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マカロニの穴のなぞ   原 研哉

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原 研哉
朝日新聞社
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 そこで、ファッションデザイナーの方々にお願いしたいのだが、お腹の出たおじさんがプールでかっこよく見える水着、とか、痩せた人にはサマにならないゆったりしたスーツ、などというものをぜひ流行の先端でデザインしていただきたい。

 普通に暮らしていても、ある年齢になると太ってくる。これは人間の体の中に、そういう設計図があるからだと僕は思う。もちらん太り過ぎは危険だが、ちょっとお腹が出るくらいでおじさんは正解ではないか。

「ファッションは人生の芸術である」と言われる。鏡に映った自分をしげしげと見ると、人生の芸術も一筋縄ではいかないことがよく分かるが、一方で僕はその言葉を大吉のおみくじをそっと財布に忍ばせるように、大切に心の引き出しにしまっていたりもする。

 優れたデザイナーたちが才能の粋をつくして生み出した衣服を身にまとうには、それに対峙する人間の側のスケールや輝きが必要である。その輝きは新品よりアンティークの方がいいという考え方もあろう。

 元来、なんらかの歪みを持って生まれてくるのが人間であり、その歪みを自分自身で把握しながら、それが光るように磨いて磨いて人は仕上がっていく。だから標準をめざして整形したり、シェイプアップに励むのはファッションの本質から遠いはずだ。真摯に生きた結果、他にかえがたい独自性として自分を感じられるひそやかな自信がファッションデザイナーの奔放な創造性をわが身に引き受けるパワーになるのではないか。

 要するにお腹くらい少々出ても、おじさんには先端の服を着る気概はある。しかしどうも流行の服は若者の体型を基準にしすぎていて物理的にフィットしない。そこで先ほどのお願いである。

 特に個人名を冠したファッションブランドは当人が健在のうちに二世を誕生させて若返りをはかったりしないで、そのデザイナーの一生とともに歩んでほしい。ひとりのデザイナーの、若さも過激さも、成熟も老いも、貴重な創造の資源ではないか。人生を通して、僕らはそういうものと対話を続けたいのである。

共感した文章を一つ、丸々引用させて頂きました。
(あ、読みやすいように改行しています・・・)

これだけではナンなので。あとは、ツイッターにつぶやいた感想。

原 研哉『マカロニの穴のなぞ』小さな可愛らしい本。私、どうやらデザイナーや建築家や陶芸家の書いたエッセイが大好物なようで。原さんの著作も以前読んだ『デザインのデザイン』がすごく良かった。これは気軽に読めちゃう本。なんと、15分で読めちゃった・・・でも楽しく嬉しい本でした。

「エレガントというものは懸命に努力して最高に良い状態を目指してもそこには決して生まれてこない。むしろ自分の美点や長所を知りぬいた上であえてそれを抑制するか、あるいはちょっぴり破たんを加えてやるくらいの姿勢から生まれてくるのである」・・・原研哉『マカロニの穴のなぞ』より。同感。

あと、うんうん、うんうんと首がちぎれる程うなづいたのは。「文字や文字群をどう配すべきかという、いわゆる「レイアウト」の作業はこれまではプロの仕事だった。しかし今日、コンピューターソフトの登場で、素人が簡単にこれに触れるようになって、文字たちは少々行儀が悪くなった。」ってところ。

すごく気になるのだ、文字のレイアウトが。年々、目に心地悪い行間やら、天地の空き具合によく出会う。もぞもぞする。気持ち悪い。疲れる。だけど、私自身も素人なので、どこが悪いのかはわからない。ただ、バランスがどうしようもなく悪いということだけは、わかるのだ。

「また、文字の大きさやその間隔、そして行間などを吟味して、凛とした緊張感や風格をそこに生み出してきたのが「組版」という技術である。(中略)基本は文字の大きさと字間と行間。文字あしらいの奥義はこれに尽きるようで、欧米のグラフィックデザイナーはここを徹底的に鍛えられる。」うん、うん。

書く文字だけでなく、印刷の文字にも、心遣いが欲しいよね。美しく、読みやすく。読み手の気持ちを汲んで。そのために技術も経験も必要で。原研哉さんはこの一篇のエッセイに「文字を“生ける”作法」という題をつけられていて。ああ、良い言葉だな、と思った。

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  • 2014年03月09日 (日)

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