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ダロウェイ夫人  ヴァージニア・ウルフ  

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みすず書房
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とりとめのない、意識の流れが、きらめく光の粒を思わせる。
登場人物たちの心境が、その視点の移る瞬間を見逃すほどに素早く、
くるくると手巾を翻すように軽やかに切り替わって描かれる。

慣れないうちは、少し目と脳がチカチカとするかもしれない。
きらびやかで濃密で、自在に踊るような文章が切れ目なく続く。
それなのに、描かれている場面は、静かなのだ。

沈黙のなかに、どれほど多くの「語られぬ」会話が存在するかを、
息苦しいほどに、伝えてくる、この、独特な小説話法。

ほんとうのところ、とても読みづらい。一度にたくさん読めない。
毎日少しずつ読み、半月ばかりかけて読み終えた。

数か月前に、ウルフの「燈台へ」という作品を読んだが、
そちらの方が、同じ手法を用いているがより洗練されていて、
今思えば、遥かに整理された構成で、読みやすかった。

さもありなん、この作品はウルフが苦心惨憺して、
この話法をつかみ取った最初の作品なのだ。
あとがきによると、彼女はこの作品を当初『時間』と呼び、
日記で、この作品の執筆を「戦い」と評していたという。

その戦いの成果は、見事なもの。
私は読んでいて、印象派の絵画を想った。

描かれる対象の輪郭は曖昧で、
観ているこちらの視線を幻惑するような光が、
画面をはみ出すほどに豊かに彩っているのに、
くっきりと、目に見えない事物のいちばん大切な本質を捉え、
美しくも確かな存在感で心に訴えかけてくる、その輝く芯の強さ。

そして、敢えて描かれていない闇の、気の遠くなるような深淵が
光の背後にひっそりと、不思議な優しさを湛えて広がっている・・・。

(2010.7.31)

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Author:彩月氷香

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読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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  • ダロウェイ夫人  ヴァージニア・ウルフ  
  • 2010年08月06日 (金)

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