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海炭市叙景  佐藤泰志

4094085564
小学館文庫
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衰退していく海辺の町を描いた群像小説。

見そびれたけれど、近年映画化されていて。
そのイメージから、陰鬱で救いのない物語を思い描いていた。

明るい、とは言えない。
幸せそう、には見えない。
共感を覚えるとは、認めたくない。

閉塞感に満ちた日々を生きる人々に、
その心の底にまだら模様を描く影に、
しかし明らかに、見覚えがある。

「絶望」と呼ぶべき暗い影が
淡く光を放っているように感じるのは何故だろう?

影は光のないところには生まれない。
しかし光が弱々しければ、影の姿も薄れる。
輪郭がぼやけていても、それは絶望の浅さを意味しない。

重い題材に関わらず、淡々と平穏にさえ見えるのは。
照らす光が足りなくて。影がくっきりとは浮かび上がらなくて。
光と影が解け合ったかのように近くにあるから・・・

たぶん。その気配が「親しい」のだ。
静かに発光する、希望と絶望の姿が。
そのどちらもが、孤独を背負っていることが。

(2012.4.8)
実はこの作品は著者の遺作であり、未完の小説。
村上春樹と同世代で、幾度も芥川賞候補になるが受賞に至らず、
四十一の若さで妻子を残して自死してしまった。
「海炭市」は架空の町だが、彼の故郷の函館がモデルとなっている。
丹念に描写された18名。他にどんな住民を彼は描くつもりだったのだろう。


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  • 海炭市叙景  佐藤泰志
  • 2012年04月25日 (水)

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