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刻まれない明日  三崎亜記

Posted by 彩月氷香 on 08.2016 三崎亜記   0 comments   0 trackback
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祥伝社文庫
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三崎亜記「刻まれない明日」読了。「明日は誰にもわからない。それでも、この踏み出す一歩が新しい明日につながるものだと信じて、歩くしかないのだ。たとえそれが、記憶に刻まれない明日であるとしても。」締めくくりの一文は、この物語を読んだ人間には悲痛に響きもし、微かに慰められもする。

思念と国家の統制と。双方の力比べが描かれていて。その狭間で生じた犠牲とその傷を負って生きる人々が描かれる。街や道の喪失や再生ということと、記憶と歴史の塗り替えも。読み終えて思うのは。国家に統制されなくても。個人が自分の中で思念を押し潰し、隠匿し、塗り替えているということ。


以上、読後のつぶやき。
以下、本文からの書き抜き。

「どんなに荒唐無稽なことでも、子どもが信じてやろうとしていることは、自分も信じる。それが親の役目だ」

「似合わない服をプレゼントされた気分だよ。しかも・・・」
「似合わないと思っているのは本人だけなんだ」
*四十歳になるって、どんな気分?と訊ねられての登場人物の答え。

 相手に踏み込むのをとどめる術は、一人で行きてきた日々で、充分に会得していた。人生には、経験を経ることによって身につく臆病さというものも存在するのだ。

「何もできることはないかもしれない。何かをしても役に立たないかもしれない。それでも、何かをしてあげたいと思い続けることだよ」

 だが、どんな深い傷もいつか消え去り、傷のあった場所さえ思い出せなくなる。
 いずれ、すべては忘れられる。
 それをさだめとしながらも、人は精一杯の記憶を、そして想いをつないでいくのだろう。

 店主自身は、積極的に悩みを引き出すでも、解決の糸口を与えるでもない。人生の舵取りはそれぞれに任せながら、この場所でじっと見守ろうとするかのようだ。


(2015.8.22)
著者は独自の世界観を持っている、と。
読む度に感じ、そこにある「喪失感」に惹かれます。
さらさらと描かれた痛みが、深く沁み透る・・・
とある事件後、現存の作家の本は読まない、と。
決意したことがありましたが(脆くも破れました)、
その時、読めなくなることが惜しいと思った作家の一人。

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  • 2016年01月08日 (金)

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