倒れ?)していますが。
秋は「哲学」と「文学」を読もう!と意気込んでいた私。
そういえば、モリエールって読んでない・・・と気付いて読んでみました。
冒頭は登場人物が混みあって面倒に感じましたが。
たいへん面白くて、一気に読めてしまいました。
一つ言えば、結末が不満。ううう、そんな大団円じゃなくていいのでは・・・。


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時々、写真や雑記も。

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  • タルチェフ  モリエール
  • 2011年11月10日 (木)

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