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青眉抄その後  上村松園

4763085220青眉抄その後
上村 松園
求竜堂
Amazon
(絶版のため、画像なし)

上村松園の絵を「着物姿の美人ばかりで退屈」と。
そんな風に思っていた若い頃もあった。

実物を見たときに、女性の美しさはもちろんのこと、
その周囲を取り巻いている凛とした空気に魅了された。

静かで、強い。弾き飛ばされるほどに。
けれども、吸い込まれるような優美さも兼ね備えている。

自らの描きたいものを、よくよくわかっている人だ。
彼女の描く美女が退屈なんて、とんでもない。
静謐で細やかな画風の中に、ひしと込められた気迫。

松園が随筆を残しているとは何故か思ってもみなかった。

註:本当は、私が読みたかったのは「青眉抄」という随筆集。
  (本書は、「その後」とつくとおり、後発のもの)

ともかく。全編、心洗われるような清々しさに満ちている。

彼女はひたすらに描いた。自分が美しいと思うものを描いた。
大げさでも何でもなく、それが彼女の生きる道だった。
ひとかどの芸術家なら、当たり前のことではあるけれど。

松園の生きた時代に、しかも女性として。
そのことに思いを致すと、誠に非凡な心構えだと思う。

彼女の想う「美」には揺るぎがない。
それが、この随筆集を読んでいるとよくわかる。
ひいては、その信念が彼女の画の魅力の理由のひとつであることも。

「沁み入るような気品が、優しくも厳しくも感じられる」

彼女の絵の印象をひとことに表すと概ね、このようになるが。
紡がれた言葉の中にも、同様のものを感じる。

広げれば広げるほど、薄まっていくのとは対照的に。
狭く囲った空間ゆえに、濃密に凝縮されている・・・

箱庭のように、小さい中に宇宙がある。
狭いからこそ、無限に広い。限定されることで細部まで行き届いている。

大きく大きく、広く広くという方面ばかりに意識が向くと、
どんどん、どんどん、粗雑にならざるを得ないのだと改めて知らされる。

なかでも、強く共感したのは。
「苦楽」と題された章で語られる「苦しみを楽しむ」という言葉。

画を描くことが苦しくないわけがない。
苦しみなくしてどうにか満足しえる作品が生まれようがない。
しかし楽しんで作らないでは、画はその作家を裏切るだろう。

苦しみを楽しむということは矛盾しない、そしてそれは、
画をつくることにおいて、真の作家として、制作上の第一条件。

(本文が長過ぎるので、勝手ながら要約しました)

画でなくとも、そしてそれが仕事でなくても、
「作る」という行為のすべてに当てはまる言葉だと思う。

もちろん、「書く」ということに関しても。

(2012.9.22)
本書に貼った付箋の数・・・36枚。
上村松園全随筆集 青眉抄・青眉抄その後
上村松園全随筆集 青眉抄・青眉抄その後
この本なら、今も購入できます。少々高価ですが。
近々買い求める心づもりにしています。


関連記事

こんにちは。

拝読しながらいろんな思いや感情が湧き起こってきています。

上村松園の絵は、昔、美術館で見たことがあります。
着物姿の美人ばっかり、なにが面白いの、と
若かった私もそう思いながら、友人に誘われて行ったのです。
とんでもないことでした。

「画を描くことが苦しくないわけがない。
苦しみなくしてどうにか満足しえる作品が生まれようがない。
しかし楽しんで作らないでは、画はその作家を裏切るだろう」

今日はこの言葉をいただいて帰ります。
書くこと、つくること、つまり自分自身を生きるということを
自らに問いましょう。

この随筆、その後でないものも、読んでみたいと思います。
よい記事をありがとう^^
2012.09.27 10:21 | URL | ハル #jjURaDtE [edit]
松園の語る言葉には、とても教えられることが多くて。
その語りの口調も、切り捨てるでもないけれど、おもねらず。
恬淡としているようで、でも溜めたものが感じられて。
潔い覚悟、と言ってしまえば簡単にすぎるのですが。

「青眉」というのは昔の風習で、眉を剃り落とすこと。
松園の母の「青眉」は、非常に美しかったそうです。

そのことを語った文章をNHKの番組で取り上げていて。
おかげで、この本の存在を知ることが出来ました。
(ですが肝腎のその箇所はこちらには収められていません)

「苦しみを楽しむ」・・・ああ、そうなんだ、と。
そういう時間を過ごせることもあったなぁ・・・と。

松園がいかにして、あれだけの画業をなしたか・・・
本人の淡々と語る言葉からずっしりと響いてきました。
聞き書きもあるらしいのですが、生粋の京女らしい、
何とも、はんなりとした(しかし芯の強い)言葉です。

最後に紹介した新刊には「青眉抄」と「青眉抄その後」が
合わせて収録されているようです。

あとは、古本・・・単行本は高値ですし。
文庫はまだ手頃ですが・・・。
運良く町の古本屋で頃合いのものに出会えたりしないかしら。
図書館には「青眉抄その後」はあり、「青眉抄」が無かったのです。

今、どうやって、どの本を手に入れるか思案中。
新刊の装丁が気に入れば求めてもいいのですけれど・・・。
(昔の装丁が奥ゆかしい感じで好きなのです)

「良いものを読んだ」と思う時、誰かと分かちあいたく感じます。
「苦しみを楽しむ」の箇所で、ふとハルさまを思ってしまいました。

いささか図々しい想いを受けとめて頂き、有難うございますv-22
2012.09.27 11:52 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 青眉抄その後  上村松園
  • 2012年09月26日 (水)

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