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土曜日   イアン・マキューアン

Posted by 彩月氷香 on 17.2015 その他 翻訳文学   0 comments   0 trackback
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あとがきの中で見つけた著者の言葉が印象的でした。
「読者はペロウンの幸福さに激怒した」

(著者の元に苦情が殺到したそうです。)

思わず、笑ってしまいましたが。
うん。確かにそういうのもわからなくはない。

やりがいのある仕事、美しい妻。
思春期の難しさはあっても、出来の良い子供たち。

まさに。Amazonのレビューにもありましたが。
登場人物たちが気障で腹が立つ・・・って。

私はそうでもなかったな。
優秀な人間、恵まれた人間って案外珍しい存在でもないし。
いちいち腹を立てるほどに羨ましいとも思わない。

負け惜しみではなく。別に主人公が羨ましくはない。
かと言って、自分の方が幸せだとか言うつもりもない。

ある種の「普通」の姿が描かれていると思う。
とある土曜日の朝から晩までを克明に描くことで。

そして感じるのは。
いかに人間が「今」を生きていないかということ。

よく「今を生きろ」というけれど。やはり無理だと感じる。
「今」の中に「過去の記憶」は頻繁かつ鮮明に混じり、
現在の行動もその影響を濃く受けて発動するのだから・・・

「今まで」を含めて「今」がある。
人間が「この瞬間」だけに生きるというのは不可能に近い。

「今」がまたすぐに「今まで」になるわけで。
積み重なって行く、時には自ら粉砕する記憶と共に、
生き続けていく、休みない「意識」の連続・・・

それが、いささか。しんどくないとは言えなくて。
しかも。主人公は常に自らの感情をコントロールしながら、
隠せない不安に揺らぎ続けているわけで。

細やかな描写が浮かび上がらせる、うつろう心模様。
目を凝らさないと見逃してしまう淡い影のような模様。

美しくもなく。目に優しくなくて。
だけど、もう諦めて視界に収めてしまって。
それが在ることに「落ち着き」を感じてもいる・・・

そういう、妙に見慣れたような模様。

哀しさや美しさに逃げず、淡々と描き切った日常に。
見事な職人技、と舌を巻いてしまうような作品。

(2015.2.3)
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  • 2015年04月17日 (金)

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