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重耳(下) 宮城谷 昌光

Posted by 彩月氷香 on 13.2012 宮城谷 昌光   4 comments   1 trackback
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講談社文庫
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重耳(ちょうじ)というのは、主人公の名前。
十九年に及ぶ亡命生活の後に晋の君主となり、
「春秋五覇」の一人となった人物(文公とも呼ばれます)。

「春秋五覇」というのは中国の春秋時代に、
周王朝に代わって天下の事を取り仕切った覇者5人のこと。

しかしですね。覇者になりそうもない人生なワケです。
血筋もそうだし、継承順から言ってもそうだし、
そもそも覇者になるべき人格が備わっているようでもない。

至って冴えない、どこか魯鈍な男として彼は登場します。
いえ。登場するまでが長い。物語の流れは悠然たるもの。

重耳の祖父・称に関するだけでも小説が完成しそうな勢い。
この称という人は、いかにも一国の主という風格の魅力ある男。
しかし、その息子(重耳の父)の代から国は荒れていく。

他国から嫁した女が、父と子の絆も断ち切ってしまう。
もともと兄弟は、助け合う存在ではなく、蹴落とし合う間柄。
重耳が覇者となることは、はなから明示されて物語は進むのに。
いつまで絶っても、彼は辺境を彷徨う亡国の公子である。

重耳自身より、彼を支え続けた家臣たちが主役にも思える。
名君というのは、優秀な家臣が作り上げるものなのかもしれない。

なんと言っても。ちょっとガッカリするくらいに平凡な男。
才気もないし、努力家というほどでもなく、志も高くない。
ただ・・・素直。大らか。気性に歪みがなく。不思議な安定感がある。

こういう人だからこそ、家臣は懸命に仕えたのだろう。

それにしても。人がよく死ぬ・・・国々の栄枯盛衰の中で。
一つの視点から観れば、それはただの時の流れ、歴史の移り変わりだが。
どうにも私は、代わる代わる滅びる者の運命に同調してうろたえる。

ああ。だから歴史を描いたものが苦手なのか。
生き延びた者より、破滅した者に心を寄せてしまうから。
覇者たる者が葬る人々、国と共に自らも滅せられるように感じるから。
それが幾度も繰り返される月日の流れに、くたびれてしまうから。

去る者の方が心に残るのは何故なのだろう。

(2012.4.20)
家臣達の個性が際立っていて、それぞれの心模様の描き方が鮮やかで、
民族の違いが印象的で。遥か遠い時代の空気が色濃く立ち上ってきます。
中国の大地の広さを、地図ではなく人民の多様性から体感させられます。

<追記>
手元に本がない状態で。ひと月近く前に読んだ本について書く、
という・・・、無謀な行為の結果だということを念頭に置いて頂いて。
あまり参考にならない感想であることはお目こぼしくださいますように。


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こんばんは。
なるほど。消えゆく人々に歴史の儚さを感じ、その無情なまでの繰り返しにくたびれを感じるということ、わかる気がします。
嫌いじゃないけど、いやいや読んでしまう、同じパターンの小説を書く作家みたいなところはありますよね。
ぼくは歴史学科を出ているせいもあって、そういう繰り返しの、ほんの小さな進歩に希望を見出してしまう、なんとも作者の思うツボな人間なのですが、消えて行く人間に悲しみを覚えて、歴史なんて、と思うところもある、ダメな元史学科生です。
2012.05.13 21:11 | URL | #JyN/eAqk [edit]
う~ん、なるほど!
私も「戦い」というものがものすごく苦手なんです。
歴史小説では、歴史の大きなうねりの中では個人の命なんて
ちっぽけなものになってしまうので
そういうところがなじめないのかもしれません。
歴史を動かす支配者に感情移入できなくて、
虐げられる民衆気分になっちゃうんですよね。

それに21世紀の人間が考えた紀元前の人とか
やっぱりウソに思えちゃうというのが正直なところかも。
(歴史小説ファンの方には申し訳ないけれど)
変なコメントで申し訳ありません。

でもこういう読まず嫌いで、
もの凄く損をしているような気もしています。
一念発起して、宮城谷昌光さんに挑戦してみようかな。
2012.05.13 22:44 | URL | まいまい #JyN/eAqk [edit]
繰り返しの中の、ほんの小さな進歩に希望を見出す、というのは。
うん。そう。それも確かにありますね。希望と虚無感が交互にやってきて。
それは人間について書いているものは歴史に限らず、同じなんですが。

歴史の基礎知識があると、違うかなぁとも思うんですよ。
著者が作品で提示するものに、自己の知識を照らし合わせて、
思い巡らす余裕があれば、もっと楽しんで読めそうな気がします。

慧さま、史学科出身だったのですねぇ。
歴史をきちんと学んでいると、何を読むにしても心強いですね。

著者の狙いに気付くこともないまま振りまわされるのと、
その意図するものと手法に気付きながらも惹きこまれていくのと、
この違いは凄く大きいな・・・という気がします。
2012.05.14 10:05 | URL | 彩月氷香 #- [edit]
そうなんですよね。
「戦い」の連続なので読んでいて疲れてしまいます。
千でもなく、万でもなく、十万、百万、という桁なので。
命の重さが軽く見えてきてしまいます。

歴史を動かす支配者にも感情移入できない上に、
虐げられ過ぎている民衆にも、実は共感しづらくて。
主君に仕える家臣の忠誠ぶりも、理解できなかったりする。

私の気質のせいもあるのかなぁ・・・と思ったりします。
支配したくもないし、支配されたくもない・・・っていう。

ええ。私も、思うんですよ。
そんなこと言ったり考えたり、してた?ウソでしょう?って。
フィクションならば、突飛でも違和感がないのだけれど。
史実と創作が合わさると、何だかモゾモゾしてしまう。

ただ、欲ばりな性格なので。
歴史小説の面白さがわからないと損してる気がしちゃって(笑)

宮城谷さんなら、「重耳」より「太公望」の方が読みやすいかも。
「王家の風日」も良かったです。この3つしか読んでないんですが。
2012.05.14 10:24 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 2012年05月13日 (日)

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