Loading…

アイルランド・ストーリーズ  ウィリアム・トレヴァー

Posted by 彩月氷香 on 27.2012 ウィリアム・トレヴァー   2 comments   0 trackback
4336052883

国書刊行会
Amazon

12編の短編。
明るいとは言えない。暗いとも言えない。
ポジティブではない。ネガティブでもない。

敢えて言うなら、諦念や諦観が近いかもしれない。
でも、そう名付けるには不適当なしぶとさを感じる。

アイルランド人の国民性?

作風を国と結びつけて考えたことはあまり無いけれど。
風土が作品に影響しないなんてあるはずもなく。

こじれた、決して晴れやかではない歴史の痕は、
どの物語にも重苦しい影を落としている。

自らが背負ったものを常に意識しながら、
正面から見ようとはしない・・・その姿勢を。
逃げていると言える強さを持つ人にはきっとわからない。

乗り越えられないものと共存して生きる強かな弱さ。
時が流れて風化しても、また繰り返し鮮明に甦る傷跡。
耐えることも習慣になった日々に宿る歪な自己愛。

消えないのか、消さないのか、消せないのか。

いつも曇り空のイメージのアイルランド。
気候だけなら隣国のイギリスもそう変わりはないはずで。
でも。もっと重たく灰色の空が広がっているように感じる。

昔。イギリスを旅行した時。
アイルランドに住んでいる日本人の女の子に出会った。
彼女がイギリスでなくアイルランドに惹かれたわけが、
今になって、なんとなくわかるような気がする・・・

名前も忘れてしまったけれど。
彼女の目を見ると暗い森のようだと感じたことを思い出す。
頭上に重い雲が広がって影を落としているような表情をしていた。

それは、哀しげであるとか、不幸せそうというのとは違う。
曇り空を、彼女は厭うているようには思えなかったから。

婚約者と別れていなければ、今はアイルランド人なのかも。
それとも、案外日本に帰って来ているのだろうか。

(2012.11.17)
鴻巣友季子さんのエッセイ「全身翻訳家」のおかげで出会えた本。
どうやら彼女の本の好みは、私と相性が良いようです。
この作家をもっと読みたい。幸い翻訳作品がたくさんありました。

関連記事

国民性と作風、あるでしょうね。音楽も…。
アイルランド→U2わかる気がします。
今回のレビューを読んでいて、1988年のサントリーCMに使われた
ブラックというバンドの「ワンダフルライフ」という曲を思い出しました。
調べてみたら、ボーカルはリヴァプール生まれのColin Vearncombeという人。
19世紀末にリヴァプールにもアイルランドから多くの移民があったらしい。
彩月氷香さんのレビューを読みながら、
you tubeで久々に聞いてアイルランドの情景に思いをはせてみました。
http://www.youtube.com/watch?v=P7bN5tXghnE

2012.11.29 12:59 | URL | バンコラン #JyN/eAqk [edit]
いいですねぇ・・・ありがとうございます。

この曲。聴きいってしまいました。聞き覚えあります。
CMが流れてた頃の自分がもう思い出せないですけど。
ヴォーカルの声の感じ、アイルランドの曇り空に似合いますね。
CDも探したら、あるんですね。買おうかな。

こうして、違う分野に広がる記憶や出会いは嬉しいです。
2012.11.29 18:21 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://raffiner.blog70.fc2.com/tb.php/1745-008e3daa

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

<別館のご案内>
Instagram
99%、花の写真です。

moleskine絵日記
ちいさな絵日記。

表示中の記事

  • アイルランド・ストーリーズ  ウィリアム・トレヴァー
  • 2012年11月27日 (火)

カテゴリ

最新コメント

データ取得中...

月別アーカイブ

***