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物語ること、生きること  上橋菜穂子 瀧 晴巳

4062185687
講談社
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連名になっているのが、不思議だったんですけれど。
この本、聞き書きだったんですね。
それに関して、著者はこのように語っています。

 自伝ではなく、聞き取りならば、そこに現れてくるのは「自分が思い込んでいる自分」ではなく、「人から見えている私の姿」___読者が知りたい、と思って下さっている私の姿だろう。それならば、もしかすると、本にする意味があるかもしれない、と思えてきたのです。

ちなみに、本書は基本的に。
作家になりたい子供たちに向けて語る・・・という内容です。

「こうすればなれます」とか、「こうしましょう」ではなく。
わたしは、たまたまこうして作家になりました・・・と。
あ、言葉が悪いな。なりたかったけど、なれると思ってなくて。
でもなりたくて・・・という葛藤を乗り越えて、なれました、と。

著者の紹介を見ると大学の教授(しかも文化人類学)とあって。
私、ずーっと。教授が小説を書いたら売れちゃった?
へぇぇ。頭良くて、器用な人なんだなって思ってました。

違うんですね・・・。
この本の中で、上橋さんが号泣するシーンがあるのですが。
その時の心情を語った言葉にたいへん、共感しました。
ここには「親に迷惑をかけ続けられない」という想いが含まれています。

小説もダメで、研究者の夢もあきらめなきゃならないとしたら、私は、この先どうしたらいいのだろう。

とても彼女の人柄や悩みや挫折感に親近感を感じます。
一方で、ああやっぱりなと思わされる彼女の個性といえば。
ある種の潔癖さをはらむ強い正義感だと思います。
これは・・・私には全くと言っていいほど無いものです。

「私って、何?」ということよりも「人間って、何?」ということに関心がありました。「人」よりも「人々」に興味があったのだと思います。

この一節にも、彼女の「社会と個人」の関係の描き方から窺われる、
信条や信念の一端が表れているなと感じます。

あと。私自身、女子高出身なのですが。
彼女がそうだということは、ああ成程な・・・と。
いいとか悪いとかではなく、ありますね、女子高出身の「色」。

思春期に女の子だらけの中に暮らすということは。
人間形成に及ぼす影響はかなりあるんだなと思います。
まぁ・・・これは、個人的な感想というか、感慨です。

彼女のファンである人も、そうでない人も。
「物語る」ことを職業として選び取るまでの彼女の歩みから、
学んだり励まされたり、考えさせられたりするでしょう。

本書のタイトルの意味を語っているような一節があるので、
書き写しておきますね。これは私も心がけていることです。

 つらいとき、自分の外側に出て、「人生という物語」の中を、いま生きている自分を見る。そうしていると、つらい、悲しいことだけじゃないな、喜びもあるよな、と気づいたりする。


(2014.1.19)
高校二年の時、気の合う友人と文化祭で劇を上映したそうで。
原作は彼女が作り、ちょい役を演じたのが片桐はいりさん!
名前は出していませんでしたが、脚本を書いて演出した人も、
劇団俳優として活躍しているそうです。

以下は、本文から書き抜いた文章になります。
自分がメモしておきたかっただけなので・・・
お暇な方だけ、ご覧下さい。
ひとりの人間が考えることと、群れとしての人類が引き起こすことは、必ずしも一致しない。

 境界線の上に立つ、というのは、たとえば、そういうことです。
 どちらか一方が正しいと信じこんで、疑いもしない人間は、もう一方を、理解しがたい他者として糾弾して排斥しようとするかもしれない。理想を掲げて声高に自分の主張をする人間は、しばしば、そういう己の傲慢さに気づかないものです。

 かつて日本が「お国のために」と戦争に突き進んでいったように、何かを守ろうとすることは、時に他者を破壊することをよしとしてしまうほどの強さを持ちうるのです。
 だとしたら、そこに至らない別の道、境界線を越える別のやり方を見つけるしかない。

 いま思えば「自分には語る権利があるんだろうか」ということを、そこまで気にするのは、語りたいことがあったからです。「私はしゃべってもいいのでしょうか」と聞く人間は、必ず、しゃべりたいことがあるのです。

 誰も生まれてくるところは選べなくて、いまの私はこの環境の中で、ほかならぬ私として、ここにある。何をするにしても、ここからはじめるしかない。
 そう思えるまでに、私は、ずいぶんかかってしまった気がします。

「いまのままの自分でいい理由」を探してしまえば、容易に逃げ道は見つけられます。

 痛い思いをするのは本当に嫌です。でも、そうして自分の足で歩いているなかで、肌感覚で実感出来たことがたくさんあって、私の書く物語のあちらこちらに、それは確かに息づいているような気がするのです。

 経験は大切です。でも、べつに、人と違うことをたくさんしなければいけないということではなくて、むしろ、人と同じことをしていながら、そこに人とは違うものを感じ取ることの方が大切だと思います。

 物語は、見えなかった点と点を結ぶ線を、想像する力をくれます。
 想像力というのは、ありもしないことを、ただ空想することとは、少し違う気がします。
 こうあってほしいと願うことがあって、どうやったらそうなるのだろうと、自分なりに線を引いてみること。その線が間違っているかどうかは、きっと、現実が教えてくれるでしょう。

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時々、写真や雑記も。

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  • 物語ること、生きること  上橋菜穂子 瀧 晴巳
  • 2014年02月25日 (火)

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