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森有正先生のこと  栃折久美子

Posted by 彩月氷香 on 08.2014 栃折久美子   0 comments   0 trackback
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筑摩書房
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それでも、私は森有正という人を観続けたいと思っていた。書かれたものだけ読んでいたのでは、私には想像もできなかったような非常識、自分勝手、言動の矛盾、金銭感覚、何もかもひっくるめて見て行きたい。老いてゆくなら、どのように老いてゆくのかを見て行きたい。正直なところ、この人のために自分が壊れたくはない。壊れずにいられるなら何と引き換えにしても、見続けて行くだけの価値のある人。私はそう思っていた。

この一節を読みながら、
これは「恋」だったのだろうか?
「愛」だったのだろうか?
それとも・・・と思い巡らしていた。

著者は自身のことを「自分大事のエゴイスト」と言う。
だから自分が壊れるであろう一歩を踏み出せなかった、と。

でも。たぶん。そういう「縁」だったのだ。
森有正の娘に「パパのお嫁さん候補」と言わしめた著者が、
結局、そういう関係には至らぬままに尽くした日々。

なぜ。こんな我儘に振り回されることが出来たろう?と思い。
愛がなければ無理と答えることは簡単でありながら、
それだけではないことも痛切に感じ取れる。

著者自身にも説明のつかない「熱」は、
読んでいても、わかるようなわからぬような、
いや、明らかに理解ができない範疇のものだった。

それはつまるところ。
私が「森有正」という人を知らない、ということだ。

それほどまでに魅力のある人だったということは。
残念ながら、本作から伝わっては来ない。

だから、そういう意味で共感はしない。
著者が森有正という人に捧げた日々に。

ただ、私にとっての「森有正」とでも言える人に、
もしも運悪く(運良く?)出会ったならば。
私も著者と同じような道を歩むかもしれない。
なぜなら私も「自分大事のエゴイスト」だから。

そう想像すると途端に、リアルに思えて来る。

著者は森有正という人に出会う前に著作に出会い。
飢えた人が食物を手にした時のように、「食べ」始めた。
その結果、わが身に起こったことをこう表現する。

「バカ喰いで壊れたのは胃ではなく、精神の構造だった。」

この感覚は、わかる気がする。
ただ、私は自分の精神の構造を壊す作家に出会ったとしても、
その本人に出会うことはないだろうから、安心(笑)

とは言いながら。読んでいる間中、ずっと。
何故だか他人事のような気がしなくて…

著者のことが羨ましかったかもしれない。

著者はしょっちゅう長い手紙を書いていて。
その点はだいぶ私自身とシンクロした。

長い手紙を受け取ってくれる相手・・・
長い手紙を書かずにはいられなくなる相手・・・
その手紙を「正しく」理解してくれる相手・・・

著者が描く「森有正先生の思い出」は、不思議で。
美しくて重たくて鬱陶しくて、なのに乾いていた。

それは事実、そういう質のものだったのか。
著者の記憶の中で磨かれたものだったのか。

(2014.4.22)
辻邦生など、懐かしい名も登場。
「夏の砦」とか大好きだったなぁ・・・

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  • 2014年08月08日 (金)

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