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46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生  ロバート・カーソン

4757150601
エヌティティ出版
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3歳の時に視力を失った男が46歳にして、手術により視力を回復する。
副題にある通り、まさに奇跡の物語(実話)だ。

が。見えるようになったら世界が広がる、出来ることが増える・・・と、
単純に考えるのは、もともと目が見えていた者の思い上がりで。

ずっと見えなかった者にとっての「視力」は、
健常者にとっての「超能力」ほどに、必要を越えた制御不能の能力なのだ。

人間は「眼」だけで物を見るのではない、「脳」で物を見る。
だから。目の機能が回復しても、正常に物を見ることが出来ない。

人の顔を認識できないし、男女の区別も目で理解できないし。
奥行きというものが認識できないため、物の形を捉えられなかったりする。

これは、凄まじいストレスになる。
健常者が無意識でやっている、スキャン的な作業を全て、
意識して自発的にやらないといけなくなるのだ。

そうでないと、ただ意味不明な画像が面前を流れていくだけ。
猛スピードで。休みなく。色と形の氾濫が・・・
そりゃ、目がまわる、神経が疲弊する。

視力を回復したことで心を病んだ人の症例の数々・・・哀しいけれど。
それも無理はないことだと思える。

本書の主人公マイクにも、その危機は訪れる。
それを乗り越えていく姿に、打たれない人はいないだろうと思う。

そもそも。手術を受ける選択が。非常に勇気のいることだった。
シクロスポリン(発癌を誘発する強い副作用を持つ薬)の長期服用。
成功率が50%、定着せず再び視力を失う可能性も充分にある。

しかも。マイクは目が見えなくても充実した人生を送っていた。
視力のないことが彼のスタイルである、とすら言えるほど。
「カッコいい」「自立した」盲人だったのだ。

悩みに悩んだ末、彼は手術を受けるという選択をする。
「見えるようになりたい」からではなく、
『見る』とはどういうことかを知るために。
知らないことを知る、そのチャンスを逃さないために。

前向き、怖い物知らずを絵に描いたような彼だけれど。
「目が見えないと怖いことばかりなのに、なぜそんなに自信に満ちているのか?」
と、子どもたちに問われた時、うまく言葉にして答えられなかった。

それをきっかけに、自分という人間を特徴づけている要素について考えた彼は。
4つのキーワードを発見する。それは母が彼に授けたとも言える生き方だった。

◆冒険しろ
◆好奇心を大切にしろ
◆転んだり、道に迷ったりすることを恐れるな
◆道は必ず開ける


「この四つのことを忘れなければ、きっとうまくいく」と、
子どもたちに教え、彼自身ずっと、それを守って生きてきた。
そして、この「信念」が彼を支え、導き続けているのだった。

で。ふと私には、このような信念があるだろうか?と考えて。
思い浮かんでこなかったので、しゅんとする。

「信念」に関してツイッターでつぶやいたら。こんな返事をもらった。

心が折れそうになった自分を救ってくれたのは信念に従って生きるということでした。自分から何もかも取り去ったときに心の奥底で唯一光っているのが本当の信念かと・・・

そうなんだよなぁ。信念って。そういうもんなんだよなぁ・・・・
重大な危機に面した時、道を決めるのは「信念」しかないと思うのだ、やはり。

選んだ道を後悔するとしたら。それは自らの信念に背いた時だ。
決して。失敗した時ではない。上手く行かなかった時ではない。

そうは言っても、躓く可能性の高い道を進むのは怖い・・・のが人間。
そんな場面で、自分を信じて進む力を与えてくれる「信念」。

・・・持ちたいな。私も。

いや。ある。あるけど・・・隅っこに追いやられてるから。
何とか、手をひっぱって、舞台の中央に連れて来なくちゃ。

と、まぁ。「信念」復活(?)の意欲を呼び覚ましてくれた本でした。

(2012.1.18)
人間にとって「視る」ということは、いったいどういう意味を持つか、
ということも、随分と考えさせられます。
マイクが初めて世界を見た時の描写が、素晴らしいです。
「視る」喜びに感染して、目の前がぱっと開けて・・・色が躍って。
自分の生きている世界の豊かさと醜さに改めて、鮮烈に出会う感じで。



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  • 2012年01月21日 (土)

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