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『遠い朝の本たち』須賀敦子

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ちくま文庫
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本書は、須賀さんの読書の思い出を語ったエッセイ。
今まで彼女の本を結構読んでいる私には、馴染みのあるエピソードもちらほら。

しかし、なんて、気持ちのよい文章だろう。
何も、特別なことは語っていないし、特徴のある文章とも思われないのに、
読んでいると、静かに心が浮き立ってくる。

彼女の、イタリア滞在時代の随筆は、もう少し、否、だいぶん、
重苦しい空気に染められている。
その、陰鬱な印象と異国の香りの混ざった色調が魅力ではあるのだけど。

この本の、幼少期、女学生時代の思い出を語った文章は、
優しく、やわらかな光に満ちている。
わけもなく、ぴょんぴょん跳ねたくなるような、
なんだか嬉しいプレゼントをもらった子供のきもちになるような、
読んでいて幼いくらいの素直さを自分に発見できるような、

・・・ああ、ああ、ほんとうに、すてき。

時代は違うが、私も彼女と同様、キリスト教系の女学校へ通った。
祖母はクリスチャンだったし、彼女の親友が修道院に入ったのに似て、
私の親友は牧師と結婚したのだ。

だから何、っていうと。
読んでる本や、その周りの情景が、かなり、共通していて。
なんとも言えない、懐かしい空気が漂っている。

学生時代を振り返ることが嫌いな私なのだけど、
思いがけず、楽しい思い出が幾つか甦って、頬が緩んだ。

私の作文や、感想文をいつも褒めてくれる先生がいて、
よそのクラスでまで、私の文を読みあげては大絶賛するので、
おもはゆい嬉しさと、それを上回る恥ずかしさと、
いい加減なものが書けないというプレッシャーとで
じたばた、していたことを、思いだした。

一番、最初に私の文を褒めたときに、
「あなた、詩を書くでしょう!」と断定的に言われて、
反射的に否定したのだったっけ。
ほんとうは、詩人になるつもりがあるくらいだった私は、
ものすごく、どきっと、したのだ。

若くはないのに、なんとも颯爽とした、ちょっと男装の麗人っぽい、
すらりとカッコいい先生。歌うように、のびやかな大きな声で、
耳にとても心地よい話し方をする人だった。

私の勝手な追憶はさておき。
須賀女史の文章の魅力は、たぶん、誰にでも伝わると思う。
とくにこの本は、彼女が大好きだった「読書」を語っているせいか、
伸び伸びと穏やかで、読みやすい。

読後、まだ、しあわせな余韻が、ふわふわと身を包んでいる。

(2010.5.15)
関連記事

参りましたね…彩月氷香さんのところにくると、なかなか帰れない(笑

須賀敦子さん、私にとってちょっと特別な存在なのです。
大好きです。

実は私も、須賀敦子さんの文章を読んでいると、自分と重なるものを感じます。

彩月氷香さんと、とっても似てるかも。

高校時代、シェンキェヴィチの「クオ・バディス」の授業っていうのがありました@(あ、須賀さんとは関係なかった~)


2010.08.25 22:13 | URL | はーちゃん #JyN/eAqk [edit]
はーちゃん様がコメント残して下さる本がいつも、私の「特別」ばかりなので、嬉しいドキドキを感じます。そうしてみると、やはり人って、自然と自分の「必要」としているものを与えてくれる本に導かれていくものなのかなぁと思ったりします。あ、本に限らないんですけど。

私の場合、自分と真逆なもの(苦手なもの)に敢えて突進していくM気質(笑)なところがあって、やたら脱線してるような気がしますけれども。

シェンキェヴィチの「クオ・バディス」の授業、とは!重いですねぇ。
私の高校は「宗教」って授業がありました。
でも、「宗教」イコール「キリスト教」っていう考えが凄いですよね。
仏教もイスラム教もヒンズー教もその他諸々、完全に無視なんです。
ええ、中身はキリスト教の勉強だけ。ユダヤ教も予備知識的には習いましたけど(汗)
2010.08.25 23:25 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 『遠い朝の本たち』須賀敦子
  • 2010年05月15日 (土)

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