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時間割  ミシェル・ビュトール

Posted by 彩月氷香 on 17.2012 その他 翻訳文学   0 comments   0 trackback
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河出文庫
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主人公は、ひたすら混迷の薄闇を漂い続ける。
ブレストン、という架空の陰鬱な街に滞在し、
常に憎しみを持って、その街に対峙しながら。

異邦人の彼は、馴染めぬ土地、馴染めぬ人々を
自分の混乱した意識の中で、神話や推理小説にダブらせ、
一層、激しく混濁させて行く。

時は、何層にも絡み合う。
幾度も繰り返される嘆き、韜晦、恨み、祈り。

苛立たしい程の緻密さと執拗さ。
繊細に華やかに描写される街の風景。

主人公は、何もかも「ブレストン」のせいにするが。
街の呪いはそんなにも強大なものだろうか?

自らが内包していたものを、憂鬱な都市での生活が
明るみに引き出しただけのことに思える。

いや。もちろん、彼もそれは承知だろう。
だからこそ、街を憎んでいる。そこに魅惑の光も感じながら。

自らを救い出そうと主人公が試みたのが、記憶を記すこと。
過去の場面を、自らの感情を、執拗に克明に綴り続ける。

そこへ、綴っている時点の出来事の記録も混じって、
この小説は、極めて複雑な多層構造になっている。

皮肉にも、その「書く」行為が彼を更に深く迷わせるのだ。
人の意識はまさにこのようなもの、と思わせる・・・
ぐるぐると旋回して方向を見失いつつ、暗い熱情に捕われて。

逃げたい対象へと急激に接近し、近づき過ぎて見えなくなり、
求めているはずのものからは目を逸らし、背をそむけ続け、
自ら遠ざけておきながら、死ぬほど後悔する。

これを愚かと笑えぬ姿が、鏡を見れば映っている。

(2012.3.17)

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  • 2012年03月17日 (土)

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