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リスボンからの夜行列車  パスカル・メルシエ

4152092815

早川書房
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言葉が静かに、力強く輝いている。
自分自身に対して容赦なく誠実だった人物の声。

これほど厳しくあることは出来ないだろう。
そうありたいとも願わないだろう。

それでも。彼が代弁してくれていると思える、
自らと自らをとりまく世界への深い思索に、
読んでいる間ずっと、心が小刻みに震え続けていた。

「彼」というのは本書の主人公が出会う人物で、
それもただ「書物」の言葉の中での出会いなのだが。

主人公は彼の言葉に魅了されたがゆえに、
生涯を捧げてきた仕事を放り出し、言葉も通じない異国へ旅立つ。
そして生前の彼を知る人々を訪ね歩き、彼の生涯を辿って行く。

その行動が過剰なドラマ性を帯びてもおかしくないのに、
違和感なく、胸に迫る切実な渇望の結果として共感できるのは。
「彼」の言葉がそれだけの説得力と魅力を持っているから。

読みながら、「幸せな苦しさ」というものを感じていた。
とてもとても懐かしいものに、迎えられたような親しさ。

何を描くかということはもちろんだけれど、
その描き方が作品の価値を定めるのだ・・・と。
ごく当たり前のことを改めて認識させられた。

主な主題ではないのだけれど。
読んでいて気が付いたことが一つ。

私の思索の背景に必ず「キリスト教」の影がある、と。
信じるか信じないかという以前に、信じないと言うにせよ、
まず「キリストの教え」が当然にある世界を前提に、
私はものを考えているのだ・・・と。

現代の日本においては、少しだけ特殊なことかもしれないし。
案外、同じような人もいるのだろうとも思い。

今までも自覚はしていたのだけれど、軽視していた。
なんだか滑稽な感じがして。わざと軽んじていた気がする。

でも。「在る」ものは「在る」。

「見る」ことの喜びと絶望は、
身体的な意味においても、精神的な意味においても、
私にとってとても大きな意味を持っている。
そのことも、本書を読みながら確認したことだった。

何よりも読んでいて嬉しい言葉たちに出会えるのは幸せで。
私の心の中で絶えかけていた想いを目覚めさせる光が眩しくて。

自分を苦しませることにしかならなくても、
ものを考えることこそが自分が生きている証と信じていた、
ずっとずっと若かった頃の私を思い出して・・・

(2015.3.20)
推理小説と思い込んで読み始めたのですが。
(タイトルがそれっぽいでしょう?)
そうではなくて、「哲学小説」でした。
「哲学」と敢えて名乗る必要もなく思えますが。
人生について率直に問い続ける思索というのは、
そう呼ばれるべきものなのかもしれません。
だとしたら、やはり「哲学」は難解ではあっても、
私にとって「心地よい」ものなのでしょう。
映画化されて去年、上映されていたようですが。
映像で言葉の力を再現するのは難しかったのではないかしら・・・

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2015.04.02 23:26 | | # [edit]
お声かけて下さってありがとうございます。

佐藤優氏、そういえば私はご無沙汰しちゃってます。
妙に惹かれるのは、彼もクリスチャンだから?

ブログ、ほんとに続けるのは厳しくなってきました。
今まで、やめようかと悩んだのは心理的な問題でしたが。
現在は、ほんとに時間と体力が不足していて。
これは、気力や努力で乗り越えられそうにありません。

辞めずに続ける方向で摸索はしていますが、
どうなることでしょうか・・・
2015.04.03 21:49 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 2015年03月29日 (日)

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