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『人類の子供たち』P・D・ジェイムズ

ハヤカワ・ミステリ文庫
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苺を一粒口の中に落としたザンは、身体をひねって、ワインに手を伸ばした。
「イヴリン・ウォーの『ブライズヘッド再び』そのままじゃないか。テディ・ベアが必要だぞ、これは」

好きな小説の中の印象深いシーンが登場して、ほくそ笑んだ。
しかし後は、暗く重たく、地を這う足取りで物語は進んでゆく。

「罪悪感を抱くことは、人間であることの一部なのよ。
 そのことに気づかなかったとでもいうの?」
・・・主人公セオに向けられた台詞が、我が身にも響く。

P・D・ジェイムズは痛切に、人間存在の根源にある深い闇を描き出す。
簡潔な筆致とシニカルなウィットで。

孤独と隣りあった生活の風景の描写の、
端正な物哀しさに、私はいつも、惹かれる。
彼女の描く人物は強い。
その強さのために押しつぶした諸々の感情とともに、
自己をたゆまず見つめて生きている。

(2000.2.22)
この作品はミステリではない。
P・D・ジェイムズの意欲作というか、実験的作品というか。
こういうタイプの小説は苦手な人も多いかもしれない。
気分が落ち込んでいる時の方が、読みやすい本だと思う。


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時々、写真や雑記も。

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  • 『人類の子供たち』P・D・ジェイムズ
  • 2010年04月09日 (金)

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