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偏愛蔵書室  諏訪哲史

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40歳までに一万冊以上の本を読んだという著者が、
その中から100冊を選りすぐって紹介しています。

一万冊と聞いて、自分は何冊だろうと気になりました。
15歳より前の読書は記録していないのですが。
それ以降だと5千冊ほど。諏訪氏の半分でした(汗)

彼の恩師種村季弘氏はさらに、その倍量は読んでいたそうで。
それを知り諏訪さんは絶望したそうです・・・。

それにしても。5千冊の中からでも100冊は選べないのに。
一万冊から100冊を選ぶというのは凄い。何を選ぶの???

興味津々で読んでみたら、いわゆる名作選とは異なるものの、
その道のマニアならイチ押し!という感じの本が多い。
ただ、「奇」に寄ってる印象はあります(悪い意味ではなく)。

一作家一作品、というルールでセレクトされているので。
せめて作家名だけ、列挙してみましょうか。

ホフマンスタール、梶井基次郎、リルケ、柳田国男、林静一、ボルヘス、島尾敏雄、ピアス、内田百間、ジュネ、吉岡実、澁澤龍彦、カーヴァー、宇野浩二、シュルツ、李賀、ビオイ=カサーレス、中井英夫、ゴンブローヴィチ、埴谷雄高、ロブ=グリエ、ソレルス、山口椿、日野日出志、プルースト、横光利一、ボウルズ、西脇順三郎、シンガー、谷崎潤一郎、ルデュック、三島由紀夫、ガッダ、幸田露伴、フォークナー、種村季弘、ウォー、徳南晴一郎、ヘミングウェイ、深沢七郎、ガルシア=マルケス、田中小実昌、中上健次、ベケット、沼正三、ルーセル、寺山修司、丸尾末広、ソログープ、正岡蓉、老舎、ケッペン、鷲巣繁男、デュヴェール、大泉黒石、レイ、畑耕一、桐山襲、アクショーノフ、石上玄一郎、ペレック、池田得太郎、マレルバ、小田仁二郎、シクスス、山崎俊夫、モオラン、萩原恭次郎、ギュイヨタ、荒木良一、ポンジュ、秋山正美、わたせせいぞう、江戸川乱歩、カフカ、仏説「苅萱」、ハイム、太宰治、レアージュ、泉鏡花、バーカー、宮沢賢治、サド、石川淳、ツェラン、川端康成、ベンヤミン、永田耕衣、 尾崎放哉、ボードレール、夏目漱石、サルトル、岡本かの子、ジョイス、夢野久作、セリーヌ、色川武大、ラヴクラフト、久生十蘭、ナボコフ。

誰も知らない本を紹介するという野心を発揮された時期もあり、
そりゃ無理でしょ誰も知らんでしょ、な作家も少々含まれますが。
作家だけで言うと、私の好きな作家は少なくありません。

読んだことある作家で言えば半数に達するというのに。
読んだことのある作品が極端に少ないのは好みの違いかしら?

紹介文はかなり短めで、長い書評が苦手な私には程よい具合。
必ず書影が添えられているのも素敵。全て彼の蔵書の写真だそうです。

ただ正直、期待したほどワクワクする読み心地ではなくて。
書評としての出来映えには不服はないながら、
あくまで私の好みからすると、という前提で申し上げますと、
作品の魅力を表現するには、やや硬い文章のように感じました。

あと女性の作家が、あまりにも少な過ぎる気が。
とは言え「偏愛」の名の通りの偏り具合は嫌いではありません。
ご本人も、こんな風におっしゃられています。

なべて人の愛は「偏愛」である。それは純真であればあるほどむしろ背き、屈折し、狂気へ振れ、局所へ収斂される。

個人的に大ヒットだったのは、彼が英国の小説について述べた一節。

 英国の長編小説は奇抜さも派手さもないのに蒸留酒のように読者を酔わせ、数年たって激しく再読を強いてくる。

これはまさに、私がなぜ英国長篇小説が好きかを見事に言い表していて。
そう、そう、そうなのよ!とバンバン膝を叩きました。

さらに彼は、「テス」「日陰者ジュード」「フォーサイト物語」
「ハワーズエンド」「日の名残り」などをさしおいて、
とりあげたいのは「ブライツヘッドふたたび」であると語るわけです。

「ブライツヘッドふたたび」はもちろんのこと、
ここに並んだ本は私の好き過ぎる小説ばかりで。
つくづく自分の英国小説好きを改めて実感しました。

ちなみに、諏訪氏はプルーストの「失われた時を求めて」を
「世界文学上最高の小説である」とおっしゃられてました。
(私は全部読めていないので、意見は差し控えます)

さて、私の好みの話は置いておいて。
諏訪氏が彼の読書を語っている印象的な文章があります。

僕は、徹底して「遠い本」が好きだ。
「遠い」とはこの現在の日本に住む自分の足元(日常)から「遠い」という意味で、時間的に遠い昭和以前の日本文学や、空間的に遠い海外の文学などのことを指す。
 これらの本は概して、言葉も世界観も、自分からかけはなれている。つまり言語学的、思想的に「遠い」のだ。

そうかぁ・・・私にはその感覚はなかったな。
諏訪氏の理屈だと「遠い」本を、私は「近く」感じます。
客観的な距離感より、自分の感性に「近い」か「遠い」かが先に来る。

だから、私にとっては現代日本のベストセラーの類いが、
もっとも「遠い」本であると感じられるのです。
そして大好きな英国文学は、自分に「近い」と思っています。

もう一つ、彼が自らの読書を振り返って語った、
話の筋より、抜き出された一片の「文章」、その詩的工夫、つまり「文体」が好きだと痛感した。
というのはもしかすると私も同じなのかな・・・

諏訪氏や種村氏に数で対抗しても仕方ないし(ちょっと悔しいけど)、
私はボチボチと好きな本を読んで余生を送るつもりですが。
読書冊数が一万冊を越えた暁には、100冊を選んでみたいなぁ。

って・・・20年後くらい???
(仮に一年に250冊を読むとして計算してみた)

(2015.2.15)
私、諏訪氏の作品は一冊も読んだことなくて。
近ごろ購読している新聞の冊子の連載エッセイで、
この本(自ら宣伝されていた)のことも知りました。
これを機に、彼の小説も読んでみたいと思っています。

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  • 2015年03月05日 (木)

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